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VOL.1007 血圧と体外受精や顕微授精治療成績との関係

2022年10月09日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.1007            2022/10/9
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:血圧と体外受精や顕微授精治療成績との関係
・お知らせ:株式会社パートナーズでは人材を募集しています
・編集後記


最新ニュース解説 Oct.2022 __________________________________________

 血圧と体外受精や顕微授精治療成績との関係
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たとえ正常範囲内の血圧でも高い血圧は体外受精や顕微授精後の新鮮胚移植の治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があることが、中国で実施された研究で明らかになりました(1)。

高血圧は妊娠合併症のリスクを高めたり、妊娠しやすさに影響を及ぼすことは知られていましたが、正常範囲内の血圧の影響は知られていませんでした。

◎どんな研究だったのか
湖南省長沙市の不妊治療専門病院(the Reproductive and Genetic Hospital of CITIC-Xiangya)で初めて体外受精や顕微授精を受ける血圧が正常範囲の女性患者、2,481人を対象に、初診時に血圧を測定し、その後の新鮮胚移植後の治療成績との関係を調査しました。

◎どんな結果だったのか
1487人の女性が出産に至りましたが、出産まで至った女性の収縮期血圧(最高血圧)、拡張期血圧(最低血圧)ともに、出産まで至らなかった女性のそれに比べて低かったことがわかりました。

出産に至った女性と出産に至らなかった女性の収縮期血圧は、それぞれ、114.1±9.48mmHg 、115.4±9.8mmHg、拡張期血圧は、それぞれ、74.5±7.5mmHg、75.3±7.34mmHgと、いずれもわずかな差ではありますが、統計学的に有意な差でした。

また、出産率に影響する因子の影響を排除し、収縮期血圧や拡張期血圧と出産率の関係を解析した結果、負の相関関係が認められ、血圧が高いほど出産率が低くなることがわかりました。

臨床妊娠率は収縮期血圧のみ有意な負の相関関係が認められました。

一方、流産率は、収縮期血圧や拡張期血圧ともに有意な正の相関関係が認められ、血圧が高いほど流産率も高かったことがわかりました。

これらの結果から、たとえ、血圧が正常範囲であっても、高いほど体外受精や顕微授精の新鮮胚移植後の治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があることが示唆されました。

◎高血圧と妊娠しやすさの関係
高血圧のカップルはそうでないカップルに比べて妊娠に至るまで時間がかかるという研究報告が、同じ中国からなされています(2)。

中国政府機関が実施したNFPCP(the National Free Pre-conception Check-up Projects)のデータを用いて第一子の妊娠を希望するカップルの血圧と妊娠しやすさとの関係を調査した大規模研究です。

2,234,350組の第一子の妊娠を希望するカップル(女性の年齢:20-49歳)の血圧を測定し、正常(120以下/80mmHG以下)、前高血圧(120-139/89-89mmHG)、高血圧(140以上/90mmHG以上)の3つのグループに分け、1年間、もしくは、妊娠成立まで追跡し、妊娠までに要した期間から算出した妊娠率を比較しています。

その結果、前高血圧と高血圧だったのは女性で、それぞれ、24.75%、1.26%、男性では、それぞれ、49.75%、3.84%でした。調査期間中に798,610組のカップルが妊娠、その内の56.6%は最初の3周期で、83.04%は6周期で妊娠に至っており、12周期の全体の累積妊娠率は41.95%でした。

妊娠率は高血圧の女性で33.9%、前高血圧の女性で41.61%と、正常な女性の42.23%に比べて有意に低く、高血圧の女性の調整後の累積妊娠率は正常な女性に比べて21%低かったというのです。

また、男性パートナーが前高血圧だと女性の累積妊娠率に有意な差はみられまでんでしたが、高血圧の場合は有意に低く、男性パートナーが高血圧の女性の調整後の累計妊娠率は男性パートナーの血圧が正常な女性に比べて累計妊娠率は11%低かったとのこと。

さらに、カップルの男女がどちらも高血圧の女性の累積妊娠率はそうでないカップルの女性と比べて27%低く、カップルの女性だけが高血圧である女性の累積妊娠率はそうでないカップルの女性と比べて19%、カップルの男性だけが高血圧である女性の累積妊娠率はそうでないカップルの女性と比べて6%(FOR,0.94; 95% CI, 0.92-0.95)低かったと報告しています。

女性だけでなく、カップルが高血圧だと、妊娠に至るまで時間がかかるということです。

◎DASH食
DASH食と呼ばれる、高血圧を予防する、血圧を下げるための食事療法食があります。

基本は、野菜・果物・低脂肪の乳製品を十分摂り、肉類や砂糖を減らしますが、ポイントは、必ず、緑黄色野菜と淡色野菜を毎食取り入れることです。

また、果物はカリウムの多いバナナ、プルーン、リンゴなどをメインにすること。

そして、魚を中心にし、主食は玄米や胚芽米、大豆食品やナッツも毎日食べ、乳製品は低脂肪の牛乳やヨーグルト、チーズを選びます。

反対に、牛肉や豚肉(脂身)は少なく、甘いお菓子や砂糖入り清涼飲料水などは出来るだけ控えます。

高い妊娠率に関連することで有名な地中海食と似ています。

野菜や果物、ナッツ、全粒穀物を多く食べ、肉よりも魚中心であることは共通していますが、地中海食は新鮮な野菜にオリーブオイルをふんだに使い魚を多く食べる、一方、DASH食は緑黄色野菜や海藻類、果物を多く食べるという特徴があります。

この、血圧の上昇を予防するDASH食ですが、男性の良好な精液検査結果に関連するという研究報告がなされています(3)。

被験者は、健康な若者で、スペインのムルシア大学の男子大学生(18〜23歳)で、男性不妊患者ではありません。

アメリカのハーバード公衆衛生大学院とコラボし、環境や生活習慣と男性の生殖機能との関連を調査した「ムルシアヤングメンズ研究」の一環として実施されたものです。

209名の男子大学生に、過去1年間にどんな食品をどれくらいの頻度でどれくらいの量を食べたかを尋ねる質問票に答えてもらい、DASH食の3つの食事パターンにどれだけ近いかをスコア化します。

そして、それぞれのスコアで4つのグループ(Q1、Q2、Q3、Q4)にわけ、最もスコアが高いQ4のグループが最もその食事パターンに近い食べ方をしているということをあらわします。

その結果、精子濃度、総精子数、総運動精子数が有意に関連し、DASH食度が高い男性ほど、つまり、Q1よりもQ2、Q2よりもQ3、Q3よりもQ4の男性のほうが精子数が多かったというのです。

たとえ、高血圧でなくても、適切な血圧管理が大切です。

文献)
1)Human Reproduction, deac201, https://doi.org/10.1093/humrep/deac201
2)Am J Obstet Gynecol. 2019; 221: 470.e1
3)Hum Reprod 2019; 34: 1866


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具体的な事業は、不妊治療専門クリニックに特化したサプリメントメーカーとして、大学との共同研究を通じて、製品を企画、開発し、医療機関に提供しています。
 
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編集後記____________________________________________________________

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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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