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VOL.1014 睡眠の質は体外受精の妊娠率や出産率に影響を及ぼす

2022年11月27日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1014           2022/11/27
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:睡眠の質は体外受精の妊娠率や出産率に影響を及ぼす
・編集後記


最新ニュース解説 Nov.2022__________________________________________

 睡眠の質は体外受精の妊娠率や出産率に影響を及ぼす
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体外受精や顕微授精を受けている女性にとって、良好な睡眠の質は高い妊娠率や出産率に関連することが中国で実施された前向き研究で明らかになりました(1)。

睡眠が人間の健康に重要なことは、もはや、当たり前の事実で、睡眠の質の低下は、さまざまな疾患の発症リスクを高めることは、広く知られています。

そのため、睡眠は生殖機能に影響を及ぼすことも、また、間違いないことですが、不妊治療成績との関係について多くの報告がなされていますが、その結論は必ずしも一致しているわけではありません。

具体的には、睡眠については、長さ(睡眠時間)、質、リズム(朝型夜型)など、いくつかの指標があり、それぞれの指標とART治療成績との関連について研究されていますが、結論が食い違っています。

今回、前向き研究でわかったことは、良好な治療成績に関係するのは、睡眠の長さ(睡眠時間)ではなく、質であるということです。

◎どんな研究だったのか?
山東大学生殖医療センターで2019年7月から2020年7月に治療を開始したART女性患者7847人のうち、3183人を対象として、睡眠と妊娠率や出産率、流産率との関係を調べることを目的とした前向け研究が実施されました。

胚移植前に質問票を用いて、睡眠時間や睡眠の質、朝型・夜型・中間型かを調べ、胚移植後の治療成績と関係が解析されました。

睡眠時間は平均睡眠時間を7時間未満、7〜8時間、8〜9時間、9〜10時間、10時間以上の5つのグループ に分けました。また、睡眠の質は専用の質問票を用いて、スコア化し、5点以上で睡眠の質が悪いと定義しました。さらに、入眠と覚醒の中間を睡眠中間点として、睡眠中間点が午前2時半より早い場合を朝型、午前3時半より遅い場合を夜型、それ以外を中間型と定義しました。

◎どんな結果だったのか?
睡眠の質が悪い女性に比べて、睡眠の質が良い女性は、臨床妊娠率(69.3%対65.1%)や出産率(50.5%対45.7%)が高く、影響を及ぼす因子を統計学的に調整した結果、睡眠の質が高い女性は悪い女性よりも臨床妊娠率が7%、出産率が12%高かったことがわかりました。

また、朝型の女性は、臨床妊娠率や出産率が最も低く、流産率が最も高いこともわかりました。

その一方で、睡眠時間は、治療成績に関連しませんでした。

これらの結果から、ART治療成績に影響するのは睡眠の長さではなく、質であることが示唆されました。

◎日本人の睡眠時間
厚生労働省の国民健康・栄養調査の最新版をみてみると、年代別の1日の平均睡眠時間が6時間未満は30代女性で37.7% 、40代女性では52.4%と半分を超えていました。

睡眠の質では、睡眠で休養が十分にとれていない者の割合は30代で27.6% 、40代で30.9%でした。

このように睡眠質が、妊娠にマイナスの影響を及ぼしているおそれのある女性が多く存在することがわかります。

◎スマホとの付き合い方で睡眠の質が左右される
妊娠や出産に至るプロセスは、あらゆることが適切なタイミングで起こることが重要です。不妊治療は、たいてい、カップルに適切な性交のタイミングを指導されることからはじまります。また、ほとんどの女性の不妊検査しかり、治療が始まれば、あらゆる治療には施されるタイミングが決められています。

さらに、タイムラプスインキュベーターの普及で、培養器の中の胚の分割スピードの適切なタイミングがあること、遺伝子解析技術の進歩で胚移植に個々に適切なタイミングもわかるようになりました。

そして、このタイミングのベースになるのが女性の身体のサイクルです。

つまり、妊娠や出産は女性の身体が奏でるリズムが進めていると言えるわけです。

では、なにがこのリズムをつくりだしているのでしょうか?

答えは「体内時計」です。

この体内時計が、睡眠やホルンモン、神経活動、免疫など、さまざまな生理現象にリズムをもたらしているのです。性周期のない男性も同じです。メインの体内時計は一つで、脳内の視交叉上核、すなわち、目の神経が交差する部分の上にある神経細胞の集まりに存在しています。

そして、メインの他に全身の細胞、一つ一つにもあります。

メイン時計の1日の長さは、24時間より長いのですが、朝に目から入る光によって調節されます。

ところが、夜間に光を浴びると時計が狂ってしまいますので、寝る前はテレビやスマホは見ないようにすべきです。

特に、スマホは、テレビなどに比べて、目(脳)に近いので、その影響は強力です。40歳以上の女性では体内時計の乱れが卵巣機能低下を促進するという研究報告がなされています。また、スマホの夜間使用が精子の質を低下させるとの研究報告まであります。

夜間、そして、起床後すぐのスマホ使用は、女性でも、男性でも、妊娠する力を低下させます。

そして、スマホ使用を制限するだけでなく、以下の通り、生活リズムを意識して、体内時計を整えましょう。

1)夜は暗くする。
2)夜はスマホをみない。
3)早く(遅くとも12時までに)寝る。
4)朝は早く(決まった時間に)起きる。
5)目覚めと同時に自然光を浴びて、水を飲む。
6)朝食(タンパク質)を食べる。
7)午後3時以降はカフェリンを摂らない

体内時計を整え、年齢とともに分泌量が低下するとされているメラトニンの分泌量を維持することで、睡眠の質を維持する根本テーマになります。


文献)
1)Fertil Steril 2022. Article in press https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2022.10.015

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編集後記____________________________________________________________

日中の活動、すなわち、身体をしっかりと動かすことで睡眠の質がよくなります。平日は平日なりに、休日は休日なりに、身体を動かすことをプランすることがお勧めです。そのことは、ストレスに強くなるという嬉しいおまけまでついてきます。

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