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VOL.1026 妊娠前から魚を食べることの大切さ

2023年02月19日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1026            2023/2/19
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:妊娠前から魚を食べることの大切さ
・お知らせ:不妊相談会
・編集後記


トピックス Feb.2023________________________________________________
 
 妊娠前から魚を食べることの大切さ
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アメリカのハーバード大学のEARTH研究で、体外受精や顕微授精に臨む女性では、魚介類の摂取量が多いほど治療成績が良好であるという報告がなされています(1)。

EARTH研究というのは、関連病院であるマサチューセッツ総合病院で体外受精や顕微授精を受けているカップルを対象に治療成績に影響する環境や栄養因子について調査している研究のことです。

体外受精に臨むカップルにとって、どんな食事や生活習慣に気をつければ、その後の治療成績にプラスになるのか、参考にしてもらうことを目的としています。

日本では、このような研究はなかなか行われないので、EARTH研究は研究としての質も高く、信頼できる情報源として貴重です。

私たちは、EARTH研究の研究リーダーである、ジョージ・チャバロ教授を2019年のに日本生殖医学会に招聘し、来日記念講演会を主催しました。
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100031/021200652/

◎魚を食べることは妊娠しやすさや子どもの脳の発育によい影響を及ぼす
この研究は、昨年、発表されたもので、2007年から2020年にART治療に臨む229組のカップルに治療開始前に食物摂取頻度票を用いて食事調査を実施し、魚介類の摂取量を算出し、摂取量で4つのグループに分け、その後の410周期の着床率や臨床妊娠率、出産率、流産率、精液検査結果(343名の男性の896サンプル)を比較しています。

その結果、魚を最も多く摂取している女性の出産率は54%だったのに対して、最も少なかった女性では36%と、統計的に有意な差で、魚をたくさん食べている女性のほうが治療成績が良好という結果でした。

栄養素としては、唯一、魚に含まれるDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸が関与していると考えられ、実際にDHAとEPAの摂取量が多い女性は少ない女性に比べて、治療成績が良好だったようです。

また、不妊治療を受けていないカップルでも、魚を食べる頻度が周期あたり8回以上食べたカップルは1回以下だったカップルに比べて性交の頻度が22%多く、妊娠率も61%高かったという、同じハーバード大学の研究報告がなされています(2)

このように、魚介類をたくさん食べることは、妊娠する働きに良好な影響を及ぼすことは間違いありません。

さらに、魚食は、妊娠しやすさだけでなく、出生児の発育にもよい影響を及ぼすことが知られています。

日本の研究で、エコチル調査と呼ばれている、子どもの健康と環境に関する研究に参加する約82,000人の妊娠中女性の魚の摂取量と出生児の発達の関係を調べた研究報告があります(3)。

妊娠中の女性の魚の摂取量で5つのグループ(少ない・やや少ない・中程度・やや多い・多い)に分け、少ないグループとほかのグループの出生児の発達状況、具体的には、「コミュニケーション」、「粗大運動」、「微細運動」、「問題解決」、「個人・社会」の5つの領域の神経発達の状況を点数化して評価しています。

その結果、「コミュニケーション」、「粗大運動」、「個人・社会」の領域では、妊娠中の魚の摂取量との関連は認められませんでしたが、「微細運動」と「問題解決」の領域では、魚を多く食べたグループで発達が遅めになる子が少ないというのです。

妊娠中の魚の摂取は子どもの神経発達のいくつかの領域の発達の遅れを抑えることに関係していること、また、それはオメガ3脂肪酸が関与していると考えられています。

◎日本人女性の魚の摂取量は激減し、肉の摂取量は激増している
妊娠や出産に極めて重要な魚なのですが、日本人女性の摂取量は、年々、減り、反対に肉類の摂取量が、年々、増えています。

どれくらいかと言いますと、厚生労働省が毎年実施している国民健康・栄養調査の平成11年版では、魚の平均摂取量は30代女性で70.9g、40代女性で92.5gでした。ところが最新の令和元年版では、30代女性で46.3g、40代女性で46.5gと、それぞれ、35%、50%も減っています。

一方、肉類は正反対で、平成11年版の肉の平均摂取量は30代女性で78.4g、40代女性で76.6gだったのが、令和元年でが30代女性で97.9g、40代女性で110.1gと、それぞれ、25%、43%も増えています。

この20年で40代女性の魚の摂取量は半減し、肉が倍増しました。

その結果、良質な脂肪酸であるオメガ3脂肪酸の摂取量が減り、反対に低質な飽和脂肪酸の摂取量が増え、脂肪酸摂取という栄養的な観点から言えば、妊娠や出産、出生児の健康にはマイナスの影響を及ぼすようになっています。

◎脂肪酸代謝酵素の遺伝子多型の問題
栄養素が足りているかどうかは、どれだけ摂取しているかだけで決まるわけではありません。摂取しても代謝酵素の活性(働きぐあい)も影響します。

十分な量を摂取していても、代謝酵素の活性が低くなる遺伝的な傾向をもっていれば、不足しやすくなります。

葉酸の代謝酵素に遺伝子多型が存在していて、日本人女性の約6割以上は、葉酸をうまく活用できない遺伝的な傾向をもっていることは、知られるようになりました。

そのため、そのような傾向をもっている場合は、葉酸の必要量が増える妊娠前からサプリメント補充が必須です。

同じ遺伝子多型がDHAに変換される代謝酵素にも存在し、日本人女性の半分くらいはその傾向をもっていることがわかっています。

そのような遺伝的傾向をもっている女性は、もっていない女性に比べて、母子ともDHA濃度が低いという研究報告がなされています(4)。

そのため、この遺伝的傾向をもっている場合は、魚の摂取量が減ることで、DHAが不足するリスクがもいっていない場合に比べて高くなるということになります。

◎魚食は健康的な食生活の鍵
私たちは、2016年に名古屋と東京で開催された、妊娠を希望するカップルを対象としたイベントにて、食習慣や睡眠習慣、体格についてのアンケート調査を実施し、284名から回答をいただきました。

その結果から、魚をあまり食べない女性は、朝食や大豆を食べる習慣がない人が多いことがわかりました。

反対に、魚を多く食べる女性は、食事全体のバランスがよいことが多く、魚を食べることが健康的な食生活の鍵になっていました。

これまでの研究報告についても、単なる魚の食べる量の多い少ないだけでなく、魚を多く食べる女性は食事全体のバランスもよい人が多いことが寄与している可能性があるのではないかと考えられます。

目安として、週に3回以上、魚を食べること、そして、肉を減らすこいを意識して取り組むべきです。

妊娠前、妊娠中の食事は、全粒穀物(玄米、全粒粉パン)、野菜、果物、豆類、魚介類、ナッツ類を揃えることを意識します。

反対に、高度に加工さえたコンビニ食は極力避けることです。

そして、その上で、妊娠前から分娩まで、葉酸、ビタミンD、DHA・EPAのサプリメント補充は有用です。


1)Am J Obstet Gynecol. 2022; 227: 246.e1
2)J Clin Endocrinol Metab 2018; 103: 2680
3)Am J Clin Nutr. 2020; 112: 1295
4)Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 2020; 152: 102031

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お知らせ____________________________________________________________

東京都調布市のウイメンズクリニック神野主催の第30回不妊相談会が2023年3月12日の日曜日に開催されます。

院長の神野正雄先生は、情熱をもって不妊治療、特に、高度生殖医療に取り組まれ、高齢による卵巣機能低下が原因の不妊症に対して、独自の考え方と方法で、高い実績を挙げておられる先生です。

当サイトのドクターに訊くでも、「質のよい卵を育むための生活習慣~高齢不妊との正しい戦い方」というテーマでインタビューさせていただき、記事にしています。

神野先生は、現代における不妊の主な原因は、晩婚化によって、お子さん望むようになったときには、女性は、既に、妊娠しづらい年齢に差し掛かっていることが多くなったこと。

また、現代に特有の不健康な生活習慣、すなわち、夜更かし、ストレス、歩かない生活、質の悪い食生活などが、インスリン抵抗性を招き、卵子や精子の質を低下させていることを指摘されています。

抗糖化機能性食品「ヒシエキス」が、ART反復不成功の高齢不妊患者さんの妊娠率を改善することを臨床試験により見出され、国内や海外の学会で発表され、論文にもなっています。

これまでの不妊相談会では、なぜ不妊になるのか、カップルで取り組むべきことはどんなことなのか、高度不妊治療とはどんなものなのかを解説しています。

個別相談も可能です。
※先着5組まで。

◎第30回不妊相談会
日程:2023年3月12日(日)
時間:13:30~15:30
場所:調布市文化会館たづくり 10階 1001学習室
定員:50名
費用:無料

参加希望の方は下記あてお電話でお申込みください。
042-480-3105

・詳細はこちらから
https://www.akanbou.com/seminar/d14bb28433ec699ad7c01a8f04e39262f09af9b9.pdf

・ウイメンズクリニック神野サイト
http://home.j07.itscom.net/ivfjinno/index.html


編集後記____________________________________________________________

妊娠前からの適切な食とライフスタイルは、不妊治療の効果を大きくし、妊娠中の胎児、そして、出生後のお子さんの心身の健康を左右します。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1026
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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