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VOL.1022 精子の質が流産リスクに影響する可能性

2023年01月22日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1022            2023/1/22
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:精子の質が流産リスクに影響する可能性
・編集後記


トピックス Jan. 2023________________________________________________

精子の質が流産リスクに影響する可能性
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妊娠はするけれども、2回以上の流産、死産を繰り返して結果的に子供を持てない場合、不育症と呼びます。

不育症の悩ましさは、原因がわからない、すなわち、たまたまだったかもしれないというケースが多くあることで、厚生労働研究班による不育症のリスク因子別頻度では検査をしても明らかな異常が判らない方が65.3%にも存在するとしています。

要するに、多くの場合、確実な治療なり、対策を講じること難しいというわけです。

そんな中で、母体や卵子ではなく、精子が関与する可能性もあるという研究報告も少なくありません。

たとえば、イギリスのインペリアルカレッジロンドンの研究チームによる観察研究で、不育症の女性患者の男性パートナー50名と不育症でない女性の男性パートナー60名の精液中の酸化ストレスや精子DNA断片化率を比較した研究があります。

それによれば、精液中の酸化ストレスは活性酸素は対照群に比べて不育症の男性パートナーのグループは不育症でない男性パートナーのグループに比べて4倍高く、精子DNA断片化率も2倍高かったというのです。

不育症女性の男性パートナーの精子の質は不育症でない女性の男性パートナーのそれに比べ、著しく低いというわけです。

精子の質が流産を繰り返すリスク因子になる可能性があるということです。

ここで、精子の質というものを正しく理解しておく必要があります。

通常、男性に対する一般的な不妊検査である精液検査でわかるのは、精液中の精子数や運動率などで、それは精子の量や活発さです。

ところが、精液中にいくら元気な精子がたくさんいても、質が悪ければ、受精率や受精後の胚の成育にマイナスの影響を及ぼすことが知られています。

つまり、精液検査で数値が基準をクリアしていても、精子の質が悪ければ妊娠に悪影響を及ぼす可能性があるというわけです。

それでは、精子の質はどのように調べるのでしょうか。

精子DNAの断片化率が精子の質をあらわす目安になると考えられています。精子DNAの断片化というのは、精子の頭部に格納されているDNAが傷つき、ちぎれていることで、精子DNA断片化率は精子DNAが傷ついた精子の割合のことです。

精液検査結果とは別に、この精子DNA断片化率が30%を超えると自然妊娠が困難になるとされています。

それでが、なにが精子の質を悪くするのでしょうか。

精子DNAを傷つけるのは、主に酸化ストレスによるもの、すなわち、活性酸素によるダメージです。

私たちの体内では常に活性酸素が発生している一方、活性酸素を無毒化する働き、すなわち、抗酸化作用も備わっています。その中心は体内でつくられる抗酸化酵素で、その他に食事から摂取する抗酸化物質が協働し、活性酸素の害から体を守る抗酸化ネットワークを張り巡らせています。

通常、酸化力(活性酸素によるダメージ)と抗酸化力(抗酸化ネットワークの防御能力)はバランスがとれていますが、活性酸素が過剰に発生したり、もしくは、抗酸化力が低下したりして、酸化力が抗酸化力を上回った状態を「酸化ストレス」と言います。

つまり、酸化力と抗酸化力のバランスが酸化力のほうに傾いた状態が「酸化ストレス」なのです。

そのため、活性酸素が過剰に発生している状態、あるいは、禁欲期間が長くなると古い精子が増えると、精子DNA断片化率が高くなると考えられます。

精子の質を悪くしないためには、精子の質の低下を防ぐには酸化ストレス対策が重要です。

以下に取り組むべきテーマを挙げてみます。

・禁煙:たばこが精子DNA断片化させ、精子の質を低下させます。
・高温を避ける:精巣は高温環境に弱いため、下着はブリーフを避け、トランクスが推奨されます
・抗酸化サプリ:コエンザイムQ10やビタミンC、ビタミンEが推奨されます。
・精索静脈瘤:精索静脈瘤は酸化ストレスと共に陰嚢内の温度まで上昇させます。
・禁欲期間:毎日、少なくとも1週間に3回は射精すると精子DNA断片化率が低下します。

女性の卵子と違い、男性の精子は毎日つくられています。そのために、精子を劣化させないように出来ることが少なくありません。

いずれもこれまでの研究で精子の質に深く関与していることがわかっています。

気をつけていただきたいのは、あくまで、精子の質が不育症のリスク因子になる可能性があるということです。

不育症の教科書にも精子の質については触れられていませんが、ヨーロッパ生殖医学会の習慣性流産のガイドラインには、精子の質の関与の可能性が指摘され、精液中の酸化ストレスを測定した上で抗酸化療法に取り組む選択肢について言及されています。

精子の質を悪くしないことは男性自身の健康管理にもなり、流産を繰り返すカップルは男性の精子の質にも目を向ける価値はありそうです。

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編集後記____________________________________________________________

男性は精液検査で問題なかったからといって、関係ないというわけではないことを知っていただきたいと思います。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1022
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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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