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VOL.1056 食事からの脂肪の摂取と精子無力症との関係

2023年09月24日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1056              2023/9/24
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:食事からの脂肪酸の摂取と精子無力症との関係
・編集後記


最新ニュース解説 Sep. 2023_________________________________________

 食事からの脂肪酸の摂取と精子無力症
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不妊治療クリニックで精液検査を受けた男性では、食事からの植物性脂肪の摂取量が多いほど精子無力症になりにくく、反対に動物性脂肪の摂取量が多いほど精子無力症になりやすいことが、中国の研究で明らかになりました(1)。

精子無力症は男性不妊の80%に認められるとの報告があることからも、精子無力症、すなわち、精子運動率の低下は、男性不妊にあらわれる中心的な症状と言えるかもしれませんが、その原因は、直接的には酸化ストレスや環境ホルモン等の有害物質などによるものと考えられていますが、食生活やストレス等の間接的な影響も含めて、よくわかっていません。

複数の原因が複合的に影響している可能性が高いことから、自分で改善が可能なものがあるのであれば、取り組む価値があると言えいます。

食生活はその代表と言えますが、多くの栄養素がありますが、脂肪の取り方はわかりやすい目安になり得ます。

◎どんな研究だったのか?
中国の瀋陽市の瀋陽医科大学の研究チームは2020年6月から2020年12月に瀋陽医科大学病院で精液検査を受けた男性を対象に脂肪酸摂取量と精子無力症との関連を調べました。

研究参加登録後に食物摂取頻度票を用いた食事調査を実施し、脂肪酸の摂取量を推計し、それぞれの脂肪酸摂取量で3つのグループ(少・中・多)にわけました。

精液検査の結果、1130名のうち549名が精子無力症(動いている精子が40%未満)、581名は基準(40%)以上の精子運動率でした。

それぞれの脂肪酸の摂取量と精子無力症になるオッズとの関連を解析しました。

◎どんな結果だったのか?
植物性脂肪を最も多く摂取していたグループは最も少ないグループや中程度のグループに比べて精子無力症のオッズ比が小さく、反対に、動物性脂肪を最も多く摂取していたグループは、最も少ないグループや中程度のグループに比べて精子無力症のオッズ比が大きいことがわかりました。

すなわち、植物性脂肪を多く摂取する男性ほど精子無力症になりにくく、反対に動物性脂肪を多く摂取する男性ほど精子無力症になりやすいことがわかりました。

また、動物性脂肪の摂取量と精子無力症の関係は、喫煙が加わると統計的に有意に関連性が強くなることがわかりました。

つまり、動物性脂肪を多く摂取することに、喫煙が加わると精子無力症リスクが高くということになります。

◎動物性脂肪と植物性脂肪
脂肪酸、すなわち、脂肪の成分は、大きく分けると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。飽和脂肪酸は、肉の脂肪やバターなどに多く含まれることから動物性脂肪になります。

特徴は、常温では固体であるということです。

一方、不飽和脂肪酸は、植物や魚に多く含まれ、液体で存在します。

さらに、この不飽和脂肪酸は3つのグループに分けられます。

オメガ6系脂肪酸(n-6系脂肪酸)でリノール酸など。コーン油、ゴマ油、大豆油、紅花油、ひまわり油、サフラワー油等に多く含まれます。

そして、オメガ3系脂肪酸(n-3系脂肪酸)で、アルファリノレン酸、EPA、DPAなど。魚の油、フラックスオイル(亜麻仁油)、エゴマ油、シソ油等に含まれます。

最後にオメガ9系脂肪酸(n-9系脂肪酸)でオレイン酸など。オリーブオイル、菜種油、パーム油等に多く含まれます。

◎脂肪酸摂取量と精子をつくる働きとの関係
植物性脂肪の中でもオメガ3脂肪酸が精子をつくる働きに良好な影響を及ぼすという研究報告がなされています(2)。

ハーバード大学とスペインのムルシア大学による男子大学生(18〜23歳)を対象にした脂肪酸の摂取と精子をつくる働き(精子の質や生殖ホルモン、精巣の大きさ)の関係を調べた研究です。

209名の男性に食物摂取頻度調査票を用いて脂肪酸の摂取状況を調べ、血液検査で測定した生殖ホルモン(FSH、LH、総テストステロン、フリーテストステロン、インヒビンB)や精巣容積など、精子をつくる働きの指標となるデータとの関連性を解析したというものです。

その結果、一価不飽和脂肪酸の摂取量が多いほどフリーテストストロンや総テストステロン、インヒビンBが低く、多価不飽和脂肪酸、特に、オメガ6脂肪酸の摂取量が多いほどLHが高いことがわかりました。そして、トランス脂肪酸の摂取量が多いほど総テストステロンやフリーテストステロンが低かったというのです。
また、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いほど精巣容積が大きく、反対にオメガ6脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量が多いほど小さかったとのことです、

オメガ3脂肪酸は精子をつくる働きにプラスに、反対にオメガ6脂肪酸やトランス脂肪弾はマイナスの影響を及ぼす可能性があることが精巣容積を介して明らかにされています。

脂肪酸は全て食事から摂取するものですから、男性の食べ方は間接的に精子の数や運動能力に影響を及ぼすようです。

野菜や魚を中心とした食生活が精子の質によい影響を及ぼすということになります


文献)
1)Hum Reprod Open. 2023 Jul 27;2023(3):hoad030
2)Asian J Androl 2017; 19: 184

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編集後記____________________________________________________________

脂肪酸の摂取バランスが大事です。

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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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