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VOL.882 生殖機能の低下を招くおそれのある有害物質についてどう考えるべきか

2020年05月17日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.882                      2020/5/17
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:生殖機能の低下を招くおそれのある有害物質についてどう考えるべきか
・当社製品&サービス
・編集後記


トピックス May.2020________________________________________________

 生殖機能の低下を招くおそれのある有害物質についてどう考えるべきか
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除草剤「ラウンドアップ」の成分として知られているグリホサートは、その安全性についてさまざまな議論がなされています。

農薬残留検査でパンやパスタから検出され、体内に取り込まれていることから使用を制限したり、禁止しようとする動きもあるようです。

そのグリホサートの生殖機能への影響について、アメリカのウェイン州立大学医学部の研究者らが、マウスを使った試験を実施し、グリホサートが細胞内の亜鉛の働きを低下させ、活性酸素を増やし、成熟卵や胚の質を低下させ、生殖機能にマイナスの影響を及ぼすとことが示されています(1)。

あくまで、マウスを用いた基礎研究であり、ヒトの場合、体内のグリホサートがどれくらいの量になれば、卵子や胚の質に影響が出るのか、正確なことはわかりませんが、残留農薬についてはハーバード大学のEARTH研究でART成績との関連が調査されています。

その結果、残留農薬の多い野菜や果物を多く食べる女性ほど体外受精の妊娠率や出産率が低く、残留農薬は生殖力の低下に関連することが明らかにされています(2)。

生殖機能に影響を及ぼすとされている有害な物質は残留農薬だけではありません。

たとえば、BPA(ビスフェノールA)やフタル酸エステルのような環境中の化学物質やメチル水銀などの自然界の化合物などについても、EARTH研究で体内濃度が高くなるとART成績にマイナスの影響を及ぼすという報告(3)がなされています。

もちろん、現時点では、エビデンスレベルから考えると、全ての食材を無農薬で安全性が保証されているものに切り替えるべき段階ではありませんし、そもそも、そこまでやるのは現実的ではありません。

ただ、可能な範囲の自己防衛はやっておくに越したことはありません。

具体的にはどうすればよいのでしょうか?

結論から言えば、なんでも、バランスよく、偏りなく食べることが、有害物質に対しての最大のリスクヘッジになるということです。

なぜなら、不思議なことに有害な物質の毒性を中和するような栄養素が存在することもわかってきているからです。

たとえば、ハーバード大学のEARTH研究で尿中のBPAの濃度が高い女性は体外受精の治療成績が低くなる一方で、食事からの葉酸摂取量の多い女性は少ない女性に比べるとBPAの治療成績への影響が軽微だったというのです(4)。

つまり、食事で葉酸を多く摂っている女性は尿中のBPAによる治療成績は影響を受けなかったことから葉酸にはBPAのマイナスの影響を「中和」するような働きがあると考えられるというわけです。

また、大豆食品にも同じような働きが認められたという研究報告もなされています(5)。

さらに、上海交通大学医学院の研究では、農薬や殺虫剤に使われたいたDDTによる生殖機能の低下がビタミンB6やB12、葉酸によって中和されるという報告がなされています(6)。

最後にメチル水銀についても調べられていて、秋田大学のART女性患者を対象にした研究で、メチル水銀は女性の妊孕能にマイナスの影響を及ぼす一方で、セレンはメチル水銀の影響を軽減する作用があることを見出しています(7)。

このような有害性の中和作用のメカニズムについては遺伝子発現の調節やホルモン受容体への作用などが考えられていますが、確かなことはわかっていません。

おそらくは、ヒトの身体の仕組みは私たちは想像している以上に複雑で、通り一遍のものではなく、さまざまな相互作用によって身体を守る仕組みも備わっているということなのかもしれません。

有害な物質は避けるに越したことはありませんがそれも限界があります。

そのため、摂らないことにこだわり過ぎると、かえって、ストレスを溜め込んでしまいかねません。

それよりも、偏りなく、バランスのよい食生活にこだわって、食を楽しむほうが現実的、かつ、効果的、そして、なにより健全ではないでしょうか。

文献)
1)Toxicology 2020; 439: 152466
2)JAMA Intern Med. 2018; 178: 17.
3)Hum Reprod Open. 2018 Feb;2018(2). 
4)Reproductive Toxicoilogy 2016; 65: 104.
5)J Clin Endocrinol Metab 2016; 101: 1082.
6)Am J Clin Nutr 2014; 100: 1470
7)Environmental Research 2019; 168: 357

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編集後記____________________________________________________________

今回の新型コロナウイルス感染で、私たちの健康に影響する多くの食品や物資が中国に頼っている現実を思い知らされました。

これからも、ますます、自己防衛が大切になってくることは間違いありませんね。

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