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VOL.929 妊娠力低下スパイラルを断つ

2021年04月11日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.929            2021/4/11
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス: 妊娠力低下スパイラル
・当社製品&サービス
・編集後記


トピックス Apr.2021_________________________________________________

  妊娠力低下スパイラル
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新型コロナ感染予防のための外出自粛により、1日あたりの歩数が減少し、体重が増加、生活リズムの乱れ、テレワークによる肩こり、腰痛、目の疲れ、座位時間が長くなり、血流の悪化や男性の陰嚢温度上昇を招いています。

これらは、全て、妊娠率の低下を招くリスクをはらむことが、これまでの多くの研究で明らかになっています。

言ってみれば、外出自粛による「妊娠力低下スパイラル」です。

一方、アウトドアが最も気持ちのよい季節になり、運動にはうってつけです。

そこで、意識的な運動で「妊娠力低下スパイラル」から「妊娠力向上スパイラル」へ、妊娠しにくくなる悪循環を断ち、妊娠しやすくなる良循環へ転換させましょう!

まずは、実際に運動と妊娠力の関係についての研究報告をみていきましょう。

◎運動と妊娠する力の関連研究
日常生活で身体をよく動かすことは妊娠に有利に働きます。

ハーバード大学の大規模研究「看護師健康調査2」ではウォーキングやジョギング、サイクリング、エアロビクスなどに費やす時間と卵巣の働きとの関係を調べています[1]。

それによると、全く運動しない女性に比べて、運動する女性のほうが排卵障害のリスクが低く、週の運動時間が1時間増える毎に排卵障害のリスクは5%低くなり、週の運動時間が5時間で排卵障害のリスクが最も低くなったとのことです。

また、デンマークの研究では妊娠希望の女性の日常の運動時間と妊娠するまでにかかった期間の関係を調べています[2]。この研究では、運動強度の影響を調べるために激しい運動と穏やかな運動に分けています。

それによると、週に5時間以上激しい運動をする女性は全く運動しない女性に比べて妊娠率が34%低く、週に5時間以上穏やかな運動をする女性は1時間以下の女性に比べて妊娠率が18%高かったとのこと。

ところが、BMI(体格指数)が25以上の女性では運動強度に関わらず、運動する女性はしない女性に比べて妊娠率が高かったというのです。

普通の体格の女性には激しい運動は妊娠にマイナスに、穏やかな運動はプラスに影響するようですが、太っている女性にとっては激しくても、穏やかでもとにかく、運動することが妊娠にプラスになるというわけです。

さらに、運動は体外受精の治療成績にもよい影響を及ぼします。

アメリカの研究で、体外受精や顕微授精に臨む121名の女性に過去1年間の運動についてのアンケートを行い、4つの領域(家事・介護の仕事・日常の身体活動・スポーツ)の活動レベルを5段階で答えてもらい、トータルの活動レベルを4~20のスコアにし、その後の治療成績との関連を調べています[3]。

それによると、治療前1年間の身体活動が活発な女性ほど妊娠率が高く、特に、散歩や自転車、移動など日常生活で身体をよく動かしているほど治療成績が良かったといいます。

◎人間は動くことで身体が正常に働くように設計されている
運動と生殖機能の関連研究で調べているのは、運動と言っても、「スポーツやトレーニング」ではなく、「日常生活で身体を動かすこと」です。

要するに、普段の生活で動き回っていることが妊娠に有利だというわけです。

つまり、あらためて、ジムやスポーツクラブに通ったり、運動をはじめなければならないわけではなく、普段の生活の延長で身体を動かすだけでよいのです。

そして、身体を動かすことが、「女性の卵巣機能」や「妊娠までの期間」、「体外受精の治療成績」にこれだけ明確に関連するということは、生殖活動という、人間にとって当たり前に備わっている身体の働きは、普段の生活で、そこそこ、動いているということを前提としていると言えるのではないでしょうか。

つまり、人間という生き物は動くことで身体が正常に働くように設計されているということです。

◎この10年間の平均歩数の減少が物語るもの
ところが、日本人は、新型コロナ感染拡大で自粛生活を強いられる前から「日常生活の活動」量が、どんどん、減っている、すなわち、日常生活で身体を動かさなくなっています。

厚労省の国民健康・栄養調査によると、この10年で1日の平均歩数は約400歩も少なくなっています。

つまり、身体を動かさなくなったということを、「江戸時代や戦前」と比べて言っているのではなく、「この10年間」の出来事として言っているのです。

普段は、なかなか、気づかないでいますが、よくよく考えてみるとこの10年間で、私たちの生活は、相当、様変わりしています。

さまざまなサービスや製品が普及し、自ら身体を動かさなくても済ますことができるようになっていることを思うと、厚労省のデータにもうなずけます。

人間に備わった生殖機能を正常に維持するために必要な身体活動量が減っていることを考えると、特別な原因が見当たらないのにもかかわらず、妊娠しづらいことを自覚されているのであれば「動いていないこと」が根本的なところで影響しているのかもしれません。

◎意識的に動く
この10年で1日あたりの歩数が減ったのは、歩きたくなくなったからではなく、歩く必要がなくなったからでしょう。

それだへ、動く必要のない社会へ、どんどん、進んでいます。

つまり、いまや、普通に生活していると動かないのがデフォルト(標準仕様)なのです。

であれば、妊娠する力の低下を予防するためには「意識して」動く必要があります。

要するに、自分の生活の中で、どこに、どんな動きを増やしていくのが最も現実的なのか、計画して、実行するということです。

ここは、それぞれの生活パターンや事情が異なるので、一概なことは言えません。

ただし、どんな運動がいいかと言えば、やはり、「歩く」ということになると思います。手軽にできますし、コストもかかりません。

そして、生活に取り入れるコツは、普段の生活の「歩き」を延長することです。

因みに、当社のスタッフがチャレンジしたところ、電車やバスの一駅(停留所)を歩いたり、エレベータやエスカレータを使っていたのを階段を使ったりしただけで、1日の総歩数が30から50%も増えました。

また、「いつ」歩くのかは、理想的には早起きして起床後すぐの早朝です。
太陽光を浴びることで体内時計が確実にリセットされ、ビタミンDもつくられ、朝一番で体温を一気に上昇させることができるからです。

さらに、少々、速歩きを意識することで負荷がかかり、血行改善や血糖値の安定、体細胞のミトコンドリアが活性されます。

できれば歩数計で測定し、記録すると励みになると思います。

◎気持ちよく動く
意識して動かなくてはならないからといって、義務感で頑張ってしまうと逆効果になりかねませんので、気をつけたいものです。

ただ、継続するためには、多少の頑張りも必要かもしれません。

コツは、「気持ちよく」なるようにやることです。

運動することで、身体への効果もさることながら、頭がすっきりしたり、細かいことにいい意味で気にならなくなったり、ストレスに強くなるといった、メンタルへの効果も絶大です。

続けていくと、はっきりと自覚できるようになると思います。

意識して、気持ちよく動けるようになれればしめたものだと思います。


文献:
[1]Epidemiology 2001; 13: 184-190.
[2]Fertil Steril 2012; 97: 1136-1142.
[3]Fertil Steril 20124; 102 : 1047-1054.

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編集後記____________________________________________________________

気持ちよくアウトドアで過ごすとビタミンDをつくる働きも高まりますね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]     VOL.929
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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