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VOL.1009 睡眠の質は体外受精治療成績に影響する

2022年10月23日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1009          2022/10/23
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:睡眠の質は体外受精治療成績に影響する
・お知らせ:情報提供サイト「精子の質改善ラボ」を公開しました
・編集後記


最新ニュース解説 Oct.2022 __________________________________________

 睡眠の質は体外受精治療成績に影響する
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睡眠の質は体外受精の治療成績に影響する一方で、ストレスや不安、抑うつの程度は影響しないことがイタリアで実施された研究で明らかになりました(1)。

不妊治療、特に、体外受精や顕微授精は、メンタルヘルスに影響を及ぼすことがあり、不安や抑うつ、睡眠障害などがよくある訴えです。

今回の研究では、抑うつや不安、ストレス、睡眠の質の低下が、体外受精の成功にどの程度の影響を及ぼすのかを調べています。

◎どんな研究だったのか?
体外受精に臨む女性患者263名を対象に採卵時に睡眠の質やストレス、抑うつ・不安を質問票を用いて、それぞれの程度を測定し、その後、妊娠に至った女性と至らなかった女性で比較しました。

睡眠の質はピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を、不妊によるストレスは、Fertility Problem Inventory(FPI)、そして、抑うつや不安は、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)という質問票が使われました。

◎どんな結果だったのか?
263名のうち81名(31%)が妊娠に至りました。FPIとHADSスコアは、すなわち、不妊によるストレスや抑うつ・不安の程度は、妊娠したグループと妊娠できなかったグループの間で違いはありませんでした。

ところが、PSQIスコア、すなわち、睡眠障害の程度は、妊娠したグループよりも妊娠できなかったグループのほうが高く、スコアの中央値は妊娠女性では4だったのに対して妊娠できなかった女性では5でした。

また、PSQIスコアが5を超えた睡眠障害の女性の割合は妊娠した女性のグループでは20%だったのに対して妊娠できなかった女性グループでは36%で、有意に多く、睡眠障害とされた女性は、そうでなかった女性に比べて、妊娠に至った確率は50%低いことがわかりました。

このように、ストレスや抑うつ、不安の程度は、体外受精の成績への影響は認められなかた一方で、睡眠障害はマイナスの影響を及ぼす可能性があることがわかりました。

◎睡眠の質の影響は年齢や自覚しているかどうかに影響される
最近、睡眠の質と体外受精や顕微授精の治療成績との関係について中国から大規模な研究結果が報告されています(2)。

2018年12月から2019年9月の間にART治療を始めた1,276名の女性患者に、採卵日に質問票を用いて睡眠の状況を調査し、その後の治療周期の成績と関係を調べました。

その結果は以下の通りで、大変、興味深いものでした。

・睡眠時間と培養成績、妊娠率
睡眠時間が7時間未満の女性は、7時間から8時間未満の女性と比べて採卵数が11.5%、成熟卵数が11.9%、それぞれ、少ない。

睡眠時間が9-10時間の女性は7-8時間の女性に比べて臨床妊娠率が35%(odds ratio = 0.65, 95% CI: 0.44, 0.98)低い。

・睡眠時間帯と受精率
入眠時刻と起床時刻の真ん中の時刻にあたる睡眠の中央時刻が午前2時21分よりも早いか、午前3時よりも遅いと、受精率低下と関連した。

・入眠障害と培養成績
週に3回以上の入眠障害がある女性は、入眠障害がない女性に比べて、成熟卵数や正常受精卵数、良好胚数が少ない。

・睡眠の質の低下を自覚しているか
主観的睡眠の質で層別化し解析したところ、睡眠時間と良好胚数や受精率の関連は、主観的な睡眠の質が低い女性の間だけで見られた。

・年齢別解析
睡眠時間と着床率や臨床妊娠率の正の相関関係は、30歳以上の女性においてのみ見られた。

まとめますと、30歳以上、もしくは、睡眠の質の低下を自覚する女性は、7時間から8時間の睡眠時間、11時前の就寝と6時頃の起床、睡眠の質を改善することで、ART治療成績の改善される可能性があるということになります。

◎睡眠の質がなぜ大事なのか
私たちの体は、外から栄養素をはじめ、さまざまな物質を取り込んで、体内で分解し、そして、合成し、体を維持しています。

そして、体内で分解するプロセスは主に目覚めているときに、合成するのは眠っているときに活発になります。

そのため、免疫や骨、筋肉の成長、再生は睡眠の質によって、よくなったり、悪くなったりするわけです。

卵子や精子、受精卵、胚、胎児の成育のベースに睡眠があり、それらの質をよくするために、本気で取り組むべきは、睡眠の質をよくすることになるのかもしれません。

最後に睡眠を支配している体内時計を整えるために効果的な方法を以下に挙げます。

1)早く寝る:どんなに遅くとも23時迄には寝る。
2)早く起きる:起床後14~16時間後にメラトニンの分泌が始まります。
3)起床後太陽光を浴びる:出来れば45分以上散歩して。
4)朝食は必ず食べる。:起床後2時間以内に。
5)朝食はバランスよくしっかり食べる:リセット効果が高まります。
6)以上のことを毎日同じ時間に行う:週末も同じリズムを維持します。


文献)
1)Scientifc Reports 2022; 12: 17477
2)Hum Reprod 2022; 37: 1297

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記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


お知らせ____________________________________________________________

情報提供サイト「精子の質改善ラボ」を公開しました
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このたび、情報サイト「精子の質改善ラボ」を公開しました。

不妊治療は「二人で取り組むべき」であるということは、以前に比べれば、広く知られるところをなったように思います。

ただ、男性の場合、精液検査に問題がなければ、ともすれば、「これで大丈夫」という心持ちになる場合が少なくないように思います。

一方、妊娠や出産には質のよい卵子だけでなく、質のよい精子も深く関与しています。

ところが、精子の質は精液検査だけでは、十分に把握できないことは、あまり、知られていません。

つまり、精液検査の結果が問題ないということは、精子の数や運動性に問題がないということであって、精子の質にも問題がないとは言い切れません。

そのため、不妊治療を受けている、もしくは、受けようとしているカップルの男性は、精子の質にも目を向けて、治療に臨むことがとても大切です。

そこで、「精子の質改善ラボ」を通して、有用な情報を発信していきます。

◎精子の質改善ラボ
https://seishi-kaizen.com/


編集後記____________________________________________________________

睡眠は自分で意識的にコントロール出来ません。また、これをやれば確実に睡眠の質が向上するというものでもなく、生活全体を自分でコントロールすることが大切ですね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.1009
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お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
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不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:https://partner-s.info/
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・自社配信: 1,306部
・まぐまぐ: 2,272部
・合計部数: 3,578部(10月23日現在)
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