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VOL.1064 週3回の魚を前提にタンパク源の摂取バランスを見直す

2023年11月19日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1064            2023/11/19
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:週3回の魚を前提にタンパク源の摂取バランスを見直す
・お知らせ①:書籍出版記念 オンライン講演会のお知らせ
・お知らせ②:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


トピックス Nov.2023________________________________________________

  週3回の魚を前提にタンパク源の摂取バランスを見直す
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魚を多く食べる女性ほど体外受精や顕微授精の出産率が高いという研究報告(1)がなされています。

ハーバード大学がマサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べている前向き研究「EARTH Study」で、今回はタンパク質が豊富な食品の食べる量とART治療成績の関連を調査しています。

351名の女性ART患者に治療開始前に食物摂取頻度調査票に過去1年間の食品の摂取頻度と1回のおよその摂取量を記入してもらい、タンパク質が豊富な食品の摂取量で4つのグループにわけ、598周期の治療周期あたりの出産率との関連を解析しました。

魚の摂取量で4つのグループに分けたところ、グループ別の平均の1日の魚の食べる量と出産率は以下の通りでした。

魚摂取量が最も少なかったグループ:0.06人前/日・34.2%
魚摂取量が少なかったグループ  :0.18人前/日・38.4%
魚摂取量が多かったグループ   :0.26人前/日・44.7%
魚摂取量が最も多かったグループ :0.44人前/日・47.7%

治療開始前に魚を多く食べていた女性ほど出産率が高かったことがわかります。

因みに、それぞれのグループの週あたりの魚のおおよその摂取頻度は以下の通りです。

魚摂取量が最も少なかったグループ:2週間に1回
魚摂取量が少なかったグループ  :週に1回
魚摂取量が多かったグループ   :週に2回
魚摂取量が最も多かったグループ :週に3回

もう1つ、魚以外のタンパク質を豊富に含む食品を週に2回、魚に変更したら、出産率はどうなるかを推計しています。

その結果、魚以外のタンパク質食品を週に2回分魚に食べ変えた場合、出産率は1.54倍に、精製肉を週に2回分魚に食べ変えた場合、出産率は1.64倍になることが推定されました。

一方、健康な妊活カップルを対象とした研究(2)で、魚をたくさん食べるカップルほど性交回数が多く、妊娠までの期間が短かったという報告がなされています。

魚介類を食べる頻度が周期あたり8回以上だったカップルと1回以下だったカップルの性交回数を比べると、8回以上食べたカップルは1回以下だったカップルに比べて性交の頻度が22%多く、妊娠までにかかった期間から算出した妊娠率も61%高かったとのこと。

このように高度な不妊治療を受けている女性にとっても、受けていない妊活カップルにとっても魚を多く食べることは、妊娠、出産にプラスの影響を期待できるかもしれないということが言えます。

良質の動物性タンパク質が豊富であることに加えて、ビタミン(D、E、B12)やミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、銅、亜鉛、ヨウ素、セレン等)などの栄養素も豊富に含まれています。

そして、魚油にはオメガ3系脂肪酸であるDHAやEPAが豊富に含まれています。

さらには、タウリンやアンセリン、バレニンを始めとする多様な機能性成分が含まれています。

中でもオメガ3脂肪酸は、元々は植物や海藻に含まれているものですが、海藻を食べるプランクトンに蓄積され、それを食べる魚の油に濃縮されていることから、私たちにとっての主なオメガ3脂肪酸の供給源になっています。

同じEARTH研究で、オメガ3系脂肪酸であるDHAやEPAの食事やサプリメントからの摂取量や血中濃度が高いほど妊娠率や出産率が高いことが示されています(3)。

ところが、元々、日本人は世界でも有数の魚をよく食べる人種でしたが、2001年以降、年々、減っています。

最新の国民健康栄養調査では30代、40代の女性の平均の魚の摂取量は2001年に比べて40%も減っています。

反対に肉の摂取量は、年々、増加していて、2008年に魚の摂取量と逆転しました。

私たちの身体の水分を除くと半分はタンパク質からなっています。タンパク質は身体の材料になるだけでなく、酵素やホルモン、その他、生体調整成分の材料にもなっています。

そして、約20種類のアミン酸がタンパク質を構成していますが、含まれる食品によってその数や構造が異なり、さらに、タンパク質以外の脂質や糖質、微量栄養素の種類や構成も異なります。

そのため、動物性タンパク質か植物性タンパク質に偏ることなく、さらには、動物性タンパク質の中でも偏りなく食べることが大切です。

そんな中で、今回の研究結果から「週3回以上魚を食べる」ことを前提にして、そこから全体のバランスを見直しみてはいかがでしょうか?

文献:
1)Am J Clin Nutr 2018; 108: 1104.
2)J Clin Endocrinol Metab. 108; 103: 2680.
3)Hum Reprod. 2018; 33: 156

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ(1)__________________________________________________________

 不妊治療を考えたら読む本~科学でわかる「妊娠への近道」(最新版)
 出版記念講演会(参加費無料)
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2016年に出版し、ベストセラーになった『不妊治療を考えたら読む本~科学でわかる「妊娠への近道」』ですが、皆さまご存じの通り、2022年の不妊治療の保険適用によって、不妊治療の治療環境が大きく変化致しました。

その流れで本の内容を大きく改訂する必要性が出てきたことにより、以前の内容から大幅な改定が行われ、最新版が出版されました。

「患者さんは経済的負担が軽くなる人が多い一方、保険診療のわかりやすい説明を強く求めています。東京都の助成金で注目を集める卵子凍結についても加筆し、新時代にぴったりな本になるよう情報を全体的に刷新しました」と著者の一人である河合 蘭さんもコメントされています。

保険適用後の不妊治療の変化とそれに対応して、どのように行動していけば良いのかを理解する時間になるかと思います。

「新刊書に近い改訂をしたのであれば、出版記念講演会した方がいいですね」ということで、メディエンス池上氏が今回の企画をされています。

妊活や不妊治療を始めようと思っている方、すでに取り組んでおられる方、妊活や不妊治療をサポートしている方々、医療機関の方々と生殖医療に関わりのある皆様には有意義な時間になるかと思います。

浅田先生と河合さんのお二人が揃ってお話しし、質疑応答してくださる貴重な機会になるかと思います。

多くの方のご参加をお待ちしております。

◎詳細情報
日時:11月27日(月)19時30分~21時
講師:浅田義正先生(浅田レディースクリニック院長)
河合 蘭氏(出産ジャーナリスト)
MC&運営:池上文尋氏(メディエンス)
会場:ZOOM(オンライン講演会)
会費:無料
対象者:妊活、治療中の方、不妊治療をサポートする関係者、医療関係者

申込フォーム
https://forms.gle/hNysLWNr5M42QVH88


お知らせ(2)__________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

『不妊治療を考えたら読む本~科学でわかる「妊娠への近道」』は、これさえ読んでおけば大丈夫という本です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1064
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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◎発行部数
・自社配信: 1,506部
・まぐまぐ: 2,148部
・合計部数: 3,654部(11月19日現在)
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