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VOL.1031 炎症を起こしやすい食事と子宮内膜症

2023年03月26日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1031         2023/3/26
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:炎症を起こしやすい食事と子宮内膜症
・編集後記


最新ニュース解説 Mar.2023__________________________________________

  炎症を起こしやすい食事と子宮内膜症
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炎症を起こしやすい食生活を続けている女性は、子宮内膜症にかかりやすいことが、全米国民健康栄養調査の結果から明らかになりました(1)。

最近、子宮内膜症に慢性炎症が関与しているという研究報告がなされています。

その一方、慢性炎症には食生活が影響していることが知られています。

すなわち、慢性炎症を起こしやすい食事、抑制しやすい食事があるということです。

そして、食事が炎症状態に及ぼす影響を計る目安として食事性炎症指数(Dietary Inflammatory Index)があり、その頭文字をとってDIIスコアと呼ばれています。

要するに、 DIIスコアが低いほど炎症を抑える食事で、高いほど炎症を促進する食事になります。

◎どんな研究だったのか?
まず、全米国民健康栄養調査(1999-2006)のデータを用いて、3,410人の成人女性を対象に、食事に関する質問票をもとにDIIスコアを算出しました。

そして、DIIスコアで、高、中、低の3グループに分け、子宮内膜症の発症との関係を調べています。

◎どんな結果だったのか?
3,410名の被験者女性の内、265名が子宮内膜症と診断され、DIIスコアが高いグループは、低いグループに比べて子宮内膜症にかかるリスクが1.57倍も高いことがわかりました。

このことから、炎症を起こしやすい食生活を続けている女性は子宮内膜症になりやすいことがわかりました。

炎症を抑制しやすい食事は子宮内膜症の予防にもなる得るかもしれません。

◎子宮内膜症とは?
子宮内膜症とは子宮内膜以外のところに、子宮内膜ができてしまう病気です。そもそも、子宮内膜というのは、その名前の通り、子宮の「内」側に、エストロゲン(女性ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の作用によって、育てられる「膜」のことです。

月経が終わった後、エストロゲンが増えるに従って、徐々に厚くなり、排卵の後、プロゲステロンが加わると、受精卵の着床しやすくなるように、ふかふかになり、妊娠の準備が整います。もしも、妊娠しなかった場合には、これらのホルモンが少なくなり、子宮内膜が一気にはがれ落ちてしまい、出血(月経)がおこります。

これが、子宮の内側以外、たとえば、卵巣や卵管、そして、子宮の周囲の組織にできて、同じように厚くなり、はがれ落ちて、出血します。

そして、それが毎月繰り返されることで、炎症が起こったり、その周りの組織同士が癒着して、ひどい場合は臓器が変形することもあります。

もしも、卵巣にできると、毎月の出血で、吸収しきれなくなった血液が徐々に溜まり、それが古くなると、茶色いドロドロになり、チョコレートのようになることから、チョコレート嚢胞と呼ばれています。

このように「子宮内膜が子宮以外のところにできる」という、メカニズムそのものは単純ですが、できる場所やその程度はさまざまで、それによる影響は完全には把握できないくらい複雑です。

自覚症状がない場合もあれば、強い生理痛や性交痛がある場合もあります。

生殖年齢にある女性の約10%がかかっていると言われていますが、原因についてはいろいろな説あり、よく分かっていません。

◎子宮内膜症がどのように不妊症に関与しているのか
子宮内膜症によって不妊の原因になると考えられているものは多岐に渡り、複雑です。

まずは、子宮内膜症による炎症や癒着が子宮や卵巣、卵管の位置を変え、卵管が変形し、卵管が通りにくくなってしまったり、卵巣の癒着が黄体化非破裂卵胞を起こし排卵障害を招いたりというような物理的なケースがあります。

また、子宮内膜症に伴って分泌される炎症を促進する物質の影響によって着床しづらくなったり、卵子や胚の質が低下したり、まわりまわって、精子の運動性能や卵管の働きが弱まったりというような化学的な変化によるものもあります。

◎炎症を抑制する食べ方で子宮内膜症の重症化を予防する
子宮内膜症は明確な原因がわかっていませんし、医療でも根本的な治療は困難とされています。

セルフケアは、もちろん、子宮内膜症そのものの治療を目的とするものではありません。

ポイントは子宮内膜症が暴れることなく、できるだけおとなしくしていてもらい、そのスキに妊娠してしまうことです。

妊娠が子宮内膜症の最も効果的な治療になりますから、そういう意味で一石二鳥です。

現在、子宮内膜症が起こる原因の1つとして月経血の「逆流」が有力視されています。

子宮内膜を含む月経血が膣ではなく、反対の卵管の方に流れ出し、そこから腹腔(お腹)内に出ていき、腹腔内や卵巣、卵管に子宮内膜が付着し、生育するというものです。

ところが、逆流が起こり、子宮内膜が子宮以外のところに運ばれても、そこで炎症が起こりにくければ、子宮内膜症は悪化しないはずです。

つまり、子宮内膜症の広がりや悪化は炎症体質かどうかが関係します。

そのため、炎症が起こりにくい食生活を心がけ、炎症体質を緩和させることで、子宮内膜症が、それ以上悪化しない、広がりにくい体質にし、治療成績が悪くならないようにし、早く妊娠できるようになることを目指します。

◎炎症を抑制する食べ方
炎症を起こしにくい食べ方の代表は地中海食で、地中海沿岸地域の伝統的な食事パターンです。

野菜、じゃがいも、豆類、果物、全粒穀物、魚、オリーブオイルを多く、高脂肪乳製品、赤肉、鶏肉、アルコールが少ない食べ方です。

反対に、炎症を起こしやすい食べ方は、肉や加工肉、臓物、砂糖入り清涼飲料水、精製穀物が多く、緑黄色野菜、緑茶、コーヒー、ワイン、青魚が少ない食べ方です。

これまで妊娠や出産に良好な影響を及ぼす食べ方に共通するのは、野菜や果物、全粒穀物、魚を多く、精製食品や肉類、砂糖添加食品を少なく食べることです。

特に、炎症を起こしにくという観点から見れば、野菜の中でも、緑黄色野菜、魚の中でも青魚を多く食べることです。


文献)
1)Front Nutr 2023; 10: 1077915.

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編集後記____________________________________________________________

慢性子宮内膜炎も炎症体質が関与します。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1031
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