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VOL.901 卵巣内時計の乱れが卵巣機能低下を加速する

2020年09月27日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.901 2020/9/27
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今週の内容__________________________________________________________


・最新ニュース解説:卵巣内時計の乱れが卵巣機能低下を加速する
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Sep.2020_________________________________________

 卵巣内時計の乱れが卵巣機能低下を加速する
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40歳以上の女性では加齢による卵巣のサーカディアンリズム(体内時計)の乱れが卵巣機能低下を促進するという研究結果が上海交通大学の研究グループから発表されました(1)。

◎どんな研究だったのか?
年齢の卵巣内時計への影響を調べることを目的として、ヒトの顆粒膜細胞(卵子の周期の細胞)、さらには、マウスの卵巣や肝臓を使った研究が実施されました。

2018年9月から2019年1月まで大学病院で体外受精を受けている女性の採卵時に採取した卵子から取り除かれた顆粒膜細胞を集め、患者さんの年齢が40歳以上(18名)と39歳以下(34名)に分けました。

そして、それらの顆粒細胞内の時計遺伝子の発現量を測定し、比較しました。

また、高齢マウス(8ヶ月)と若齢マウス(12週)の卵巣と肝臓を取り出し、それぞれの時計遺伝子の発現を測定し、比較しました。

◎どんな結果だったのか?
顆粒膜細胞のリズムをつくりだしている時計遺伝子には6種類(Bmal-1、Clock、Per1、Per2、Rev-erbα、Cry1)ありますが、全ての時計遺伝子の発現が、39歳以下の女性に比べて40歳の女性では低下していることがわかりました。

また、マウスの卵巣内の時計遺伝子も同様に、若齢マウスに比べれ高齢マウスで発言量が低下していました。

ところが、マウスの肝臓内の時計遺伝子の発言量は、高齢マウスと若齢マウスで違いがありませんでした。

◎どのように解釈すべきか?
そもそも、身体のリズムをつくりだす体内時計と老化は密接に関係していることがこれまでの研究でわかっています。

今回の研究は、加齢による卵巣機能の低下は、さまざまな要因が関係していますが、卵巣内の体内時計の働きの低下も、一因であることが示唆されました。

また、大変興味深いのは、マウスの試験で、卵巣の時計遺伝子の発現が年齢によって低下していたのに対して、肝臓では年齢による違いがみられなかったことです。

つまり、卵巣は肝臓に比べて早く老化するということになります。

◎生体リズムとは?
私たち人間のさまざまな活動にはそれぞれのリズムがあり、お腹が空けば食べ、朝になると目が覚め、夜になると眠くなります。もっと詳しくみてみると、体温や血圧、ホルモンの分泌などにも、ぞれぞれに一定のリズムがあります。

たとえば、生殖に関連するところでは、女性には26日から34日の月経サイクルがあり、夜中の0時から2時にプロゲステロンが、10-14時に卵胞刺激ホルモンが、朝の4-8時に男性ホルモンの分泌量が多くなります。

要するに、人間の活動にはすべて適切な時(タイミング)があり、それらは、全て、私たちが意識するしないにかかわりません。

そして、それらの「時」は、生体リズムが奏でているのです。

いくつもの周期のリズムが備わっていますが、代表的なのは約24時間周期、すなわち、おおよそ1日周期なので、サーカディアン(慨日)リズムと呼ばれています。

そして、サーカディアンリズムをつくりだし、コントロールし、調整しているのが、前述の体内時計と呼ばれる、時計遺伝子です。

◎親時計と子時計
生体リズムをつくりだす体内時計の本体は、脳の視床下部の視交叉上核というところにある神経細胞の塊で、時計遺伝子と呼ばれている遺伝子がそれぞれのリズムをつくりだしています。これが親(中枢)時計です。

また、この親時計にある時計遺伝子と同じものが身体のほとんどの細胞にも存在することがわかっています。それらを子(末梢)時計と呼んでいます。

女性の生殖器官にもこの抹消の時計遺伝子が備わっていて、親時計と密接にやりとりをしながら、身体全体のサーカディアンリズムをつくりだしています。

◎体内時計のリセット
ところが、体内時計のつくりだすサーカディアンリズムは、なぜか、24時間ではなく、24.5時間で、自然のサイクル(地球の自転リズム)よりも30分ずれているということになり、そのままにしておくと、24日で昼と夜が逆転してしまいます。

そのため、毎日、リセットして、体内時計をあわせてやる必要があります。

リセットの役割を担っているものはいくるかあるようですが、最も強力なのは、太陽の光を受けることです。

朝、起きて太陽の光を浴びることで、カチッと体内時計がリセットされます。

体内時計は光の影響を強く受けるので、深夜に明るい光を浴びたり、朝に太陽の光を浴びなければ、生体リズムは乱れてしまいます。当然、睡眠の質や免疫力が低下したり、ホルモンのバランスが崩れてしまいます。生活のリズムが乱れると、体調を崩したり、病気を招いてしまう根本原因です。

そして、年をとればとるほど、体内時計の修復力が徐々に低下します。

老化の根本原因の一つで、今回の研究はことことを教えてくれました。

◎30代後半から体内時計のメンテナンスが重要
卵巣機能は他の臓器に比べて、早く、具体的には30代後半から老化がはじまります。そして、卵巣の老化は体内時計の機能の低下が密接に関わっていることがわかりました。

そのため、30代後半からは、積極的に体内時計を手入れし、ケアすることが卵巣機能の低下を遅らせることになるはずです。

反対にケアを怠り、放置しておくと卵巣機能の低下が加速してしまいます。

具体的な方法です。

1)早く寝る:どんなに遅くとも23時迄には寝る。
2)早く起きる:起床後14-16時間後にメラトニンの分泌が始まります。
3)起床後太陽光を浴びる:出来れば45分以上散歩して。
4)朝食は必ず食べる。:起床後2時間以内に。
5)朝食にはバランスよく、タンパク質も必ず食べる:リセット効果が高まります。
6)以上のことを毎日同じ時間に行う:週末も同じリズムを維持します。
7)夜はスマホやタブレット、PCを見ない。

特に、早寝早起き、朝食、スマホが鍵になりそうです。


文献)
1)J Assist Reprod Genet. 2020 Sep 14. Online ahead of print.
2)Cell Metabolism 2011; 13: 639
3)Am J Obstet Gynecol 2011; 205: 476

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編集後記____________________________________________________________

加齢で生体リズムが乱れやすくなり、それが卵巣機能低下を促進するということが確かめられました。

体内時計のメンテナンスは卵巣機能だけでなく、心と身体の老化も遅らせることになります。

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