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VOL.837 ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(1)

2019年06月30日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.837                              2019/6/30
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今週の内容__________________________________________________________

・トピックス:ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(1)
・当社製品&サービス
・編集後記


トピックス Jun.2019________________________________________________

 ヨーロッパ生殖医学会ダイジェスト(1)
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さる6月23日から26日まで、ヨーロッパ生殖医学会がオーストリアのウィーンで開催されました。アメリカ生殖医学会とならぶ国際学会で、最新、かつ、最先端の生殖医療に関する研究成果が発表されました。

その中からビタミンDやミオイノシトールと治療成績の関連、また、運動と治療成績への影響について調査した研究報告をご紹介します。

◎ビタミンDと卵丘細胞のテロメア長
スペインの研究グループは、ビタミンD3の代謝産物である24,25- dihydroxyvitamin D3(24,25(OH)2D3)の血中や卵胞液中の濃度が卵丘細胞のテロメアの長さに関連することを確かめたという研究結果を発表しました。

テロメアとは、「染色体の端のこと」を指していて、その領域は細胞分裂のたびに短くなり、なくなると細胞が死滅することから、テロメアの長さは老化の進行の目安になり得ると考えられています。

そして、これまで、ビタミンDの濃度が高い女性ほど白血球のテロメアが長く、ビタミンDが細胞の寿命に関連するという研究報告がなされています。

そこで、スペインの研究グループは、ビタミンD濃度と卵丘細胞のテロメアの長さとの関連を調べ、ビタミンDが卵子の老化の進行に関わっているかどうかを検討しました。

不妊治療の卵子提供プログラムの際に35名の卵子提供者から採卵され、取り除かれた卵丘細胞のDNAを解析し、テロメアの長さを測定、血中と卵胞液中の24,25(OH)2D3濃度との関係を解析しました。

その結果、血液や卵胞液中の24,25(OH)2D3濃度が高いほど卵丘細胞のテロメアが有意に長いことがわかりました。

このことからビタミンDは卵子の老化の進行に関わっていることが示唆されました。

◎ビタミンDと体外受精治療成績
インドの研究者らは、血中や卵胞液中のビタミンD濃度は体外受精における獲得成熟卵数や受精率、妊娠率に関連したという研究結果を発表しました。

ビタミンDは子宮内膜の免疫反応を調節に働き、着床に関与していることが知られていますが、最近の研究では卵胞液中のビタミンD濃度は卵巣機能や卵胞発育、胚成熟、胚質に関連するとの報告がなされています。

76名の体外受精に臨む女性患者を対象に、ホルモン基礎値測定時とHCG投与時の血液中、また、採卵時の卵胞液中の25(OH)Dを、それぞれ測定し、血中の25(OH)D濃度で3つのグループ(欠乏群・不足群・充足群)に分け、治療成績との関係を調べました。

その結果、受精率は、それぞれ、43.17%、53.37%、58.77%、妊娠率は、それぞれ、23.2%、29.3%、35.5%でした。

◎PCOS女性へのミオイノシトールの治療成績への有効性
イランの研究グループは、ミオイノシトールはPCOS女性のART治療における成熟卵率や受精率、胚質を改善したという研究結果を発表しました。

PCOS女性のART治療成績への有効性を検討すべく、二重盲検無作為比較対照試験を実施。被験者をランダムに2つのグループに分け、一方には卵巣刺激開始の1ヶ月前から採卵日まで、1日に4gのミオイノシトールと400μgの葉酸を、もう一方にはプラセボを、それぞれ服用してもらい、治療成績や卵子の質に関与する遺伝子の発現、卵胞液中の抗酸化能や活性酸素レベルを測定しました。

その結果、成熟卵率や受精率、胚質はミオイノシトール+葉酸群で有意に高く、卵子の質に関与する遺伝子の発現も服用群で有意に高いことが確かめられました。

その一方で、抗酸化能や活性酸素は違いが見られませんでした。

◎運動と治療成績の関係
エストニアの研究者らは、ART治療を必要とするカップルは必要としないカップルに比べて運動不足で、あまり身体を動かさないライフスタイルが多いという研究結果を発表しました。

研究は、スウェーデンのウプサラ大学病院ではじめての不妊治療に臨む128名、64組のカップルを対象に実施。治療開始前に、質問票に加えて連続7日間、加速度計を装着し、身体活動を測定し、その後の不妊治療や成績との関係を解析しました。

その結果、ARTやAIHに進んだカップルは進まなかったカップルに比べて身体を動かす時間が短かく(高強度)、テレビを観る時間等、身体を動かさない時間が有意に長かったことがわかりました。

ただし、この研究ではカップルの身体活動は治療成績への影響は見出すことが出来ませんでした。

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編集後記____________________________________________________________

今年のヨーロッパ生殖医学会で行われた研究発表では、男性の精子の質、すなわち、精子DNA断片化率に関連する研究がとても多かった印象を受けました。

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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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