メルマガ

VOL.957 1時間後の2回目の採精によってART成績が改善される可能性

2021年10月24日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.957          2021/10/24
____________________________________________________________________


今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:1時間後の2回目の採精によってART成績が改善される可能性
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Oct.2021___________________________________________

 1時間後の2回目の採精によってART成績が改善される可能性
-----------------------------------------------------------------------
軽度、或いは、高度の乏精子症の男性不妊患者では、最初の採精の1時間後に、再度、採精することで、精液検査結果やICSI治療成績が改善される可能性があることがイタリアの研究で明らかになりました(1)。

禁欲期間を短くすることで、新鮮な精子が増えるからか、精子の質が向上することが知られていますが、1時間という極めて短い時間で、2回目の採精を行うことでICSIの成績まで改善されるとは、驚きました。

◎どんな研究だったのか?
313組のカップルの男性パートナーの禁欲期間が2日から7日間の後、精液検査を実施し、その結果で、2つのグループにわけました。

グループ1は、精液検査が正常、あるいは、軽度の乏精子症の男性で、グループ2は、高度な乏精子症の男性です。

そして、高度な乏精子症だったグループ2の男性には、最初の採精の1時間後に、2回目の採精を行い、精液検査を実施しました。

グループ1の男性は1回目の精子で、グループ2の男性は、1回目と2回目の精液検査のよいほうの精子を用いてICSIを行い、両グループの成績を比較しました。

◎どんな結果だったのか?
まず、グループ2の2回目の1時間後の採精での精液検査結果ですが、驚いたことに、精子濃度も精子運動率も、前進精子運動率も、全てにおいて、1時間後に採精での結果のほうが良好だったのです。

具体的には、平均精子濃度は1回目が2800万だったのが、2回目で3160万、運動率が37.2%が47.7%に、前進運動率が18.8%が25.9%に改善されています。

そして、ICSIの成績は、さらに、驚くべき結果です。

グループ1のカップルの着床率が15%だったのに対してグループ2のそれは20%、臨床妊娠率は20%に対して31%、出産率は18%に対して22%と、いずれも、最初の精液検査で乏精子症だった男性のカップルのほうが、1時間後に2回目の採精を行った精子を使うだけで、ICSIの成績が、正常だった男性のカップルを上回ったというのです。

◎連続採精(射精)のメリットとは?

この結果の原因、すなわち、1時間後の連続採精の影響については、今回の研究では明らかにされていません。

そのため、なぜ、連続射精がよかったのかは、わかりませんが、おそらく、1回目の射精で古い精子、すなわち、つくられてから時間がたった精子がいなくなり、2回目の射精では新しい精子だけになったからではないかと考えられます。

つくられてから時間がたった精子は、活性酸素等の影響で精子DNAが損傷を受け、質が低下してしまうからです。

◎禁欲期間について
今回も研究は後ろ向き研究と言われる研究方法で、あとからデータを集計し、解析したもので、前向き研究に比べて、さまざまなバイアスがかかり、結果の信頼度は低くなるとされています。

ましてや、ICSIの治療成績に関与する因子は精子だけでなく、女性側の因子が複数あり、成績の違いは、必ずしも精子だけではありません。

そのため、今回の結果については、慎重に受け止める必要があります。

つまり、1時間後に2回目の採精を行うべきかどうかは要検討だということです。

主治医の先生に相談されるのがよいと思います。

ただし、禁欲期間を長くし過ぎない、すなわち、溜め過ぎないことは大切であることは間違いありません。

自己判断で推奨されるのは、タイミングの場合でも、人工授精や体外受精、顕微授精の場合でも、2日に1回、場合によっては、毎日の頻度で射精することです。

◎精子の質の影響について
精子の質の目安となるのは、精子DNAの損傷が少ないことです。

精子DNAが損傷していると受精率や胚発育、胚盤胞到達率、妊娠率にマイナスの影響を及ぼすことが、多くの研究で報告されています。

ただし、卵子に精子のDNAの損傷を修復する働きが備わっています。

ところが、卵子の修復能力は女性の年齢とともに、具体的には30代後半から低下してしまいます。

そのため、女性の年齢が高くなるほど、質の高い精子、すなわち、精子DNAの損傷が少ない精子であることが治療成績のカギになってくるわけです。

そこで、男性には、禁欲期間を短くすること、そして、それだけでなく、精子の質を維持するべく、健康的な生活を心がけることが大切になってきます。

なんの苦労もなく、費用もかかりません。

文献)
1)J Clin Med. 2021; 10: 4399

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


当社製品&サービス________________________________________________

・BABY&ME~新しい命のための環境づくり
 https://babyandme.jp/

・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/

・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
 http://www.akanbou.com/bookguide/


編集後記____________________________________________________________

セルフケアで出来ることは男性のほうが多いのかもしれません。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.957
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,530部
・まぐまぐ: 2,343部
・合計部数: 3,873部(10月24日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。