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VOL.1016 やせと人工授精治療成績の関係

2022年12月11日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1016           2022/12/11
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:やせと人工授精治療成績の関係
・編集後記


最新ニュース解説 Dec. 2022__________________________________________

 やせと人工授精治療成績の関係
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BMIが18.5未満のやせの女性は、BMIが18.5〜24.9に正常体重の女性に比べて人工授精の妊娠率や出産率が低いことが中国で実施された研究で明らかになりました(1)。

BMI、特に低体重が体外受精の治療成績に及ぼす影響についての研究報告は多くなされていますが、人工授精の治療成績への影響については、それほどありませんでした。

◎どんな研究だったのか?
2015年7月から2020年12月までに中国の廈門大学附属病院で人工授精を受けた6,407人の不妊女性患者の13745周期の累積治療成績を、BMIが18.5未満の低体重(やせ型)、18.5〜24.9の正常体重、そして、25〜29.9の過体重の間で比較しました。

◎どんな結果だったのか?
やせの女性(990名)は正常体重の女性(4,563名)と比べて、累積妊娠率(20.71% vs 25.93%)や出産率(17.17% vs 21.61%)が低く、過体重の女性(854名)は累積妊娠率(31.97%)と出産率(26.58% )が最も高いことがわかりました。

◎BMIと妊娠しやすさ
太り過ぎると妊娠しにくくなることはよく知られていますが、やせ過ぎても妊娠しにくくなるようです。

肥満が大きな問題となっている海外とは異なり、日本では妊娠可能年齢の女性では、肥満(BMI25以上)の女性の割合が約10%なのに対して、やせ(BMI18.5未満)の女性が約20数%で、倍以上です。

そのため、日本では、太り過ぎの問題もさることながら、やせ過ぎの問題が、より現実的です。

◎「肥満」や「やせ」の定義
研究でも用いられていますが、体重が適正かどうかは、BMI(Body Mass Index)を算出することで確認できます。

BMIは体格指数と呼ばれ、「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」で算出し、国際的な指標として用いられています。

例えば、体重が50kgで、身長が155cmの方の場合は、 50÷(1.55×1.55)=20.8となります。

日本肥満学会による基準は以下の通りです。
18.5未満:低体重(やせ)
18.5以上25未満:標準
25以上30未満:過体重
30以上:肥満

◎やせと生殖機能
「やせ」、すなわち、低栄養では十分なエネルギーがつくることが難しくなるので、当然、省エネ運転が必要になります。

その場合、優先するのは自らの生命を守ることで、後回しにされるのが生殖機能で、このような自然界のメカニズムが働くことが「やせ」が妊娠力を低下させる根本原因です。

これまでの多くの研究で妊娠、出産に最適なBMIの範囲は、日本人ではBMIが20から23とされています。

◎やせがART成績に及ぼす影響
同じく中国で4,798周期の体外受精の新鮮胚移植における女性の年齢やBMIと妊娠率との関係を調べた研究があります(2)。

低体重(BMIが18.5未満)は妊娠率にマイナスの影響を及ぼすこと、特に、年齢が35歳以上になると顕著になることがわかりました。

年齢が高くなるほど適正体重のキープが重要になるようです。

◎やせが出生児に及ぼす影響
女性の低体重は、妊娠できたとしても、子宮内の栄養環境が悪いため、胎児の発育が十分でなくなることから低出生体重児のリスクが高くなります。

低出生体重児とは2500g未満で生まれた赤ちゃんのことです。小さく生まれた赤ちゃんは、将来、生活習慣病にかかりやすくなることが知られています。低栄養の子宮内に成育すると、その環境に適応して生き抜けるように代謝を調節するように遺伝子の働きが変化して、少ない栄養でも生きていけること出来る体質が形成されます。

つまり、省エネ型の体質になるのです。

そんな体質に生まれた場合、普通に食べて、生活していても、太りやすくなり、そこに悪い生活習慣が重なると、同じような生活習慣でも、生活習慣病にかかりやすくなります。

このようにBMIが18未満の低体重は、妊娠や出産に不利になりますので、適正体重を目指し、食生活を見直す必要がありそうです。


文献)
1)J Assist Reprod Genet. 2022 Nov 21. doi: 10.1007/s10815-022-02658-y. 
2)Fertil Steril 2017; 107: 422

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編集後記____________________________________________________________

体重は摂取エネルギー(食事)と消費エネルギー(身体活動)とのバランスで決まります。BMIが高かったり、低かったりした場合、それらのバランスを見直す必要があります。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1016
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