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VOL.773 コエンザイムQ10補充の卵巣機能改善効果

2018年04月08日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.773 2018/4/8
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・最新ニュース解説: コエンザイムQ10補充の卵巣機能改善効果
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
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2018年4月8日 最新ニュース
CoQ10補充は若年の卵巣機能低下女性の卵巣の反応性や胚質を改善する
http://www.akanbou.com/news/news.2018040701.html
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2018年4月2日 編集長コラム
ヨーロッパの長寿食研究が教えてくれること
http://www.akanbou.com/column/henshuuchou/20180402.html
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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


最新ニュース解説 Apr.2018__________________________________________

 コエンザイムQ10の補充の卵巣機能改善効果
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高度生殖補助医療の治療開始前にコエンザイムQ10(CoQ10)を1日600mg、60日間摂取すると、その後の卵巣刺激への卵巣の反応性が高まり、体外受精や顕微授精後に得られる胚の質が改善されると、中国の北京大学第三病院の研究グループによる35歳未満の卵巣機能低下女性を対象とした研究試験の結果(1)が報告されています。

◎治療開始前のCoQ10補充が卵巣の反応性や胚質を改善
研究は無作為比較試験で、35歳未満で、卵巣機能が低下(AMHが1.2ng/ml未満、胞状卵胞数が5個未満)した女性を対象に実施されました。

被験者の女性をランダムに2つのグループにわけ、一方のグループには治療開始迄の60日間、1日に600mgのCoQ10を飲んでもらい、もう一方はなにも飲まないですぐに治療を開始してもらいました。

そして、GnRHアンタゴニスト法による卵巣刺激後、体外受精(男性不妊の場合は顕微授精)、胚移植が行われ、卵巣刺激に対する反応性や培養成績、治療成績を比較しました。

その結果、CoQ10を飲んだグループは飲まなかったグループに比べ、卵巣刺激に要した排卵誘発剤の量が少なく、反対にピークのE2値は高く、採卵数も多かったことからCoQ10の補充は卵巣の反応性を高めたことがわかりました。また、CoQ10を飲んだグループは良好胚数が多く、CoQ10は胚質も改善したことがわかりました。

ただし、妊娠率や出産率もCoQ10を飲んだグループのほうが高かったものの、統計学的に有意な差ではありませんでした。

◎コエンザイムQ10とは?
コエンザイムQ10は肉類や魚介類などに含まれている脂溶性の物質で、ヒトの体内でも合成されてることから「ビタミン様物質」に分類されています。ビタミン様物質というのは「ビタミンのような働きをし、かつ、体内でつくられる化合物」のことです。

主な働きとして、細胞内のミトコンドリア内のエネルギー産生の最終段階で補酵素として関与すること、また、抗酸化物質としての役割も担っていることが知られています。

要するに、ミトコンドリアでエネルギーをつくるためになくてはならない物質であり、ミトコンドリアが主な発生源である活性酸素の害の消去にも働いている物質でもあるということです。

◎酸化ストレスによるミトコンドリア機能の低下と卵巣機能の関係
卵巣機能や卵の質の低下の詳細なメカニズムは完全にはわかっていませんが、現時点ではそのプロセスにミトコンドリアが中心的な役割を果たしていると考えられています。

ミトコンドリアは細胞内で必要なほぼすべてのエネルギーを産生しています。ところがそのプロセスで活性酸素も同時に産生されているため、もしも、活性酸素消去能が低下すると、酸化ストレスレベルの上昇を招き、ミトコンドリアの機能が障害され、エネルギーをつくる量が低下するのではないかと考えられています。

卵細胞が増殖するためのエネルギーはミトコンドリアにおっているため、その機能低下によって、十分なエネルギーが供給されにくくなり、染色体不分離が起こりやすくなることで染色体異常率が上昇するのではないかというわけです。

◎CoQ10補充が卵巣機能の低下対策になり得るか?
CoQ10は体内でつくられていますが、年齢とともにその量が減ると言われています。そして、そのことがミトコンドリア内のエネルギー産生効率や活性酸素消去能の低下を招いているのであれば、CoQ10を補充することで、卵巣機能の低下対策になり得るのではないかとの仮説がなりたちます。

そこで、今回の中国の臨床研究が行われました。

◎この結果をどう受け止めるべきか
今回の研究は、若年、すなわち、35歳未満の卵巣機能低下女性を対象に行われました。そのため、CoQ10補充は加齢による卵巣機能低下に対する有効な対策になるとは言えません。

ただし、今回の研究ではCoQ10の補充が卵巣の反応性や胚質を改善したメカニズムは調べられていないものの、おそらく、活性酸素消去能の低下、もしくは、酸化ストレス上昇による卵巣機能の低下に対して有効であったのではないかと推測されます。

そのため、PCOSや子宮内膜症、生活習慣、ストレスによって酸化ストレスが上昇したり、加齢によって活性酸素消去能が低下したりして、卵巣機能が低下している場合には、CoQ10の補充が治療成績の低下防止、あるいは、改善になるかもしれません。

また、CoQ10の有効性は、あくまで、限定的であることも知っておかなければなりません。

研究では卵巣の反応性や胚質の改善はみられましたが、肝心の妊娠率や出産率はCoQ10グループのほうが高かったものの統計学的な有意差までは至っていません。

いくら採卵数や受精卵数が増え、良好な胚が得られたとしても、出産まで行かなければ意味がありません。

ただ、そうは言うものの採卵数や受精卵数が少なく、良好な胚が得られなければ、胚移植にも進めないわけで、そういう意味では、一歩、前進できると受け止めることは出来ます。

もう1つ、1日に600mgのCoQ10はかなりの高容量で、日本では一般的ではありません。

ただし、これまでの研究では1日900mg程度までは安全であるとされています。また、今回は中国の研究で同じアジア人であること、また、副作用はなかったと書かれています。そして、研究で使われたCoQ10は酸化型か、還元型かについては記載がありませんでした。

そのため、還元型CoQ10を150mg、もしくは、300mg程度でチャレンジするのがよいかもしれません。

◎最後に
卵巣機能の低下、ましてやそれが加齢が原因であれば、有効性が確率された治療なり、サプリメントはありません。

ただし、加齢による卵巣機能の低下でも、今回のように個別の状況次第では試す価値のある方法はいくつかあります。

いずれにしても、ネット上にはさまざまな情報や商品が氾濫していますが、最低限、何らかの根拠がないものは避けるのが無難だと思います。

また、最終的にミトコンドリアでエネルギーが取り出されていますが、それまでは食事から摂取した栄養素を膨大な数の酵素や補酵素が関わり、変換されていくプロセスをへています。

なんらかの物質をサプリメントで補充したからといってミトコンドリアの機能が改善されるなどというような単純な図式ではなく、あくまでも適切な食事や運動、睡眠の上に成り立っているものであるという、全体のメカニズムをみておかなければならないと思います。


文献)
1)Reprod Biol Endocrinol 2018; 16: 29.

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・翻訳書:妊娠しやすい食生活
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・妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
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編集後記____________________________________________________________

春は自然界のエネルギーが高まる季節なので、私たちの身体の中のエネルギーを発散させないで、冬と同じような生活だと、体調を崩してしまいかねません。

春は意識して、発散することが大切です。

積極的にアウトドアにでかけ、そして、汗を流し、自然な排泄力を高めましょう。


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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行]    VOL.773
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://partner-s.info/
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