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VOL.1040 地中海食は卵巣の反応性に影響するのか

2023年05月28日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1040             2023/5/28
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:地中海食は卵巣の反応性に影響するのか
・編集後記


最新ニュース解説 May. 2023_________________________________________

 地中海食は卵巣の反応性に影響するのか
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地中海食は、卵巣予備能が低下していないにもかかわらず、体外受精での卵巣刺激に対して、3個以下しか採卵できない、予期せぬ卵巣低反応を予防する可能性があることが、イタリアで実施された研究で明らかになりました。

体外受精では出来るだけ多くの卵子を採卵することが、治療成績を左右します。

つまり、採卵数が多いほど、妊娠率や出産率が高くなるというわけです。

採卵できる卵子の数は、卵巣予備能検査でおおよそ予測できます。卵巣予備能は「卵巣年齢」とされますが、正確には卵巣に残された卵子の数を表すものです、血液検査でAMHを、超音波検査で胞状卵胞数を測定し、その値を目安にします。

ところが、卵巣予備能から期待された卵子の数が採卵できないことがあり、予期せぬ卵巣低反応です。

卵巣予備能が低下しているのであればまだしも、卵巣予備能を有するにもかかわらず、低反応を招くことは、避けたいところです。

採卵数は妊娠率に直結するからです。

卵巣予備能、すなわち、卵巣に残っている卵子の数を増やすことが叶いませんが、食事パターンを変えることは可能です。

そういう観点から、今回の研究は勇気づけられる結果と言えます。

◎どんな研究だったのか?

イタリアのミラノ大学附属病院でART治療を受けるBMI(18-25)や卵巣予備能(胞状卵胞数が10-22個、AMHが2-5ng/ml)が標準的な18-39歳の女性294名を対象に地中海食と卵巣低反応の関係を調べました。

まず、卵巣刺激は150-225IU/日の排卵誘発剤を用いて行われました。

そして、採卵日に食物摂取頻度調査票を用いて食事調査を行い、どれだけ地中海食の近い食べ方をしているかをあらわす地中海食スコアを算出し、地中海食スコアで3つのグループ(低・中・高)にわけ、卵巣低反応がおこるリスクとの関係を解析しました。

◎どんな結果だったのか?
採卵数が3個以下の卵巣低反応だったのは294名中47名(15.9%)でした。

単純に地中海食スコアの高、中、低と卵巣低反応リスクは関連しませんでしたが、年齢など卵巣反応性に関与する因子の影響を統計学的に排除したところ、予期せぬ反応不良のリスクは、地中海食スコア中程度のグループの女性では低いグループの女性と比較して有意に低く、中程度と高いグループを一緒にしても、低いグループの女性と比較して有意に低いことが明らかになりました。

これらの結果から、地中海食に近い食べ方をすることは卵巣予備能があるにもかかわらず、採卵時に少ない卵子しか採れないことを予防できる可能性があることがわかりました。

◎地中海食
これまで地中海食は、体外受精の良好な妊娠率(2)や妊娠高血圧腎症リスク低下(3)に関連するという研究報告がなされていますが、産後うつ発症リスクの低下にまで関連するとのことです。

食(栄養)と生殖機能の関係についての研究が増えていますが、最近の傾向として栄養素や食品単体ではなく、食べ方、すなわち、食事パターンに着目し、どんな食べ方をすれば、妊娠や出産に有利になるのかが調べられています。

なぜなら、私たちは、普段、栄養素を食べているわけではなく、いろいろな食べ物を組み合わせて食事しているからです。

地中海料理の特徴は以下の通りです。
・野菜、果物の摂取量が多い。
・全粒粉を使っている。
・脂質はオリーブオイルが中心。
・ナッツ類、ベリー類、豆類、イモ類の摂取量が多い。
・魚、鶏、乳製品を少量から中量、赤身肉の摂取は少ない。
・卵は週4回以下。
・少量から中量のワインを食事と一緒に飲む。

食習慣がどのくらい地中海食に近いかを数値化したものが「地中海食スコア」で、スコアが大きいほど地中海食に近いことを意味します。

算出方法は、地中海食に関連する11種類の食品の摂取量や摂取頻度を6段階(0-5)で点数化し、それを合計(0-55)します(https://www.akanbou.com/docs/medscore.pdf)。

11種類の食品は以下の通りです。
・多く食べるほどスコアが高くなる食品:無精製穀物(全粒穀物、全粒粉パン、全粒粉パスタ、玄米他)、じゃがいも、果物、野菜、豆類、魚、オリーブオイル
・多く食べるほどスコアが低くなる食品:赤身肉や鶏肉、全脂肪乳製品(チーズ、ヨーグルト、牛乳)、アルコール

最後にこれまでの研究でわかっていることは、「なにを食べるかよりも、どう食べるか」が妊娠や出産に影響するということです。


文献)
1)Reprod Biomed Online . 2023 Mar 17;S1472-6483(23)00165-7. doi: 10.1016/j.rbmo.2023.03.011. Online ahead of print.
2)Hum Reprod 2018; 33: 494
3)J Am Heart Assoc 2022; 11: e022589.


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編集後記____________________________________________________________

なにを食べ、なにを避けるかについて、それほど神経質に考える必要はなく、食べ方全体を考えることが大切ですね。

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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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