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VOL.985 地中海食と妊娠高血圧腎症発症リスク

2022年05月08日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.985            2022/5/8
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:地中海食と妊娠高血圧腎症発症リスク
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 May.2022___________________________________________

 地中海食と妊娠高血圧腎症発症リスク
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地中海食は、妊娠高血圧腎症の発症リスクの低下に有効である可能性が、アメリカのジョンズホプキンス大学の研究で明らかになりました(1)。

妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降に、新たに発症した高血圧、もしくは、既に発症していた高血圧の悪化で、けいれん発作を伴うことがあり、胎盤剥離や早産しやすくなり、新生児に問題が生じるリスクが高まるとされている妊娠合併症です。

日本では妊婦の3%-7%で発症、妊娠前から高血圧や糖尿病のあった女性、高齢や肥満で発症リスクが高まるとされています。

そのため、生活習慣病の発症リスクの低下に有効な地中海食は、妊娠高血圧腎症の予防に有効ではないかと考え、ボストン出生コホート研究のデータを用いた研究が行われたようです。

◎どんな研究だったのか?
まずは、ボストン出生コホートに登録の8507人の女性の産後24-72時間に食物摂取頻度調査票を用いた食事調査を実施し、地中海食スコアを算出しました。

地中海料理の特徴は以下の通りです。

・野菜、果物の摂取量が多い。
・全粒粉を使っている。
・脂質はオリーブオイルが中心。
・ナッツ類、ベリー類、豆類、イモ類の摂取量が多い。
・魚、鶏、乳製品を少量から中量、赤身肉の摂取は少ない。
・卵は週4回以下。
・少量から中量のワインを食事と一緒に飲む。

食習慣がどのくらい地中海食に近いかを数値化したものが「地中海食スコア」で、スコアが大きいほど地中海食に近いことを意味します。

算出方法は、地中海食に関連する11種類の食品の摂取量や摂取頻度を6段階(0-5)で点数化し、それを合計(0-55)します。
https://www.akanbou.com/docs/medscore.pdf

11種類の食品は以下の通りです。
・多く食べるほどスコアが高くなる食品:無精製穀物(全粒穀物、全粒粉パン、全粒粉パスタ、玄米他)、じゃがいも、果物、野菜、豆類、魚、オリーブオイル
・多く食べるほどスコアが低くなる食品:赤身肉や鶏肉、全脂肪乳製品(チーズ、ヨーグルト、牛乳)、アルコール

そして、地中海食スコアで、3つのグループ(高・中・低)に分け、妊娠高血圧腎症の発症(848人)との関係を解析しました。

◎どんな結果だったのか?
地中海食の高スコアが高いほど、すなわち、地中海食に近い食べ方をするほど、妊娠高血圧人症にかかりにくいことがわかりました。

スコアが高いグループは、低いグループに比べ、発症リスクは22%低かったとのこと。

また、被験者の47%が黒人で28%がヒスパニック、残りが白人やその他でしたが、黒人女性だけで解析した結果でも、スコアが高いグループは、低いグループに比べ、発症リスクは26%低く、地中海食の有効性は人種による違いがないこともわかりました。

◎地中海食は妊娠するだけでなく健康な妊娠にも寄与
ギリシャの研究では地中海食はART治療成績にも良好な影響を及ぼすことが示されています(2)。

ハロコピオ大学の研究チームは、アテネの不妊クリニックで最初の体外受精に望む女性患者244名を対象に地中海食スコアとART成績の関係を調査しています。

その結果、地中海食スコアが高いグループは低いグループに比べて妊娠率も出産率も高かったとのこと。

また、同じギリシャのクレタ大学の研究チームは、妊婦に食生活に関するアンケート調査を実施し、出産後の子どもの健康状態を追跡調査した結果、妊娠中に地中海食に近い食事をしていた母親の子どもは、ぜんそくにかかるリスクが80%低く、その他のアレルギーにかかるリスクが45%低かったとのこと(3)。

週に8回以上の野菜、週に3回以上の魚、そして、週に1回以上の豆を食べると、アレルギーの予防効果が顕著だったようです。

このように地中海食は、不妊治療の治療成績だけでなく、妊娠合併症予防、さらには、出生児の健康にも寄与することがわかっています。

文献:
1)J Am Heart Assoc 2022; 11: e022589
2)Hum Reprod 2018; 33: 494.
3)Thorax 2008; 63: 507

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