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VOL.1060 これからの季節、ビタミンD欠乏に要注意

2023年10月22日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1060            2023/10/22
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:これからの季節、ビタミンD欠乏に要注意
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


トピックス Oct. 2023________________________________________________

 これからの季節、ビタミンD欠乏に要注意
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この10年で、ビタミンDは、妊娠、出産に際して、極めて重要な役割を担うことが多くの研究で明らかになりました。

ビタミンDはビタミンとされているにもかかわらず、必要量のほとんどは紫外線にあたることで皮膚でコレステロールから合成されています。

もちろん、ビタミンDは食事からも摂取していますが、他のビタミンと異なり、ビタミンDが摂取できる食品は、ほとんど、魚だけで、それも「サケ」くらいです。

多くの女性は日焼け止めを使い、ビタミンDがつくられる紫外線をカットする上、冬は日照時間が短くなりますので、これからの季節は、特に不足しやすくなります。

◎日照時間や緯度によるビタミンD濃度の違い
北九州のオフィスワーカー男性312名、女性217名を対象に7月と11月の血中のビタミンDのマーカーを測定した研究(1)があります。

それによると、平均値は7月が27.4ng/mlだったのに対して、11月は21.4ng/ml と低く、ビタミンD欠乏(20ng/ml未満)の割合が7月では9.3%だったのに対して、11月では46.7%と半分近くになっています。

また、日照時間は季節だけでなく、場所(緯度)によっても異なります。そのため、同じ日本に住んでいても南と北ではビタミンDの体内濃度が違うはずです。

1日に必要とされるビタミンDをつくるのに必要とされる日光浴の時 間を札幌、つくば、那覇で7月と12月で比較した研究(2)があります。

それによると、両手と顔を露出した場合、7月の正午では那覇で2.9 分、つくばで3.5分、札幌で4.6分だったのに対して、12月の正午では那覇で8分、つくばで22分、札幌で76分と北にいくほど夏と冬の差が 大きくなっています。

このように、冬、特に北日本では、ビタミンD欠乏を意識的に回避す る必要があると言えます。
必要とされる量のビタミンDを体内でつくるのに、どれくらいの時間、日にあたればいいのか、推奨日光照射時間をタイムリーに教えてくれるサイトがあります。

国立環境研究所/地球環境研究センターが提供するビタミンD生成・紅斑紫外線量情報の簡易サイトです。
http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/mobile/

まず「観測局の選択」で最寄りの観測局を選び、その日のその時間の天気で、適切な量のビタミンDを体内で生成するために推奨される日光照射時間が表示されます。

◎ビタミンD不足の影響は年齢が高くなるほど大きくなる
体外受精や顕微授精を受けている女性患者では、36歳以上では妊娠に至った女性は至らなかった女性に比べて、血液中や卵胞液中のビタミンD濃度が高かったという研究報告がなされています(3)。

イタリアの不妊治療クリニックで体外受精や顕微授精に臨む103名の女性患者を対象に、採卵時に血液中と卵胞液中のビタミンDの濃度を測定し、その後、妊娠に至ったグループ(34名)と妊娠に至らなかったグループ(69名)で比較し、ビタミンDの妊娠への影響を調べたという研究です。

妊娠グループと非妊娠グループの血液中のビタミンD濃度は、それぞれ、28.27ng/ml、24.02ng/ml、卵胞液中のそれは、それぞれ、28.7ng/ml、24.02ng/mlで、差はみられなかったものの、対象者年齢を36歳以上に絞って比較すると、妊娠グループと非妊娠グループの血液中のビタミンD濃度は、それぞれ、42.02ng/ml、24.98ng/ml、卵胞液中のそれは、それぞれ、41.76ng/ml、25.22ng/mlで、血液中でも、卵胞液中でも、妊娠グループのほうが統計学的に意味のある差でビタミンD濃度が高かったというのです。

要するに、年齢が高くなるほどビタミンDの充足は妊娠成立にとって重要な因子になり得るというわけです。

◎ビタミンD不足や欠乏を回避するために
これまでの研究で、魚介類をよく食べること、運動習慣があること、そして、タバコを吸わないことが、ビタミンDが不足しにくいことがわかっています。

ビタミンDが豊富に含まれる食品は、魚、それもサケですが、毎日、サケを食べるわけにもいきませんので、基本は日にあたることです。

意識して日光浴をするのも難しいと思うので、やはり、ウォーキング等の運動が現実的かもしれません。

ただし、女性の場合、季節を問わず日焼け止めクリームなどの紫外線対策を欠かさないという方も少なくないでしょうから、確実なのはサプリメントになると思います。

サプリメントを利用する場合は、ビタミンDは脂溶性のため摂取するタイミングが大切です。1日のうちで食事が最も多い食後が吸収効率がよいとされています。

1)J Epidemiol. 2011; 21: 346-53.
2)J Nutr Sci Vitaminol. 2013; 59: 257-63.
3)Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2021; 25: 4964.

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ____________________________________________________________

   研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf


編集後記____________________________________________________________

妊娠や出産によいことは、健康全般、すなわち、長く元気でいることにもよいということですね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1060
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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◎発行部数
・自社配信: 1,497部
・まぐまぐ: 2,221部
・合計部数: 3,718部(10月22日現在)
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