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VOL.1065 夜のスマホと精子の質の関係

2023年11月26日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1065            2023/11/26
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:夜のスマホと精子の質の関係
・お知らせ(1):書籍出版記念 オンライン講演会のお知らせ
・お知らせ(2):研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Nov.2023__________________________________________

  夜のスマホと精子の質の関係
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夜のスマートフォンやタブレットの使用は精子の質の低下に関連するという研究報告がイスラエルの研究チームからなされています(1)。

夕方から就寝後にかけてスマホやタブレットの使用時間が長いほど、精子濃度や精子運動率、前進精子運動率のすべてが低く、不動精子の割合も高かったというのです。

研究チームは、スマホやタブレットから発せられるブルーライトによる体内時計の乱れが生殖機能にマイナスの影響を及ぼすのではないかと考えているようです。

◎どのような研究だったのか?
夜間にデジタル機器の発光画面にさらされることは睡眠時間が精子の質にどのように影響を及ぼすのかを調べるべく、クリニックで精液検査を受けた21歳から59歳の116人の男性を対象に夕方以降のスマートフォンやタブレットの習慣的な使用時間をアンケートで調査し、精液量や精子濃度、精子運動率との関係を解析しました。

◎どんな結果だったのか?
夕方から就寝後にかけてのスマートフォンやタブレットの使用は、精子運動率や前進精子運動率、精子濃度と統計的に有意な負の相関があり、不動精子の割合とは正の相関にあることがわかりました。

また、精子運動率や進行性運動率は睡眠時間と有意な正の相関があり、主観的な眠気とは有意な負の相関が認められました。

夜間のスマホやタブレットの使用時間が長い男性ほど精子濃度や精子運動率が低く、反対に睡眠時間が十分な男性ほど精子濃度や精子運動率が良好であったことから夜間のスマホやタブレットの使用は睡眠の質をさせ、男性の生殖機能にマイナスの影響を及ぼすことが示唆されました。

◎夜間の光と精子の質の関係
夜間の人工光の量が精子の質を低下させることを示唆する研究報告が中国の四川大学の研究グループからなされています(2)。

1991人の精子ドナー(精子提供者)で、健康で高学歴の男性を対象にした研究で、精子提供前の3ヶ月間の夜間人工光をあびた量が大きいほど精子運動率が有意に低かったことから、夜間の人工光が男性の精子の質の低下を招く可能性があることを示唆されています。

研究グループは、夜間の人工光をあびる量を抑制することで精子の質の低下を予防できる可能性が示されたとしています。

◎日本人男性の睡眠
厚生労働省の国民健康・栄養調査の最新版をみてみると、1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、男性32.7%、女性36.2% ですが、6時間未満の者の割合は、男性の 30~50 歳代では4割を超えています。

睡眠の質の状況について、男女ともに 20~50 歳代では「日中、眠気を感じた」と回答した者の割合が最も高く、睡眠の確保の妨げとなる点について、30~40歳代男性では「仕事」と回答した者の割合が最も高いという結果です。

男性は、仕事の影響で睡眠時間や質が低下している傾向がみてとれます。

◎スマホとの付き合い方で睡眠の質が左右される
睡眠の確保の妨げなる点について、20歳代では「就寝前に携帯電話、メール、 ゲームなどに熱中すること」という回答が最も多かったようですが、30代、40代でも少なくありません。

睡眠を司っているのは「体内時計」です。

この体内時計が、睡眠やホルンモン、神経活動、免疫など、さまざまな生理現象にリズムをもたらしているのです。性周期のない男性も同じです。メインの体内時計は一つで、脳内の視交叉上核、すなわち、目の神経が交差する部分の上にある神経細胞の集まりに存在しています。

そして、メインの他に全身の細胞、一つ一つにもあります。

メイン時計の1日の長さは、24時間より長いのですが、朝に目から入る光によって調節されます。

ところが、夜間に光を浴びると時計が狂ってしまいますので、寝る前はテレビやスマホは見ないようにすべきです。

特に、スマホは、テレビなどに比べて、目(脳)に近いので、その影響は強力です。40歳以上の女性では体内時計の乱れが卵巣機能低下を促進するという研究報告がなされています。また、スマホの夜間使用が精子の質を低下させるとの研究報告まであります。

夜間、そして、起床後すぐのスマホ使用は、男性の精子の質を低下させます。

スマホ使用を制限するだけでなく、以下の通り、生活リズムを意識して、体内時計を整えましょう。

1)夜は暗くする。
2)夜はスマホをみない。
3)早く(遅くとも12時までに)寝る。
4)朝は早く(決まった時間に)起きる。
5)目覚めと同時に自然光を浴びて、水を飲む。
6)朝食(タンパク質)を食べる。
7)午後3時以降はカフェリンを摂らない


文献:
1)Chronobiol Int. 2020; 37: 414-424
2)Environmental Pollution 2024; 341: 122927

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ(1)__________________________________________________________

 不妊治療を考えたら読む本~科学でわかる「妊娠への近道」(最新版)
 出版記念講演会(参加費無料)
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2016年に出版し、ベストセラーになった『不妊治療を考えたら読む本~科学でわかる「妊娠への近道」』ですが、皆さまご存じの通り、2022年の不妊治療の保険適用によって、不妊治療の治療環境が大きく変化致しました。

その流れで本の内容を大きく改訂する必要性が出てきたことにより、以前の内容から大幅な改定が行われ、最新版が出版されました。

「患者さんは経済的負担が軽くなる人が多い一方、保険診療のわかりやすい説明を強く求めています。東京都の助成金で注目を集める卵子凍結についても加筆し、新時代にぴったりな本になるよう情報を全体的に刷新しました」と著者の一人である河合 蘭さんもコメントされています。

保険適用後の不妊治療の変化とそれに対応して、どのように行動していけば良いのかを理解する時間になるかと思います。

「新刊書に近い改訂をしたのであれば、出版記念講演会した方がいいですね」ということで、メディエンス池上氏が今回の企画をされています。

妊活や不妊治療を始めようと思っている方、すでに取り組んでおられる方、妊活や不妊治療をサポートしている方々、医療機関の方々と生殖医療に関わりのある皆様には有意義な時間になるかと思います。

浅田先生と河合さんのお二人が揃ってお話しし、質疑応答してくださる貴重な機会になるかと思います。

多くの方のご参加をお待ちしております。

◎詳細情報
日時:11月27日(月)19時30分~21時
講師:浅田義正先生(浅田レディースクリニック院長)
河合 蘭氏(出産ジャーナリスト)
MC&運営:池上文尋氏(メディエンス)
会場:ZOOM(オンライン講演会)
会費:無料
対象者:妊活、治療中の方、不妊治療をサポートする関係者、医療関係者

申込フォーム
https://forms.gle/hNysLWNr5M42QVH88


お知らせ(2)__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

夜はスマホを遠ざけることは、極めて簡単に出来る精子の質を高める方法です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1065
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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◎発行部数
・自社配信: 1,507部
・まぐまぐ: 2,139部
・合計部数: 3,646部(11月26日現在)
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