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VOL.1059 「これだけ」よりも「あこれもこれも」

2023年10月15日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1059           2023/10/15
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:「これだけ」よりも「あこれもこれも」
・お知らせ:研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
・編集後記


最新ニュース解説 Oct. 2023__________________________________________

 「これだけ」よりも「あこれもこれも」
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タバコやお酒、運動習慣、食生活など、いくつかの生活習慣と精液検査結果への影響を調べたところ、喫煙習慣のある男性はない男性に比べて精液量や総精子数、運動率、正常精子形態率が低く、タバコのみが検査結果にマイナスの影響を及ぼすことが明らかになりました。

やはり、タバコが最も影響するようです。

いずれの生活習慣も精液検査結果に影響を及ぼすことが、これまでの多くの研究で明らかにされていますが、健康な男性を対象にそれぞれの生活習慣の影響を比較した貴重な研究結果です。

◎どんな研究だったのか?
ポルトガルのアヴェイロにあるHospital Infante D. Pedroという病院の泌尿器科で30人の健康な男性ボランティアを募集し、研究に参加した男性には生活習慣に関するアンケートに答えてもらい、精液サンプルを提供してもらいました。

精液サンプルは世界保健機関(WHO)の基準により評価され、タバコやお酒、運動習慣、食生活と精液検査結果の関係を解析しました。

また、生活習慣が精液検査結果に及ぼすメカニズムを調べるために、精子細胞内のストレス反応に関わる抗酸化酵素や熱ショック反応関連タンパク質の発現レベルも測定し、解析しました。

◎どんな結果だったのか?
喫煙習慣は精液量と総精子数を減少させることが明らかになりました。また、喫煙習慣のある男性における総運動率や正常形態率の低下は統計学的な有意性はありませんでしたが、減少傾向が認められました。

さらに、精子細胞における喫煙習慣と熱ショック蛋白質27やリン酸化HSP27の増加との間に有意な関連があることが初めて検証され、タバコが男性の生殖機能に有害な影響を及ぼすメカニズムが示されました。

熱ショック蛋白質27やリン酸化HSP27とは、様々なストレスにさらされると発現レベルが上昇し、遺伝子発現によるタンパク質産生の機能や品質管理、免疫応答、がんの促進、老化に影響することが知られています。

◎男性の生殖能力低下予防のために一番に取り組むべきは喫煙
今回の研究では、調査された男性の生活習慣の中ではタバコが最も男性の生殖能力に有害な影響を及ぼすことがわかりました。

喫煙習慣は、そもそも、あらゆる生活習慣病、たとえば、がんをはじめ、脳卒中や虚血性心疾患などの循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や結核などの呼吸器疾患、2型糖尿病、歯周病などの発症リスクを高めることが知られています。

そのため、寿命が縮むことを予防する生活習慣の一番がタバコなわけです。

同様に男性の生殖能力、すなわち、妊娠させる力の低下を予防するための生活習慣に一番がタバコと考えられます。

さらに、やっかいなことには、タバコを吸う本人だけでなく、周囲にも受動喫煙の害をばら撒くことです。

パートナーへの受動喫煙が乳幼児突然死症候群にリスクが高まります。

◎生活習慣全般を改善することも大事
タバコの害が最も大きいことはわかりましたが、それでは、禁煙さえすればそれで充分かと言えば、答えは「否」です。

生活習慣の影響は複合的です。

つまり、よい生活習慣が多いほど、生殖能力低下予防効果が大きくなることがわかっています。

女性の慢性疾患のリスクファクター調査を目的に、116,000人の25〜42歳の女性看護師が登録し、1989年にスタートしたハーバード大学による前向きコホート研究です。

2年ごとに食物摂取頻度調査票を用いた食事調査や生活習慣に関するデータを収集し、疾病の発生について追跡調査したという大規模な研究です。

不妊症については、1999年までの8年間の追跡調査で得られたデータから食事や生活習慣と排卵障害不妊症発症との関連を解析しています。

その結果、精製度の低い炭水化物の摂取や動物性タンパク質の摂取、トランス脂肪酸の摂取、ビタミンやミネラル不足など、いわゆる健康によくない食習慣に相乗効果を調べるために、各要因毎に、その摂取量を1から5でスコア化し、健康によい食べ方をしているほうがスコアが高くなるように算出されました。

そして、そのスコアの合計(8-40)で5つのグループにわけ、排卵障害不妊症リスクとの関係を調べたところ、スコアが高くなるほど不妊症リスクが低くなり、平均スコアが最も高いグループは最も低いグループに比べてリスクが66%低くなり、相乗効果が認められました。

考えてみれば、至極、当然のことです。

ただ、男性にとって、タバコが最も悪いこと、健康な生活習慣が多いほど、妊娠に有利になることが、科学的な手法で確かめられているということです。

要するに、概ね、答えは出ているということで、あとは、それを実行するかどうか、また、自分たちにとって、どのように実行するのが現実的かを考えることが大切ですね。

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ____________________________________________________________

研究参加者募集:あなたの有機フッ素化合物(PFAS)汚染を調べませんか?
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東京都調布市にあるウィメンズクリニック神野では、京都大学との共同研究「体内PFAS (有機フッ素化合物) 濃度と生殖補助医療成績との関連に関する研究」に参加いただける方を募集しています。

PFASとは有機フッ素化合物の総称で、撥水剤や消火剤、コーティング剤等に用いられていて、環境中で分解されにくく、蓄積性が高い物質であることから、水道水や井戸水などから体内に摂取されていると考えられています。

最近、PFASによる地下水汚染が日本全国で徐々に明らかとなってきており、東京都多摩地域もPFAS汚染が示され、 さらに多摩地域住民の血漿中PFAS濃度が高いことも示されました。

PFASの体内蓄積は、妊孕性低下との関連も示されています。

そこで、高度生殖補助医療を受けられる患者さんを対象に血液や卵胞液中のPFAS濃度を測定し、治療成績との関連を調査する研究がはじめられることになり、参加される方を募集します。

詳細は以下をご覧ください。
https://www.akanbou.com/PFAS_study.pdf

編集後記____________________________________________________________

妊娠や出産によいことは、健康全般、すなわち、長く元気でいることにもよいということですね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1059
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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・まぐまぐ: 2,222部
・合計部数: 3,711部(10月15日現在)
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