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VOL.982 魚介類をしっかり食べる

2022年04月17日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.982            2022/4/17
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:魚介類をしっかり食べる
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Apr.2022___________________________________________

 魚介類をしっかり食べる
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ART治療に臨むカップルにとって、魚介類を多く食べるほど、流産のリスクが低下することで、出産まで至る確率が高く、男性の精子の濃度や運動率も良好であることが、アメリカのハーバード大学のEARTH研究で明らかになりました(1)。

オメガ3脂肪酸はカップルの妊娠する働きによい影響を及ぼすことを報告する研究は多数なされていますが、カップルのオメガ3脂肪酸摂取とART成績、特に、流産との関連についてはこれまで知られていませんでした。

◎どんな研究だったのか?
ハーバード大学の研究グループは、関連病院であるマサチューセッツ総合病院でART治療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する環境や栄養因子について調べている現在進行中の前向きコホート研究、EARTH研究に参加のカップルを対象に、男女のオメガ3脂肪酸やオメガ3脂肪酸含有食品の摂取量とART成績や男性の精子パラメーターとの関連を調査しました。

2007年から2020年にEARTH研究に登録のART治療に臨む229組のカップルに治療開始前に食物摂取頻度票を用いて食事調査を実施し、オメガ3脂肪酸(EPA、DHA、α-リノレン酸)やオメガ3脂肪酸含有食品(ナッツ類、魚介類)の摂取量を算出しました。

そして、それぞれの摂取量で4つのグループに分け、その後の410周期の着床率や臨床妊娠率、出産率、流産率、精液検査結果(343名の男性の896サンプル)を比較しました。

◎どんな結果だったのか?
DHA+EPA摂取量と魚介類摂取量が多い女性ほど出産まで至る確率が上昇しました。

女性のDHA+EPA摂取量が最も少ないグループの出産率は36%だったのに対して、最も多いグループでは54%でした。

同じように、魚介類摂取量では、それぞれ、36%、54%でした。

魚介類の種類別に見てみると、貝類の摂取量と出産率との相関が最も強いことがわかりました。

また、女性のトータルのオメガ3脂肪酸摂取量やα-リノレン酸摂取量、トータルのナッツ摂取量、特定のナッツ摂取量については、いずれの治療成績との関連性は見られませんでした。

さらに、男性の、いずれのオメガ3脂肪酸摂取量やオメガ3脂肪酸含有食品摂取量も同様に、いずれの治療成績との関連性も見られませんでした。

その一方で、カップルのオメガ3脂肪酸やナッツ類、魚介類の摂取量と流産率と関連しなかったにもかかわらず、女性のEPA+DHA摂取量が多いほど流産率が低下する傾向が見られ、流産の対象を臨床妊娠だけに限定し、調査したところ、有意な関連がみられました。

また、男性のトータルのオメガ3脂肪酸摂取量は精子数や精子濃度、精子運動率と正の相関を示しましたが、治療成績とは関連しませんでした。

このように、ART女性患者のEPAやDHAや魚介類摂取は流産率を低下させることで治療成績を改善することが示唆され、男性パートナーのオメガ3脂肪酸摂取量は精子パラメータにはよい影響を及ぼすものの、治療成績とは関連しないことがわかりました。

◎オメガ3脂肪酸とは?
オメガ3脂肪酸は多価不飽和脂肪酸に属する脂肪酸で、サケやマグロなどの脂肪の多い魚、かにやカキなどの甲殻類、貝類などに含まれるEPAやDHA、亜麻仁油やシソ油、エゴマ油などの植物油に含まれるα-リノレン酸などがあります。

オメガ6脂肪酸とともに体内でつくることが出来ないことから必須脂肪酸と呼ばれ、食事から摂取しなければなりません。そのため、食事内容次第では不足したり、過剰になったりする栄養素です。

◎魚食は妊娠だけでなく、出生児の発達にも重要
魚をよく食べることが不妊治療の治療成績によい影響を及ぼすという研究報告は、これまでいくつもなされています。

たとえば、魚を週に3回食べる女性は2週間に1回しか食べない女性に比べて、体外受精で出産まで至る確率が40%も高いという研究報告があります(2)。

また、不妊治療を受けていないカップルでも、魚を食べる頻度が周期あたり8回以上食べたカップルは1回以下だったカップルに比べて性交の頻度が22%多く、妊娠率も61%高かったという報告もなされています(3)。

このように、魚介類をたくさん食べることは、妊娠する働きに良好な影響を及ぼすようです。

さらに、魚介類は、それだけでなく、出生児の発育にもよい影響を及ぼすことが知られています。

日本の研究で、エコチル調査と呼ばれている、子どもの健康と環境に関する研究に参加する約82,000人の妊娠中女性の魚の摂取量と出生児の発達の関係を調べています(4)。

妊娠中の女性の魚の摂取量で5つのグループ(少ない・やや少ない・中程度・やや多い・多い)に分け、少ないグループとほかのグループの出生児の発達状況、具体的には、「コミュニケーション」、「粗大運動」、「微細運動」、「問題解決」、「個人・社会」の5つの領域の神経発達の状況を点数化して評価しています。

その結果、「コミュニケーション」、「粗大運動」、「個人・社会」の領域では、妊娠中の魚の摂取量との関連は認められませんでしたが、「微細運動」と「問題解決」の領域では、魚を多く食べたグループで発達が遅めになる子が少ないということがわかりました。

因みに、魚の食べる量は、やや多いグループの平均は1日に43.5g、多いでは69.1gでした。魚の切り身は40-100g程度とすると、毎日、もしくは、2日に1回という頻度になります。

このことから妊娠中の魚の摂取は子どもの神経発達のいくつかの領域の発達の遅れを抑えることに関係していること、また、それはオメガ3脂肪酸が関与ていることが示唆されたというものです。

◎魚食は健康的な食生活の鍵
私たちは、2016年に名古屋と東京で開催された、妊娠を希望するカップルを対象としたイベントにて、食習慣や睡眠習慣、体格についてのアンケート調査を実施し、284名から回答をいただきました。

その結果から、魚をあまり食べない女性は、朝食や大豆を食べる習慣がない人が多いことがわかりました。

反対に、魚を多く食べる女性は、食事全体のバランスがよいことが多く、魚を食べることが健康的な食生活の鍵になっていました。

今回の研究結果も単なる魚の食べる量の多い少ないだけでなく、魚を多く食べる女性は食事全体のバランスもよい人が多いことが寄与している可能性があるのではないかと考えられます。

文献)
1)Am J Obstet Gynecol. 2022 Mar 29; Online ahead of print.
2)Hum Reprod 2018; 33: 156
3)J Clin Endocrinol Metab 2018; 103: 2680.
4)Am J Clin Nutr. 2020; 112: 1295


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編集後記____________________________________________________________

オメガ3脂肪酸の中でも、DHAやEPA、そして、魚介類の中でも貝類がよいようです。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.982
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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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