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VOL.839 ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(2)

2019年07月14日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.839                              2019/7/14
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(2)
・当社製品&サービス
・編集後記


トピックス Jun.2019________________________________________________

 ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(2)
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今年のヨーロッパ生殖医学会にて発表された研究報告から、今回は男性因子についての以下の演題をピックアップしました。

1)男性の年齢はICSIやIVFの治療成績に影響を及ぼすのか?
2)男性の年齢や禁欲期間、精子の質はICSI治療成績に影響を及ぼすのか?
3)食事パターンは精巣の働きに影響を及ぼすのか?
4)睡眠の質や就寝時間、睡眠時間は精子の質に影響するのか?
5)抗酸化サプリメントによる酸化ストレス低減は精液所見や精子機能を改善するか?

1)男性の年齢はICSIやIVFの治療成績に影響を及ぼすのか?
イギリスの研究チームは、男性の年齢は妊娠率や流産率にどのような影響を及ぼすのかを検討すべく、4271名の男性パートナーの4833周期のART治療を対象とした後ろ向き研究を実施しています。

男性パートナーの年齢で5つのグループ(35歳以下、36-40歳、42-44歳、45-50歳、51歳以上)にわけ、精液初所見や治療成績との関連を解析しました。

精液所見では、51歳以上の男性では精液所見がWHOの基準に達していたのは42%(56/133)で、51歳未満の男性の61%に比べて有意に低いことがわかりました。

全体の周期あたりの妊娠率は41.8%(2019/4833)でしたが、女性の年齢が35歳未満(51.1%)に比べて40歳以上(21.7%)では妊娠率は有意に低下しまし、女性の年齢の影響は顕著でした。

一方、男性パートナーの年齢が35歳未満(49.9%)に比べて36-40歳(42.5%)、41-45歳(35.2%)、46-50歳(32.8%)、そして、51歳以上(30.5%)と年齢が高くなるのに従って妊娠率が低くなり、女性の年齢やその他、影響する因子を統計学的に排除した結果、51歳以上になると有意に低下することがわかりました。

男性の年齢が51歳以上になるとART成績にマイナスの影響を及ぼすことがわかりました。

2)男性の年齢や禁欲期間、精子の質はICSI治療成績に影響を及ぼすのか?
男性パートナーの年齢や禁欲期間、精子の質のICSI治療成績への影響を調査すべく、321名の卵子提供を受けた女性患者の427ICSI周期の治療成績を対象とした後ろ向き研究が実施されました。

それぞれの相関関係は以下の通りでした。

男性の年齢が高くなるほど、受精率や3日目良好胚率、正常分割速度胚率、胚盤胞到達率、良好胚盤胞率、着床率、妊娠率が有意に低下していました。

また、禁欲期間が長くなるほど、3日目良好胚率や正常分割速度胚率、胚盤胞到達率、着床率が有意に低下しました。

一方、精子数や運動率等の精液所見がよいほど、受精率や正常分割速度胚率、胚盤胞到達率、着床率が有意に高くなっていました。

男性因子の影響を調べるために卵子提供を受けてICSI治療に臨んだカップルを対象にていますが、男性の年齢の影響が最も大きかったようで、男性の年齢の影響は私たちが想像している以上に大きいのかもしれません。

女性と同様、男性の年齢も対策のしようがないものですが、禁欲期間を短くしたり、精子の質を改善することは取り組むことが可能です。

ART成績の向上にプラスになるかもしれません。

3)食事パターンは精巣の働きに影響を及ぼすのか?
ハーバード大学の研究チームは、2935名の徴兵検査を受けるデンマーク人の健康な若い男性に食事調査を実施し、4つの食事パーターンを抽出し、それぞれの食事パターン度と精液所見との関係を解析しています。

食事パターンは以下の通りです。
・西洋型:ピザやチップ、精製肉、赤身肉、精製穀物、高カロリー飲料、スイーツをよく摂る。
・健康型:魚、鶏肉、野菜、果物、水をよく摂る。
・デンマーク伝統料理型:コールドプロセス肉、全粒穀物、マヨネーズ、コールドフィッシュ、スパイス、乳製品をよく摂る。
・ベジタリアン型:野菜、豆乳、卵をよく摂る。

各食事パターン度で5つのグループに分け、精液所見との関係を解析した結果は以下の通りでした。

西洋型度最も高い男性は最も低い男性に比べて平均精子数が2500万匹少なく、反対に健康型度が最も高い男性は最も低い男性に比べて平均精子数が4280万匹多かったことがわかりました。

また、健康型度は精子数は最も多く、野菜型、伝統料理型が続き、西洋型は最も低いことがわかりました。

西洋型度は低インヒビンBや高遊離テストステロンと関連し、健康型度は低エストロゲンや高性ホルモン結合グロブリンと関連することもわかりました。

これらの結果から、魚、鶏肉、野菜、果物、水を中心に食べることは、精子数が多いことと関連することがわかりました。

4)睡眠の質や就寝時間、睡眠時間は精子の質に影響するのか?
デンマークのオーフス大学の研究チームは、不妊治療を受けようとしているカップルの男性パートナーの睡眠が精子の質にどのような影響を及ぼすのかを検討すべく、不妊クリニックで不妊治療を受けているカップルの男性、104名にピッツバーグ睡眠質問票に回答してもらい、精液所見の結果との関連を調べました。

その結果、22時30分までに就寝する男性は、それ以降に就寝する男性に比べて、良好な精液所見により関連し、睡眠時間が7時間半以上8時間未満の男性は7時間未満や7時間以上7時間半未満の男性に比べて良好な精液所見に関連しました。

8時間以上の睡眠や睡眠の質と精液所見には関連が見られませんでした。

これらの結果から、22時30分までに就寝すること、7時間半から8時間までの睡眠時間が精子の質によい影響を及ぼすのかもしれません。

5)抗酸化サプリメントによる酸化ストレス低減は精液所見や精子機能を改善するか?
アメリカとエジプトの研究グループは抗酸化サプリメントが精液中の酸化ストレスを抑制するか否かを検討すべく、148名の男性不妊患者に抗酸化サプリメントを3ヶ月間摂取してもらい、摂取前後の精液検査結果や精子DNA断片化率、精液中の酸化ストレスを測定し、比較しました。

その結果、精液中の酸化ストレスが高かった116名の男性では99名(85.3%)で酸化ストレスが有意に低減したものの正常レベルに達したのは41名(35%)でした。

精液所見では、精子濃度や精子運動率、前進精子運動率、精子正常形態率は有意に改善され、精子DNA断片化率も有意に改善されました。

精液中の酸化ストレスが正常レベルまで低減した男性では精液所見はより改善され、酸化ストレスと精液所見の相関が認められました。

抗酸化サプリメントは精液中の酸化ストレスを抑制することで精子の質を改善させることから、不妊治療を受けている男性パートナーにとって抗酸化サプリメントは有用であることが示唆されました。

以上ですが、今年のヨーロッパ生殖医学会では、男性についての研究発表が大変多かったようです。

女性の年齢が高齢化し、治療成績が低くならざるを得ないため、精子の質に目を向け、治療成績の向上を目指すことが大切なテーマになっているとのことです。

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編集後記____________________________________________________________

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