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VOL.905 葉酸開始時期と流産リスクの関係

2020年10月25日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.905                         2020/10/25
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:葉酸開始時期と流産リスクの関係
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Oct.2020__________________________________________

 葉酸開始時期と流産リスクの関係
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妊娠前からの葉酸サプリメントの補充は妊娠後の初期流産のリスク低減に関連し、葉酸補充は妊娠の3ヶ月以上前の早い時期から開始するほうが有利であることが中国で行われた65,000人以上の女性を対象とした研究(1)で明らかになりました。

◎どんな研究だったのか?
中国ではNational Free Preconception Health Examination Project(MFPHEP)という、妊娠希望のカップルに無料で検査やカウンセリングサービスを提供するプロジェクトが全国規模で行われています。

2010年から2016年までプロジェクトに参加し、妊娠に至った女性、65,497名の65,643の妊娠例を対象に葉酸サプリメント補充と流産リスクの関係が調査されました。

まず、すべての妊娠例の内、葉酸のサプリメントを補充していたケースは全体の77%の50,404例で、23%の15,239例は補充していませんでした。

また、葉酸を補充していた妊娠例の内、妊娠の3ヶ月以上前から開始していたのは42%の21,184例、妊娠の1-2ヶ月前から開始していたのは23%の11,828例、そして、妊娠判明後から開始したの35%の17,392例でした。

そして、初期流産で妊娠が終了したのは5.35%にあたる3,513例でした。

葉酸補充と流産リスクの関係は以下の通りでした。
・葉酸を補充していた場合、補充していなかった場合に比べて、初期流産のリスクが48%低かった。
・妊娠の3ヶ月以上前から葉酸補充を開始していた場合、妊娠の1-2ヶ月前や妊娠判明後に開始した場合に比べて、初期流産のリスクが10%低かった。

このように妊娠を予定する女性の葉酸補充は初期流産リスク低下に関連し、補充開始は妊娠の3ヶ月以上前が望ましいことが示唆されました。

◎葉酸の働きとは?
葉酸はビタミンB群に属する水溶性ビタミンの一種で、新しい細胞をつくる時に必須の栄養素です。

具体的にはDNAの合成や修復に関与することから細胞の分裂、増殖時に葉酸が不足するとDNAが正常にコピーできなくなってしまうおそれが出てきます。

このことから葉酸の不足は出生児の先天異常(二分脊椎症や無脳症などの神経管閉鎖障害、口唇裂口蓋裂など)の発症リスクが高くなってしまいます。

そのため厚労省は妊娠を予定する女性は妊娠前から胎児の脳神経系が形成される妊娠3ヶ月まで葉酸のサプリメントを補充することを推奨しています。

そもそも、細胞の正常な分裂増殖に必須の役割を担っているわけですから、受精後の胚や妊娠後の胎児の正常な発育に非常に重要です。

ただし、先天異常のリスク低減以外は、現時点ではエビデンスが確立されていません。

そこで、今回の研究が実際されたわけです。

◎葉酸が不足しやすいのには理由があります
葉酸はその名前の通り、葉っぱものの野菜などに含まれるのですが、葉酸をうまく利用できない遺伝的な傾向のある人が日本人の15%くらいいることがわかっています。

そのため、妊娠時に母体側も、胎児側も細胞の分裂増殖が活発になり、そのことで葉酸の必要量が妊娠していない時に比べて跳ね上がるのです。

それに応えるために不足予防的に葉酸のサプリメントを補充しておきましょうということです

◎補給開始時期が重要であるのにも理由があります
今回の研究では葉酸補給を妊娠の3ヶ月以上前から開始した場合、初期流産のリスクが最も低くなりました。

これは、葉酸は前述の通り水溶性ビタミンであることから、血中濃度が一定レベル以上になるのに時間がかかるからだと考えられます。

たてえば、これまでの研究で神経管閉鎖障害の発症リスク低減に有効とされる葉酸濃度に達するまで葉酸サプリメントを1日に400μgでは6週間以上かかるとの報告がなされています(2)。

一方、1日の葉酸補充量を倍の800μgにすると4週間ほどで有効とされる濃度に達するとのこと(3)。

◎妊娠希望女性はすぐに葉酸補給を開始すべき
葉酸は妊娠、出産に最重要の栄養素の1つです。

なぜなら、受精後の胚発育、妊娠後の胎児の成育、妊娠継続に必須の役割を担っているからです。

それにもかかわらず、葉酸は宿命的に不足しやすく、必要な血中濃度に達するまでに時間がかかります。

そのため、妊娠希望の女性で未だ葉酸を補充していない女性はすぐに開始すべきで、出来れば補充開始の2ヶ月は1日に800μgが望ましいと言えます。

文献
1)Nutrients 2020; 12: 2264.
2)Int J Vitam Nutr 2009; 79: 61
3)Am J Clin Nutr 2006; 84: 156.
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・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
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・翻訳書:妊娠しやすい食生活
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・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
 http://www.akanbou.com/bookguide/


編集後記____________________________________________________________

葉酸やビタミンD、亜鉛、鉄は妊娠前から不足しないように注意したい栄養素であることが、最近の研究で次第に明らかになってきました。

大切なことは、これらの栄養素の働きはこれら以外の栄養素との相互作用によって行われるということです。

つまり、葉酸やビタミンD、亜鉛、鉄のサプリメントを連想されるかもしれませんが、最重要なのは食事のバランス度と質を高めることです。

その上で必要な時期に必要な量をサプリメントで補充することが最も有効な方法になります。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]             VOL.905
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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