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VOL.964 妊娠中の食生活と出生児のアレルギー

2021年12月12日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.964         2021/12/12
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:妊娠中の食生活と出生児のアレルギー
・当社製品&サービス
・編集後記


トピックス Dec.2021_________________________________________________

 妊娠中の食生活と出生児のアレルギー
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小児ぜんそくは早ければ、生後数週間で発症することから、母親の胎内の環境、主に栄養環境に発症を引き起こす原因が存在するのではないかと考えられています。

そのため、母親の妊娠中の食生活と子のアレルギーの発症との関連を調べた研究が各国で実施、継続されています。

◎ビタミンDと子のぜんそく発症リスク
ビタミンDは免疫の働きを整える作用があることから胎児の免疫システムが形成される妊娠初期のビタミンD摂取が鍵になるのではないかと考えられています。

アメリカ(1)とデンマーク(2)で妊娠中の女性のビタミンDのサプリメント補充による子のぜんそくの予防効果を調べた二重盲検プラセボ比較対照試験による研究報告がなされています。

いずれの試験でもビタミンDのサプリメントを補充していたグループのほうが子のぜんそくの発症率は低かったものの、統計的に有意な差ではなく、妊娠中にビタミンDのサプリメントを補充することによって子のぜんそく発症リスクが低下するか、明確な結論を導くことはできていません。

ところが、別のアメリカの研究(3)では、ビタミンDをサプリメントで摂取してもぜんそくの発症リスクが変わらなかったのに、同じ量でも食事から摂取すると低下したという報告がなされています。

論文の筆者は、ビタミンDを豊富に含む魚介類やキノコなどに含まれるビタミンD以外の成分との相乗作用によるものではないかと述べています。

サプリメントだけに頼るのではなく、ちゃんと食べることが大切なようです。

◎オメガ3系脂肪酸と子のアレルギー疾患
オメガ3系脂肪酸やオメガ6系脂肪酸は体内で合成されないため食事からとる必要がある「必須脂肪酸」と言われています。必須脂肪酸は生理活性物質になりますが、オメガ6系脂肪酸からつくられる生理活性物質はアレルギー症状促進に働き、反対にオメガ3系脂肪酸からつくられるそれはアレルギー症状を緩和します。

そのため、オメガ6を過剰に摂取し、オメガ3が不足するとアレルギー体質が促進されると考えられています。

そのため、妊娠中のオメガ3脂肪酸の摂取と子のアレルギー発症リスクとの関連を調べた研究もこれまで多く実施されています。

これまでに実施された研究を総括し、評価した研究結果(4)があります。

それによると、妊娠中にオメガ3系脂肪酸を多く摂取するほど子のアレルギー疾患の発症リスクが低下するかもしれないけれども、研究結果にばらつきもみられることから、明確な結論は下せないとしています。

◎食事パターンと子のアレルギー
個々の栄養素や食品の摂取との関連では、なかなか、明確なことは言えない一方で、妊娠中の食事パターンと子のアレルギー発症リスクの関連研究が数は少ないものの行われています。

大阪母子保健研究では妊娠中の野菜や果物、抗酸化物質の摂取と子のぜんそくやアトピーとの関連を調べています(5)。

それによると、妊娠中の緑黄色野菜や柑橘類の摂取はアトピー性皮膚炎の予防効果があるかもしれないとしています。

また、同じ大阪母子保健研究で、妊娠中の食事摂取パターンとぜんそくやアトピーとの関連を調べた研究(6)では、西洋型食事パターンに近いほどぜんそくの発症リスクが低かったとして、それはαリノレン酸(オメガ3系脂肪酸)やビタミンEによるものと考えられると結論づけています。

さらに、スペインの研究(7)では、妊娠中に地中海食に近い食事パターンほど子のぜんそくやアトピー性皮膚炎の発症リスクが低かったと報告しています。

◎偏りのない食事+マルチビタミンミネラルがポイント
子のアレルギー発症の原因は胎児期の子宮内の栄養環境以外にも遺伝的な要因や出生後の環境等、多岐に渡り、予防が可能なものと不可能なものがあり、母親になる女性の食生活だけで子のアレルギーを防ぐことは難しいのは当然のことです。

ただし、妊娠中の食生活は、子の出生前の栄養環境を100%決定するものです。それによって子の体質が決定することが生活習慣病胎児期発症説でも証明されつつあります。

子の健全な成育に求められるのは必要とされる栄養素(5大栄養素)の不足や過剰がないことであることは間違いありません。

そのためには、まずは、偏りなく(バランスよく)食べること、それに加えて、予防的に、ビタミンDや葉酸、鉄、亜鉛などが適正量配合されたマルチビタミンミネラルを補充することがポイントです。

食せ活のパターンは、急に変えることは難しいものですので、妊娠前から意識しておくことが大切です。


文献
1)JAMA. 2016; 315: 362-370
2)JAMA. 2016; 315: 353-361
3)J Allergy Clin Immunol 2016; 137: 1063-1070
4)Am J Clin Nutr 2016; 103: 128-143
5)Allergy. 2010; 65: 758-765
6)Pediatr Allergy Immunol. 2011; 22: 734-741
7)Thrax 2008; 63: 507-513

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編集後記____________________________________________________________

これから寒い季節を迎えますが、男女とも、身体は冷やさないだけでなく、あたため過ぎないように注意することも大切です。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.964
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発 行:株式会社パートナーズ
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サイト:http://partner-s.info/
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