メルマガ

VOL.949 亜鉛や食習慣とART治療成績の関係

2021年08月29日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.949            2021/8/29
____________________________________________________________________


今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:亜鉛や食習慣とART治療成績の関係
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Aug.2021___________________________________________

 亜鉛や食習慣とART治療成績の関係
-----------------------------------------------------------------------
血液中の亜鉛濃度が低いと体外受精や顕微授精の妊娠率が低くなる可能性があり、新鮮な野菜や豆類を増やすことで妊娠率低下予防になり得るかもしれないとの報告が中国の研究(1)でなされました。

必須微量ミネラルは男女の生殖機能になくてはならない栄養素ですが、これまで体内の亜鉛濃度と不妊治療の成績との関係についての研究報告はそれほど多くはなされていませんでした。

◎どんな研究だったのか?
2015年から2017年の間に、北京大学人民病院でART治療を受けた127名と山東省育璜頂医院でART治療を受けた178名の合計305名の女性患者を対象に実施された前向き研究です。

被験者女性の治療開始前日の空腹時に採血し、血清亜鉛濃度を測定しました。また、質問票を用いて、食生活や生活習慣について回答してもらいました。

そして、治療開始時の血中の亜鉛濃度とその後の治療成績の関係を調べました。さらに、どんな食習慣や生活習慣が亜鉛濃度の影響しているのかについても調べました。

◎どんな結果だったのか?
まず、興味深いことに亜鉛濃度は地域差があり、平均血清亜鉛濃度は北京では811.1ng/ml、山東省では778.5ng/mlでした。

そして、初回の治療で、北京では178名中71名が、山東省では178名中98名が妊娠に至り、北京では妊娠に至った女性と至らなかった女性の間で亜鉛濃度に差はありませんでしたが、山東省では妊娠に至った女性に比べて至らなかった女性のほうが亜鉛濃度は低いことがわかりました。

被験者の亜鉛濃度で4つのグループにわけたところ、北京では亜鉛濃度が最も高いグループに比べて最も低いグループの妊娠率は変わりませんでした。

ところが、山東省では最も高いグループに比べて最も低いグループは妊娠率が低かったことがわかりました。

また、山東省では新鮮な野菜や豆類の摂取量が少ない女性は亜鉛濃度が低いこともわかりました。

◎亜鉛濃度と自然妊娠
1060名の妊婦の妊娠初期の血中のセレンや銅、亜鉛濃度と妊娠までにかかった期間との関係を調べた研究(2)があります。

亜鉛濃度が低レベル(51μg/L未満)の女性は中レベル(51〜80μg/L)の女性に比べて妊娠まで長くかかり、血清セレン濃度でも低レベル(0.95μmol/L未満)の女性は高レベル(0.95μmol/L以上)の女性に比べて妊娠まで長くかかったと報告されています。

具体的には、それぞれ、半月に相当する差です。

また、セレン濃度が低レベルの女性は高レベルの女性に比べて妊娠まで1年以上かかる割合が46%高かったとのこと。

妊娠前のセレンや亜鉛濃度は妊娠するための力に影響するようです。

◎亜鉛と銅
26名の原因不明不妊症の女性と20名の健康な女性の血中の銅と亜鉛濃度を比較したところ、不妊症女性の亜鉛濃度はそうでない女性に比べて低く、反対に銅濃度は有意に高いことがわかりました。また、銅/亜鉛濃度は不妊症群で有意に高かったとのこと(3)。

このことから銅/亜鉛比の上昇は原因不明不妊のリスク因子となり得るとの報告がなされています。

亜鉛と銅濃度との関係について、リプロダクションクリニックの松林先生のグループの論文(4)があります。

ART患者408名の血清中の銅と亜鉛濃度と妊娠率(着床率)の関連について後ろ向きに解析し、40歳未満の凍結融解胚(3BB以上)移植による妊娠群(96名)と非妊娠群(173名)を比較検討しています(4)。

その結果、非妊娠群の銅濃度は妊娠群に比べて有意に高いことがわかりました。

このことから、血中銅濃度高値は妊娠率(着床率)低下に関連し、銅と拮抗作用にある亜鉛を補充し、銅濃度を低下させることで妊娠率の改善に寄与する可能性があることはわかりました。

◎食習慣と亜鉛濃度、ART成績
今回の中国の研究では同じ中国北部の都市でも北京と山東省の煙台市では食習慣が異なり、それに伴い、亜鉛の血中濃度にも差がみられました。

そして、亜鉛の血中濃度が体外受精や顕微授精の治療成績に及ぼしている可能性があることがわかりました。

亜鉛濃度の低下そのものが影響しているのか、それとも銅濃度の上昇がマイナスの影響を及ぼしているのかはわかりませんが、バランスのよい食生活を心がけ、亜鉛が不足しないようにすることは体外受精や顕微授精の妊娠率低下を予防するために大切なことかもしれません。


文献)
1)Sci Total Environ 2021; 792: 148405
2)Nutrients 2019; 11: 1609.
3)AJPS 2005; 2: 72.
4)BMC Res Notes 2017; 10: 387.

--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


当社製品&サービス________________________________________________

・BABY&ME~新しい命のための環境づくり
 https://babyandme.jp/

・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/

・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
 http://www.akanbou.com/bookguide/


編集後記____________________________________________________________

亜鉛と言えば、男性のミネラルとイメージをもたれているかもしれませんが、女性にとっても重要なミネラルです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.949
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします。
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点でお届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,542部
・まぐまぐ: 2,353部
・合計部数: 3,895部(8月29日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。