メルマガ

VOL.1052 不妊治療前の食事パターンと流産率との関係

2023年08月27日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.1052              2023/8/27
____________________________________________________________________


今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:不妊治療前の食事パターンと流産率との関係
・お知らせ:不妊相談会
・編集後記


最新ニュース解説 Aug. 2023_________________________________________

 不妊治療前の食事パターンと流産率との関係
--------------------------------------------------------------------
不妊治療前の健康的な食事パターン、特に、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患予防に推奨される食事パターン(米国心臓協会の食事ガイダンス)に近い食べ方は流産リスク低下と関連することが、ハーバード大学によるEARTH研究で明らかになりました(1)。

EARTH研究とはハーバード大学の関連病院であるマサチューセッツ総合病院で不妊治療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べている現在進行中の前向きコホート研究です。

不妊治療を受けている女性にとって、なにを食べ、なにを避けるのがいいのかについては、自分でコントロールできることとして、高い関心を寄せられていますが、特定の食品や栄養素の良し悪しを考えても、あまり意味がありません。

最近の食と生殖機能も関連を調べている研究では、特定の食品ではなく、食事パターンに着目しています。

これまで、地中海食をはじめとした食事パターンと不妊治療の成績との関連が調査されてきましたが、それらの結果は相反するところも多くあり、まだまだ、わからないことが多いのが現状です。

そこで、ハーバード大学の研究チームは、不妊治療を受け、EARTH研究に参加している女性を対象に、8つもの食事パターンと治療成績の関係を調査しました。

◎どんな研究だったのか?
ハーバード大学の関連病院で人工授精や体外受精、顕微授精を受けた女性(612名)を対象に治療開始前に食物摂取頻度票を用いた食事調査を行い、8つの食事パターンのスコア(それぞれのパターンにどれだけ近いかをスコア化)を算出し、治療成績との関連を統計学的に解析しました。
調べられた8つの食事パターンは以下の通りです。

(1)地中海食(Trichopoulou提唱)
(2)代替地中海食
(3)地中海食(Panagiotakos提唱)
(4)健康的食事指数(HEI-2010)
(4)代替健康的食事指数(AHEI-2010)
(5)米国心臓協会(AHA)食事ガイドライン
(6)高血圧予防食(DASH食)
(7)植物ベースの食事。


◎どんな結果だったのか?
302名の女性の人工授精80周期、450名の女性の体外受精・顕微授精768周期を対象に、それぞれの食事パターンスコアで4つのグループに分け、治療成績との関連が解析された結果、いずれの治療法の妊娠率や生児獲得率とも関連しませんでした。

その一方で、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患予防に推奨される食事パターン(米国心臓協会の食事ガイダンス)スコアが高いほど流産リスクが低下することがわかりました。

たとえば、最もスコアが低いグループの流産率が41%だったのに、対して、最もスコアが高いグループのそれは28%でした。

◎健康的な食事パターンにもいろいろある
健康的な食べ方にもいろいろあり、今回、採用された食事パターンとその特徴は以下の通りです。(+)は積極的に食べることを推奨する食品、(ー)は避けたほうがよい食品、(±)は適切に摂取することが推奨される食品です。

Trichopoulou地中海食
(+)全粒穀物、果物とナッツ、野菜、豆類、魚、
(ー)赤身肉や精製肉、内臓肉、 乳製品、脂肪、アルコール

代替地中海食
(+)全粒穀物、果物、野菜、豆類、魚、
(ー)赤身肉や精製肉、脂肪
(±)アルコール

Panagiotakos地中海食
(+)全粒穀物、じゃがいも、果物、野菜、豆類、魚、オリーブオイル
(ー)赤身肉や精製肉、鳥肉、全脂肪乳製品
(±)アルコール

健康的食事指数 
(+)果物、果物ジュース、野菜、豆類、全粒穀物、乳製品、タンパク質(赤身肉、精製肉、魚介類、大豆食品)、不飽和脂肪酸
(ー)精製穀物、塩分、砂糖、飽和脂肪酸

代替健康的食事指数
(+)果物、野菜、ナッツや豆類、全粒穀物、オメガ3脂肪酸(EPA+DHA)、不飽和脂肪酸
(ー)砂糖入清涼飲料水、赤身肉や精製肉、精製穀物、塩、砂糖、飽和脂肪酸、アルコール、塩分

米国心臓協会(AHA)指数
(+)果物や野菜、全粒穀物、魚介類、ナッツや豆類
(ー)砂糖入清涼飲料水、塩分、精製肉、飽和脂肪酸

Dietary Approaches to Stop Hypertension指数
(+)果物、野菜、ナッツや豆類、全粒穀物、低脂肪乳製品
(ー)赤身肉や精製肉、砂糖入清涼飲料水、塩分

植物ベース食
(+) 野菜、果物・果物ジュース、豆類、全粒穀物、じゃがいも、ナッツ類、オリーブオイル
(ー)肉や加工肉製品、飽和脂肪酸、卵、魚介類、乳製品

やはり、概ね、似ていることがおわかりいただけると思いますが、その中でも少しずつ異なります。

今回、流産率の低下に関連した米国心臓協会の食事ガイドラインは、果物や野菜、全粒穀物、魚介類、ナッツや豆類を積極的に食べ、砂糖入清涼飲料水、塩分、精製肉、飽和脂肪酸は出来るだけ避けるという食べ方でした。

この食事パターンを参考に、食事全体を考えるのがよいと思います。

EARTH研究の被験者は主に白人女性です。食事には文化や体格が大きく影響しますので、この食べ方が日本人女性にもよいかどうかは、正確なことは言えません。

ただし、全体の傾向としては、人種や食文化を超えた普遍性があるはずです。

大切なことは、バランスです。


文献
1)JAMA Network Open. 2023; 6: e2329982.

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ____________________________________________________________

東京都調布市のウイメンズクリニック神野主催の第31回不妊相談会が2023年9月16日の土曜日に開催されます。

院長の神野正雄先生は、情熱をもって不妊治療、特に、高度生殖医療に取り組まれ、高齢による卵巣機能低下が原因の不妊症に対して、独自の考え方と方法で、高い実績を挙げておられる先生です。

当サイトのドクターに訊くでも、「質のよい卵を育むための生活習慣~高齢不妊との正しい戦い方」というテーマでインタビューさせていただき、記事にしています。

神野先生は、現代における不妊の主な原因は、晩婚化によって、お子さん望むようになったときには、女性は、既に、妊娠しづらい年齢に差し掛かっていることが多くなったこと。また、現代に特有の不健康な生活習慣、すなわち、夜更かし、ストレス、歩かない生活、質の悪い食生活などが、インスリン抵抗性を招き、卵子や精子の質を低下させていることを指摘されています。

また、抗糖化機能性食品「ヒシエキス」が、ART反復不成功の高齢不妊患者さんの妊娠率を改善することを臨床試験により見出され、国内や海外の学会で発表され、論文にもなっています。

これまでの不妊相談会では、なぜ不妊になるのか、カップルで取り組むべきことはどんなことなのか、高度不妊治療とはどんなものなのかを解説しています。

個別相談も可能だそうです。
※先着8組まで。

◎第30回不妊相談会
日程:2023年9月16日(土)
時間:14:15~15:30
場所:調布市民プラザ あくろす 3階 ホール1
定員:50名
費用:無料
参加希望の方は下記あてお電話でお申込みください。
042-480-3105

・詳細はこちら
https://www.akanbou.com/seminar/fe2e3eea095dcb247c974836448a9d7c99bebd5d.pdf

・ウイメンズクリニック神野サイト
https://xs132599.xsrv.jp/index.html


編集後記____________________________________________________________

生活習慣病の予防に有効とされている食事パターンは、妊娠や出産にも有利だということですね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1052
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,477部
・まぐまぐ: 2,226部
・合計部数: 3,703部(8月27日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。