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VOL.884 身体活動量は臨床流産ではなく化学流産に関連する

2020年05月31日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.884 2020/5/31
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:身体活動量は臨床流産ではなく化学流産に関連する
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 May.2020__________________________________________

 身体活動量は臨床流産ではなく化学流産に関連する
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身体活動量が多くても流産に影響しない一方、化学流産のリスク上昇と関連するという研究報告がアメリカからなされています(1)。

これまで、運動だけではなく日常の家事や仕事などを含めた「身体活動量」と流産の関係についての研究では、関係するというものもあれば、ないとするものもあり、結論は定まっていませんでした。

そこで、マサチューセッツ大学アマースト校の研究者らは、流産を化学流産と臨床流産にわけて、身体活動量との関連を調べました。

それがこの研究でした。

方法は、EAGeR研究という、過去に1〜2回の流産歴のある女性に妊娠前から低用量アスピリンを服用することで出産率が高くなるかどうかを調査した無作為比較対照試験で得られたデータを利用しています。

EAGeR研究では被験者が研究に参加する際に、過去1 週間、1日にどのくらいの時間、体を動かしているかを尋ねる質問票を使って、活動の強度と時間を回答してもらっています。その結果から身体活動量を低いグループ、中くらいのグループ、高いグループにわけ、化学流産と臨床流産のリスクとの関係を解析しました。

因みに化学流産とは尿中hcgの陽性反応で妊娠が確認されたけれども胎嚢や心拍を確認出来る前に妊娠が終了してしまうことで、臨床流産とは胎嚢や心拍を確認、妊娠と診断されたけれども妊娠20週まで妊娠が終了してしまうことです。

尿中hcgで妊娠反応が確認された785名の内、188名が流産しました。その内、55名が化学的流産、133名が臨床的流産でした。

身体活動量との関係は大変興味深いものでした。

身体活動量が中くらいの女性や高い女性は、身体活動量が低い女性に比べて、化学流産のリスクが、ほぼ2倍だったのですね。

その一方、臨床流産と身体活動量は関係しなかったというのです。

また、流産全体でみても身体活動量は関係しませんでした。

化学流産、すなわち、妊娠反応が出た後で胎嚢(赤ちゃんの袋)がみえるべきときに見えなくなることについては、身体をよく動かす女性はあまりうごかさない女性に比べて、そのリスクは2倍にもなるのですね。

身体活動量に注意すべきは、臨床的妊娠、すなわち、胎嚢が確認されるまでなので、それ以降はそれほど注意する必要がないということになります。

ここまで読まれてお気づきの方も少なくないと思います。

それでは、化学流産の手前はどうなるんだと。

つまり、着床(したと考えられる)時期から妊娠反応が出るまでの間です。

現時点では着床したかどうかは把握しようがないので、もしも、着床したけれども妊娠反応が出るまでに妊娠(着床をもって妊娠とするならば)が終了してしまう、潜在的化学流産にも身体活動量が関与している可能性があるということです。

いかがでしょうか?

今回の研究は過去に1回か、2回の流産歴のある女性を対象とした研究データですので、流産歴のない女性にまであてはめることは、もちろん、出来ません。

ただし、妊娠の極初期には身体活動の影響を受けやすいようです。

妊娠前や妊娠後はウォーキングなどの運動、家事などで積極的に身体を動かすのはよいと言われていますが着床時期と考えられる頃(胚移植後)から胎嚢確認で妊娠と診断されるまでは、少々、おとなしくしておくのが無難かもしれません。

文献
1)Fertil Steril 2020; 113: 601

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編集後記____________________________________________________________

潜在性化学流産については、「ドクターに訊く」で、リプロダクションクリニックの松林先生へのインタビュー記事「不育症を正しく理解する~不妊症と不育症はひと続き」の中で説明されています。
https://www.akanbou.com/doctor/interview21/

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