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VOL.1036 適度に身体を動かすことが基本なのかもしれない

2023年04月30日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1036              2023/4/30
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:適度に身体を動かすことが基本なのかもしれない
・編集後記


最新ニュース解説 Apr. 2023__________________________________________

 適度に身体を動かすことが基本なのかもしれない
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ART女性患者を対象に実施された研究で、抗酸化ビタミンやカロテノイドの摂取、タバコやお酒、カフェイン、運動習慣と治療成績との関係を調査したところ、適度な運動習慣のみが妊娠したかどうかに関連したことがイタリアの研究(1)で明らかになりました。

不妊治療では1回あたりの成功率は、それほど高くありません。特に、女性の年齢が高くなるほど、低くなってしまいます。

そのため、少しでも妊娠にプラスに影響するような、自分で出来ることに取り組みたいと思うのは、当然のことと思います。

ただし、「なにをどう取り組むか」が大切です。

なぜなら、出来ることは限られているからです。

では、「なにをどう取り組むか」をどのように選択すればよいのでしょうか?

もちろん、いろいろな考え方がありますが、やはり、科学的な行われた研究で得られたエビデンスをベースにすべきです。

そういう意味では今回の研究はとても参考になります。

◎どんな研究だったのか?
イタリアのミラノにある不妊治療クリニック、The Fertility Unit of Fondazione IRCCS Ca' Grandaで、体外受精を受ける不妊女性患者494名を対象に実施された前向き研究です。

まず、食物摂取頻度票を用いて食事調査を実施し、過去1年間の1週間のビタミンC、D、E、葉酸、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチン、ルテインの平均的な推定摂取量を算出しました。

また、インタビューで、喫煙習慣の有無、アルコールやカフェインの摂取量、そして、習慣的な身体活動について調べられました。

そして、その後の体外受精で、それらと成熟卵が採卵出来たか、胚移植が出来たか、、臨床妊娠が確認出来たか、生児を獲得出来たかどうかの関係を統計学的に解析されました。

◎どんな結果だったのか?
ビタミンC、D、E、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、葉酸の摂取量については、治療成績に影響するさまざまな因子を排除しても、関連性は見出せませんでした。

また、喫煙習慣やアルコール・カフェイン摂取量は、いずれの結果とも関連を示しませんでした。

そして、その一方、過去5年間の適度な身体活動量は、臨床妊娠と関連した、すなわち、適度な運動習慣がある女性のほうが、ない女性に比べて妊娠に至る確率が高かったというのです。

◎身体を動かすということ
人間が、人間として進化して以来、"何万年"という、想像を絶するくらい長い期間にわたって、人間は、狩猟採集生活をしていました。

その特徴は、長い距離を歩かないと、食べ物が手に入らない生活です。

人間は動くようにできているのかもしれない、つまり、人間は、動き回ってこそ、さまざまな機能がほどよい状態に維持されるような、そんな遺伝的なプログラムがなされているのではないかということです。

ところがです。

それほど動かなくても食べられるようになって何百年、そして、現代のようにいながらにして、ほとんどのことができるようになって何十年、とにかく、動かなくなりました。

私たちの身体に備わった、あらゆる機能がうまく働かなくなる最大の原因は、人間が生きる社会の環境が激変したことによって、私たちの身体にふさわしくない、本来の身体のメカニズムに合わない生活を送るようになったからではないかと考える専門家が多くいます。

私たちの身体の状態を正常に保つには、自分たちの身体に本来的に備わったメカニズムを意識し、それにあったような生活を送るように心掛けることではないでしょうか。

それは、とにかく、動くことです。

◎身体を動かすことが基本なのかもしれない
今回の研究で調べられた治療成績との関連は、抗酸化物質(食事)、たばこ、お酒、そして、運動でした。

食事やたばこ、お酒は、いずれも、摂取するもので、治療成績によい影響を及ぼす食べ物、悪い影響を及ぼす嗜好品という観点です。

これらと運動は、身体への影響が根本的に異なります。

どうことかと言いますと、いくらよい栄養素をたくさん摂取しても、しっかり消化吸収され、妊娠や出産に関与する細胞まで到達し、働いてもらななけえば意味がありません。

その一方、悪い影響を及ぼす嗜好品を摂取しても、それらの害を消すような働きが機能すれば、帳消しとまではいかないにしても、緩和されます。

そして、いずれの働き、すなわち、消化吸収、栄養素の運搬、さまざまなホルモンや酵素をはじめとする無数の生理活性物質たちで、これらが適切なタイミングで、適切な量が分泌されるのは、血液の正常な流れです。

それを支えるのが適度に身体を動かすこと以外にはありません。

◎取り組むことの優先順位が肝
このように運動は、身体に備わったあらゆる機能を正常に働かせるための要件なのです。

最重要のレイヤーです。

まさに、人間は動くように出来ている動物なのです。

取り扱い説明書があるとすれば、最初に書かれるのは、以下のような注意書きかもしれません。

適度に動かさないとさまざまな働きが低下するおそれがあります、と。


文献)
1)Antioxidants 2023; 12: 286

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編集後記____________________________________________________________

アウトドアが気持ちのよい、自然の中のウォーキングが最適な季節です。

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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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