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VOL.783 妊娠前のビタミンD濃度と妊娠率や出産率、流産率

2018年06月17日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.783 2018/6/17
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今週の内容__________________________________________________________

・最新ニュース解説:妊娠前のビタミンD濃度と妊娠率や出産率、流産率
・当社製品&サービス
・編集後記


最新ニュース解説 Jun.2018__________________________________________

 妊娠前のビタミンD濃度と妊娠率や出産率、流産率
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妊娠前からビタミンDが足りている女性は足りていない女性に比べて妊娠率、出産率が高く、流産率が低いことがアメリカで実施された研究で明らかになりました(1)。

研究は、過去に1回か2回の流産の経験があるけれども不妊症ではない18〜40歳の女性を対象に低用量のアスピリンの有効性を調べるために実施した二重盲検無作為化比較試験、EAGeR研究のデータを用いて実施されたものです。

今回の研究では、まずは、1191名の女性の試験開始時、また、妊娠した女性には妊娠8週間に測定されたビタミンDの指標とされている血中の25(OH)Dについて、充足している(75nmol/L以上)グループと充足していない(75nmol/L未満)グループに分けたところ、ビタミンDが足りている女性は555人(47%)、不足している女性は636人(53%)と、ほぼ半々の割合でした。

そして、妊娠にチャレンジした6周期、そして、妊娠した女性については出産するまで追跡して、妊娠率や出産率、流産率を比較しています。

その結果、ビタミンDが足りている女性は足りていない女性に比べて妊娠率で10%、出産率で15%、それぞれ、高かったことがわかりました。

また、妊娠に至った女性においては、妊娠前(研究開始時)にビタミンDが足りていた女性は足りていなかった女性に比べて流産率が12%低かったのに対して、妊娠8週目のビタミンD濃度は流産率と関連しなかったことがわかりました。

この結果だけで、ビタミンDのサプリメントを飲むことで妊娠率や出産率が高くなり、流産率が低下するという結論を導くのは早計ですが、妊娠を目指す女性はビタミンDを不足しないように気をつけるに越したことはないということは言えます。

特に今回の研究は、規模が大きい前向き試験であり、これまでの同様の(不妊症でない女性を対象にした)研究報告に比べると信頼性は高いと言えます。

◎アメリカ人女性と日本人女性
今回の研究ではビタミンDが足りている女性と不足している女性の割合はほぼ半々であったと報告されています。

過不足の基準は血中の25(OH)Dが75nmol/L(30ng/mL)で日本の不妊治療クリニックで採用している基準と同じですが、日本人女性の場合は、いろいろな調査結果がありますが、不足している女性が7〜8割という調査結果が多いようです。

つまり、日本人女性のほうがビタミンDが不足している女性が圧倒的に多く、より切実です。

これまで日本人女性を対象にしたビタミンD濃度と妊娠率や出産率の関係を調べた論文はありませんが、現在進行形で妊娠を目指している女性にとっては、それまで待って判断するわけにはいきませんので、やはり、ビタミンDの不足を避けることに越したことはありません。

◎ビタミンDの不足を避けるために
今回の研究で、最も興味深かったことは、全体の91%の女性はマルチビタミンのサプリメントを飲んでいたというのですが、ビタミンDの過不足の割合はマルチビタミンを飲んでいても飲んでいなくても変わらなかったということです。

つまり、マルチビタミンではビタミンDの不足予防に役立っていなかったというわけです。

おそらく、マルチビタミンに配合されているビタミンDの量では足りないということでしょう。

これまでの研究ではビタミンDは最低でも1日に20〜25μg(800〜1000IU)は必要とされています。

ところが、市販のマルチビタミンをみてみると、せいぜい、5〜10μgです。

さらに、ビタミンD値のレベル、たとえば、不足レベルではなく、20ng/mL未満の欠乏レベルでは、たとえ、25μg(1000IU)を補充しても、なかなか、充足レベルに達しないこともわかっています。

そのため、出来ればビタミンDの指標である血中の25(OH)Dを測定し、現在のレベルに応じて、ビタミンDのサプリメントの摂取量を決め、摂取後、充足レベルに達しているかどうか、定期的に血液検査を受けることが望ましいと言えます。

◎食事と日光浴
ビタミンD不足対策の基本は、やはり、食事と生活習慣であり、ビタミンDが豊富に含まれる魚を週に3回以上食べること、また、1日15〜30分程度は日にあたることです。

紫外線にあたることで皮膚でコレステロールからビタミンDのもとがつくられるからです。

◎妊娠後もビタミンDは大切
今回の研究では、流産率は妊娠後ではなく、妊娠前のビタミンD濃度に関連していたことがわかりました。

つまり、妊娠の継続については妊娠前からビタミンDを不足しないように気をつけるべきかもしれないということになります。

ただし、妊娠中のビタミンDのサプリメントは胎児や新生児の成長に有用であるという研究報告がなされています(2)。

このようにビタミンDは妊娠、出産に深く関与していることは間違いありません。

妊娠前から妊娠を通じて、ビタミンDを不足しないように気をつけることが大切なようです。


文献)
1)Lancet Diabetes Endocrine 2018 Online First.
2)JAMA Pediatrics 2018 Online First.

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編集後記____________________________________________________________

多くの先生方からのご要望にお応えしてhttp://www.babyandme.jp/news/16988">「ラクトフェリン」のサプリメントの販売を開始しました。いわゆる、プレバイオティクスで、子宮内や膣内の微生物組成の対策です。

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編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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