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VOL.804 食と妊娠する力:脂肪酸

2018年11月11日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.804 2018/11/11
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・今月のトピックス:食と妊娠する力:脂肪酸
・イベント&セミナー情報
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2018年11月9日 曇り時々雨、のち晴れますように
お知らせ
https://www.akanbou.com/column/reproductivecounseling/20181109.html
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2018年11月6日 編集長コラム
精子の質の改善のため新たな視点
https://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20181106.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


今月のトピックス Nov. 2018_________________________________________

 食と妊娠する力(2)脂肪酸
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アメリカ生殖医学会誌「Fertility and Sterility」の9月号の特集(VIEWS AND REVIEWS)は栄養、すなわち、食事やサプリメントの生殖機能への影響がテーマです。

編者はハーバード大学のジョージ・チャバロ先生で、2013年に先生の著書「Fertility Diet」を翻訳し、「妊娠しやすい食生活」として出版するというご縁をいただいて以来、なにかと助言いただいているこの分野の世界の第一人者です。
http://www.akanbou.com/doctor/interview17/

テーマごとのダイジェスト、今月は「脂肪酸」です。

■脂肪酸について
脂肪酸とは油を構成する成分のことで、その化学的な構造から大きく3つのグループに分けられます。

肉やバターなどの動物性脂肪に多く含まれ、常温では固体である「飽和脂肪酸」、オリーブオイルやサフラワー油に多く含まれ、常温では液体である「一価不飽和脂肪酸(オメガ9系脂肪酸)」、そして、植物や魚の油に多く含まれ、常温では液体である「多価不飽和脂肪酸」です。

多価不飽和脂肪酸は、さらに、オメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の2つに分けられます。コーン油、ゴマ油、大豆油、紅花油、ひまわり油、サフラワー油等に豊富に含まれるのがオメガ6系脂肪酸で、魚の油、フラックスオイル(亜麻仁油)、エゴマ油、シソ油等に豊富なのがオメガ3系脂肪酸です。

もう1つ、脂肪酸の一種にトランス脂肪酸があります。

植物油などからマーガリンやショートニングなどを製造する際や植物油を高温にして脱臭する工程で生じる、人工的なトランス脂肪酸と、牛などの反すう動物に由来する乳製品や肉に含まれている天然に存在するトランス脂肪酸があります。

食で話題にされるのは、主にマーガリンや菓子類に含まれる、人工的に生成されたトランス脂肪酸のほうです。

これらの脂肪酸の構成、すなわち、どんな脂肪酸がどれくらいの割合で含まれるかによって、その油の性質が決まります。

また、多価不飽和脂肪酸は体内で合成することが出来ない「必須脂肪酸」で食事からしか摂れません。そして、必須脂肪酸が体内で代謝(変換)され、さまざまな機能をもつ局所的に作用するホルモンのような物質になります。

知っておくべきは、2つの必須脂肪酸、すなわち、オメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸から変換される物質は、相反する作用を持つということです。

そのため、食事内容によってオメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の摂取量や摂取比率が決まり、そのことが健康状態、引いては生殖機能にも影響を及ぼします。

■脂肪酸と生殖機能
脂肪酸は卵の成熟や胚の発育に必要とされるエネルギーをつくるための材料になり、着床や妊娠継続に重要な役割を担うプロスタグランジンやステロイドホルモン、そのものの材料にもなります。

その一方で、トランス脂肪酸はインスリン抵抗性を引き起こし、排卵のプロセスにマイナスの影響を及ぼします。

◎トランス脂肪酸
女性看護師を対象とした大規模疫学研究(看護師健康調査)で、トランス脂肪酸の摂取量が多いほど排卵障害の不妊症や子宮内膜症のリスクが高いこと、また、カナダとアメリカで実施された疫学研究でもトランス脂肪酸の摂取で妊娠するまでの期間を長くなると報告されています。

ただし、トランス脂肪酸の摂取量が低いデンマークでの研究では、そのような関連は見られませんでした。

◎オメガ3系脂肪酸
アメリカで実施されたBiocycleスタディーという研究では、オメガ3系脂肪酸を多く摂るほど黄体期のプロゲステロン濃度が高く、オメガ3系脂肪酸の一種であるDHAを多く摂るほど、エストロゲンレベルが高く、無排卵のリスクが低かったとのこと。

看護師健康調査ではオメガ3系脂肪酸の摂取量と排卵障害は関連しなかったものの、子宮内膜症の発症リスクが低いこととの関連は見出しています。

さらに、アメリカとカナダで実施されたPRETO研究ではオメガ3系脂肪酸のサプリメントを使わない女性の間ではオメガ3系脂肪酸の摂取量が多い女性ほど妊娠までに要する期間が短かった一方で、デンマークで実施された疫学研究では、元々、オメガ3系脂肪酸をよく摂取している女性の間ではオメガ3系脂肪酸の摂取量と妊娠しやすさとは関連しませんでした。

卵巣予備能については、BMIが標準である女性では食事からのオメガ3系脂肪酸の摂取が多いほど血中のFSH値が低く、マウスの試験ではオメガ3系脂肪酸の摂取量が多いほど卵巣が老化しにくかったと報告しています。

◎オメガ3系脂肪酸と体外受精治療成績
オメガ3系脂肪酸は体外受精の治療成績にもよい影響を及ぼすとの研究報告がなされています。

ハーバード大学によるEARTH研究では血中のオメガ3系脂肪酸濃度gは1%増えると臨床妊娠率や出産率は8%上昇したと報告しています。

別の研究では、体外受精で妊娠に至った女性は妊娠に至らなった女性に比べて血中のEPA値が有意に高く、オメガ3系脂肪酸の摂取量が多いほど良好胚率が高かったことが示されています。

さらに、91名の女性患者を対象にした小規模の研究ではオメガ3系脂肪酸の一種、αリノレン酸の血中濃度は低い妊娠率と関連していたものの、同じ研究者らによる200名を対象とした研究ではいずれの多価不飽和脂肪酸も体外受精の成績との関連性は見いだせませんでした。

◎オメガ6系脂肪酸と体外受精治療成績
オメガ6系脂肪酸については、研究間の結果が一定していません。

過体重や肥満のART女性患者を対象にした小規模な研究では、妊娠前のオメガ6系脂肪酸(リノール酸)の摂取は妊娠率の改善に関連していたと報告されていますが、別の研究では卵胞液中のリノール酸濃度は卵の成熟にマイナスの影響を及ぼすこと、EARTH研究でも卵胞液中のリノール酸濃度はトータルの採卵数や成熟卵数にマイナスも影響を及ぼしていたものの、その後の着床率や臨床妊娠率、出産率との関連はみられませんでした。

■まとめ
オメガ3系脂肪酸の積極的な摂取やトランス脂肪酸を摂らないことは、生殖機能の向上に寄与するかもしれません。それら以外の脂肪酸の影響については、まだまだ、不明なところが多く、さらなる研究が必要です。

■最後に
脂肪酸は妊娠や出産には必須であるものの、働きは多彩で、そのメカニズムは複雑であることから、それぞれの脂肪酸がどのように関与し、影響を及ぼしているのか、単純ではないようです。

また、それぞれの国の食文化によって、摂取状況も異なることから、海外の研究結果をそのまま解釈することも難しそうです。

オメガ3系脂肪酸を積極的に摂取し、トランス脂肪酸を避けるというまとめですが、そもそも、現代の日本人ではオメガ6系脂肪酸が過剰で、オメガ3系脂肪酸が不足している傾向にあると言われています。

その背景として、精製食品や加工食品、菓子類を多く食べるようになったこと、反対に魚を食べなくなったことが考えられます。

そのため、オメガ3系脂肪酸を増やし、トランス脂肪酸を摂らないということは、精製食品や加工食品、菓子類を、極力、減らし、魚をもっと食べるということになります。

脂肪酸、そのものを食べたり、飲んだりするわけではなく、「食べて」、その結果、摂取脂肪酸の内容が決めります。

結局、脂肪酸のバランスを整え、妊娠や出産に有利にするには、どの油がよいとか、悪いとかいう末節なことよりも、「食のバランス」と「加工度のバランス」を取り戻すという、全体の見直しが避けて通れないと思います。

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編集後記____________________________________________________________

これから冬にむかい、気温が下がると、私たちの身体も冷えやすくなります。冷えやすさを自覚されている方は、単に身体をあたためるだけでなく、冷えにくい体質にすることも大切です。

まずは、たんぱく質の豊富な朝ご飯。納豆に卵、焼き魚に味噌汁という典型的な和の朝食が理想的で、コーヒーやジュースにトースト、生野菜等の洋食はかえって内臓を冷やしてしまいかねまえん。

1日のスタートに熱をつくる材料を確保し、そして、複式呼吸法で新鮮な酸素を取り入れ、筋力をつけ、よく動くことで、しっかり、燃やすと。

自家発電的発想で冷えにくくします。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.804
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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
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