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VOL.947 短い睡眠時間や夜更かしは胚移植キャンセルのリスクを高める

2021年08月15日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.947            2021/8/15
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:短い睡眠時間や夜更かしは胚移植キャンセルのリスクを高める
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Aug.2021___________________________________________

 短い睡眠時間や夜更かしは胚移植キャンセルのリスクを高める
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体外受精を受けている女性にとって、7時間未満の短い睡眠時間や夜更かしは胚移植のキャンセルのリスクを高めることが、アメリカの研究(1)で明らかになりました。

睡眠と妊娠するための力の関係についてのこれまでの研究結果を統合して、解析した最新の研究では、睡眠不足や夜更かし、シフト勤務は卵巣機能や精子の質だけでなく、自然妊娠やARTによる妊娠率の低下にまで関連するとしています(2)。

今回の研究は、リストバンド式の加速度センサーを装着することで睡眠を客観的な方法で測定し、胚移植のキャンセルへの影響を調べ、睡眠の長さや時間帯が妊娠するための力に密接に関係することを見出しました。

◎どんな研究だったのか?
ART治療に臨む女性患者48名を対象に睡眠時間や睡眠時間帯は治療成績に及ぼす影響を調べるべく実施された前向き研究。

治療開始の1-2週間前から手首に時計型加速度センサーを装着してもらい、睡眠や覚醒時刻を記録してもらいました。

睡眠時間や睡眠中央時刻(眠りに落ちた時刻と朝起きた時刻の中間時刻)、就寝時刻と胚移植キャンセルとの関係を年齢やAMHなどの影響を統計的に排除し、解析しました。

◎どんな結果だったのか?
48名中、10名が移植に適した胚を得られず、胚移植に進むことが出来ず、治療をキャンセルせざるを得ませんでした。

胚移植をキャンセルした女性患者は、胚移植に進んだ女性患者に比べて睡眠時間が短く、夜更かしで、睡眠効率(実際の睡眠時間÷ベッドにいた時間×100)が低く、睡眠時間帯が遅いことがわかりました。

胚移植に進んだ女性のほとんどの睡眠時間は7-9時間で、睡眠時間が7時間未満だった女性は7時間以上だった女性に比べて胚移植キャンセルのリスクが有意に高いことがわかりました。

また、睡眠時間が長いほど胚移植キャンセルのリスクが低く、20分長くなると12%低下しました。

さらに、睡眠中央時刻や就寝時刻が遅いほど胚移植キャンセルのリスクが高く、睡眠中央時刻が20分遅くなると胚移植キャンセル率が24%、就寝時刻が20分遅くなると33%、それぞれ高くなりました。

胚移植に進んだ女性の平均の就寝時刻は23時11分、キャンセルした女性は23時23分、平均睡眠中央時刻は午前3時29分だったのに対して午前3時43分でした。

◎睡眠時間や睡眠の質と妊娠しやすさ
北米の妊娠希望の女性を対象にした研究(3)で、妊活を開始して半年未満の21~45歳の女性に睡眠についてアンケートに回答してもらい、妊娠までにかかった期間から算出した妊娠率との関係を調べています。

対象となったのは6,873名の女性の26,339周期で、3,933の妊娠例がありましたが、平均睡眠時間と妊娠率の関係は、過去1ヶ月間の平均睡眠時間が8時間の女性の妊娠率を100とした場合、6時間未満で89、6時間で95、7時間で99、9時間以上で98と、睡眠時間が6時間未満になると妊娠率が低下しています。

また、睡眠の質と妊娠率の関係、過去2週間の睡眠障害がなかった女性の妊娠率を100とした場合、睡眠障害の頻度が半分以上で87、睡眠障害の頻度が半分以下で93と、睡眠障害があると妊娠率が低下し、その頻度が半分以上になると有意に低下しています。

どれくらい低下したかと言いますと、12ヶ月累積妊娠率で睡眠障害のない女性で76%だったのに対して、睡眠障害が半分以上ある女性では64%まで低下しています。

このように6時間未満の睡眠時間や睡眠の質の低下は、妊娠するまでに長くかかっています。

◎日本の睡眠時間
厚生労働省の国民健康・栄養調査の最新版をみてみると、年代別の1日の平均睡眠時間が6時間未満は30代女性で37.7% 、40代女性では52.4%と半分を超えていました。

睡眠の質では、睡眠で休養が十分にとれていない者の割合は30代で27.6% 、40代で30.9%でした。

このように睡眠の時間も質も、妊娠にマイナスの影響を及ぼしているおそれのある女性が多く存在することがわかります。

◎睡眠時間や睡眠の質を大切にしたい
睡眠不足は、生殖ホルモンレベルや交感神経過活動、酸化ストレスの増加などを通じて生殖能力に影響を及ぼすことがこれまでの研究で明らかになっています。

今回の研究で睡眠が体外受精の成績と密接に関連していることが確かめられました。

睡眠時間だけでなく、時間帯も影響するようです。

睡眠を大切にすることは生殖補助医療の効果を確実なものにするためのベースになることから睡眠を整えて治療に臨むことが大切です。


文献)
1)J Assist Reprod Genet. 2021 Aug 10. doi: 10.1007/s10815-021-02260-8.
2)Fertil Steril. 2021; 115: 715
3)Fertil Steril. 2019; 111: 1201

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編集後記____________________________________________________________

睡眠はあらゆる健康のベースになるものですね。

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