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VOL.892 食事パターンと卵巣予備能の関係

2020年07月26日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.892 2020/7/26
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:食事パターンと卵巣予備能の関係
・アンケートへのご協力のお願い
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Jul.2020__________________________________________

 食事パターンと卵巣予備能の関係
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これまでの研究で良好なART治療成績に関連した食事パターンは卵巣予備能には関連しないことがハーバード大学のEARTH研究で明らかになりました(1)。

卵巣予備能とは、女性の卵巣内にどれぐらいの数の卵が残っているかの目安のことで、その指標としては、アンチミューラリアンホルモン(AMH)や前胞状卵胞数(AFC)などがありますが、今回の研究ではAFCを指標としています。

EART研究とは、ハーバード大学が関連病院であるマサチューセッツ総合病院(MGH)でART治療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べる現在進行中の前向きコホート研究のことです。

今回の研究では、MGHで不妊症の検査や治療に臨む363名の女性に、食物摂取頻度調査票を使って過去1年間の食品の摂取頻度や摂取量を調べ、その結果を用いて3つの食事パターン(地中海食やファティリティダイエット、プロファティリティダイエット)のスコア(それぞれの食事パターンにどれだけ近い食べ方をしているかを数値化したもの)を算出し、スコアで4つのグループに分け、月経3日目に超音波検査でカウントしたAFCとの関連を解析しました。

因みにそれぞれの食事パターンの特徴は以下の通りです。

・地中海食:地中海沿岸地域の伝統的な食事パターンで、さまざまな生活習慣の発症リスク低減に関連するという膨大な研究報告がなされている。野菜、じゃがいも、豆類、果物、全粒穀物、魚、オリーブオイルを多く、高脂肪乳製品、赤肉、鶏肉、アルコールが少ない食べ方。

・ファティリティダイエット:米国大規模前向きコホート研究「看護師健康調査」から排卵障害不妊症の発症リスクが低かった食べ方。一価不飽和脂肪酸/トランス脂肪酸比、植物性タンパク質のエネルギー比、高脂肪乳製品、鉄やマルチビタミンサプリメントを多く、動物性タンパク質、グリセミック負荷、低脂肪乳製品が少ない食べ方。

・"pro-fertility" diet:EART研究で良好なART成績に関連した食品を組み合わせた食べ方。葉酸、ビタミンB12、ビタミンDのサプリメント、残留農薬レベルが低い野菜や果物、全粒穀物、魚介類、乳製品、大豆食品を多く、残留農薬レベルが高い野菜や果物が少ない食べ方。

その結果は、いずれの食事パターンもAFCに関連しなかったというものでした。

今回の研究では、体外受精や顕微授精の治療成績によい影響を及ぼすことが、これまでの研究で確かめられていた「食べ方」をしても、AFCには影響を及ぼさないことがわかりました。

卵巣予備能とは、卵巣内に残っている卵子の数的な目安です。

その指標としてはAFCの他にAMHがありますが、もちろん、それらは卵巣内の卵子の数をダイレクトにあらわしているわけではなく、あくまで、間接的な目安にしか過ぎません。

AFCは前胞状卵胞の数であって、原始卵胞から既に発育を開始している初期卵胞で、AMHはその前胞状卵胞から分泌されるホルモンのことですので、何らかの理由があって、原始卵胞の数に割りには発育卵胞の数が少ないという状況であれば、その理由を取り除くことで、AFCやAMHが増加することがあるかもしれません。

その理由が栄養素の過不足が背景にあるようなケースでは食事パターンが卵巣予備能に関連することが起こり得ると考えられますが、全体から見れば、極めて稀なケースになるはずです。

そのため、卵巣内に存在する原始卵胞は新たにつくられることはありませんので、卵子の数を増えることはあり得ませんし、増やすことも不可能です。

いずれにしても、卵巣予備能の指標であるAFCやAMHは卵巣内の卵子の数の目安で、妊娠を左右するのは卵子の「数」ではなく「質」です。

コントロールできないAFCやAMHを増やそうと考えることが、「ないものねだり」であり、そもそも、妊娠しやすさには、直接、関係しないものなわけです。

もちろん、卵子の質をよくすることも、若返ろうとするもので、同じように「ないものねだり」で、コントロールできないものです。

私たちが取り組むべきは卵胞や胚の発育過程で悪くなってしまわないような、卵巣や子宮内の環境を整えることしかありません。

そういう観点から地中海食や"pro-fertility" dietは参考になる食べ方です。

従来の食と生殖機能との関連研究では、食品や栄養素単独との関連を調べる研究が多かったのですが、実際、食事は複数の食品を組み合わせて食べることから、最近では、食事パターンとの関連を調査する研究が増えています。

それぞれの文化や人種によって、具体的な食べ方には違いがありますが、結局は新鮮な食材を自分で調理し、なんでも偏りなく食べるということに行き着きます。

これが現時点での科学的な方法で確かめられた食べ方です。

◎関連ページ
・地中海食と体外受精の妊娠率、出産率
https://www.akanbou.com/news/news.2018013001.html
・地中海食と精子の質
https://www.akanbou.com/news/news.2019012301.html
・食事パターンとART治療成績
https://www.akanbou.com/news/news.2019021701.html



文献)
1)Fertil Steril 2020 Article in Press https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2020.04.030

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アンケートへのご協力のお願い______________________________________

 withコロナ時代の妊活中の不安に関するアンケート
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NPO法人Fineより、「withコロナ時代の妊活中の不安に関するアンケート」へのご協力のお願いです。

コロナ禍における妊活中の不安な気持ちを聞かせてください。

◎withコロナアンケートはこちら↓
https://questant.jp/q/0SH3V9MY

私たちの生活にさまざまな影響を与えた「新型コロナウィルス感染症」。妊活や不妊治療についても例外ではありませんでした。緊急事態宣言や日本生殖医学会の声明(治療の延期の推奨など)がでて、妊活や不妊治療に影響が出た方も多いのではないでしょうか。

コロナの影響で通院に気を使うという悩みをよく耳にしました。コロナ感染が不妊治療や生まれてくる子供に影響があるのではと不安になる方もいました。中には「不妊治療は不要不急では」といわれて深く傷ついたという方もいました。治療をあきらめることを考え出したという話も耳にしました。

緊急事態宣言は解除になりましたが、感染拡大の第2波、第3波も心配されています。この状況の中、妊活に関して、どんな思いでいましたか?どんなサポートが必要だと感じたでしょうか。

Fineではこのアンケートを通じて、妊活中の不安な気持ちやクリニックの対応を把握し、どのようなサポートが必要かを探っていきます。

そして、患者一人ひとりが納得のいく治療を受けられるよう、皆さんの声を広く社会へ届け、治療環境向上へつなげていきます。

【アンケート対象者】
不妊治療・不育症治療を受けている(これから受ける)すべての方

【期間】
7月31日(金)まで

アンケート所要時間は10分程度です。

◎withコロナアンケートはこちら↓
https://questant.jp/q/0SH3V9MY

ご協力をよろしくお願いします。


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・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
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・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/

・お勧めの本:妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
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編集後記____________________________________________________________

コロナ禍だけでなく、天候不順による体調不良にも、ベーシックな健康が物を言いそうです。

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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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