メルマガ

VOL.676 納得のいく選択や決断のための"情報共有"について考える

2016年05月29日

____________________________________________________________________

 妊娠しやすいカラダづくり No.676 2016/5/29
____________________________________________________________________

今週の内容__________________________________________________________

・更新j情報
・ドクターに訊く:納得のいく選択や決断のための"情報共有"について考える
・当社製品&サービス
・編集後記


更新情報____________________________________________________________

サイト版「妊娠しやすいカラダづくり」の更新情報です。
-------------------------------------------------------------------
2016年5月25日 最新ニュース
マカの健康な男性の精液所見への摂取効果
http://www.akanbou.com/news/news.2016052501.html
--------------------------------------------------------------------
2016年5月25日 曇り時々雨、のち晴れますように
ママさんバレー
http://goo.gl/JxBwn3
-------------------------------------------------------------------
2016年5月25日 授かるレシピ
【授かるベーシックレシピ】ふりかけるだけ!青のりの味噌汁
http://www.akanbou.com/column/recipe/20160525.html
--------------------------------------------------------------------
記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


ドクターに訊く May.2016_____________________________________________

 納得のいく選択や決断のための"情報共有"について考える
--------------------------------------------------------------------
今回は「納得のいく選択や決断のための"情報共有"について考える」というテーマで、岡山二人クリニック理事長の林伸旨先生にお話しをお伺いしました。

不妊治療においては、どんな治療をどのくらい続けるのか、当事者であるカップルが主体となって決める必要があります。その選択や決断には、医学的な根拠もさることながら、本人たちの価値観が反映されるべきであるからです。

そして、そのためには、当然のことですが、"情報"が必要です。ただし、関連する情報を集めさえすればよいというわけではありません。集めた情報を整理し、理解を深め、知識としてその時々の自分たちの選択や決断に活かすことができなければ意味がありません。

「知らない」というだけでなく、「よくわからない」、「誤解しているかも」、「勘違いしている」ままでは、自分たちにふさわしい選択や決断どころか、余計な心配を抱えたり、不要な混乱をきたしたりしてしまいかねません。

この意味で、不妊治療患者にとって、自分たちの納得のいく選択や決断は通院する医療機関による適切なサポートなしには実現できないと言っても過言ではありません。そして、そのベースになるのが医療側との「情報共有」です。

昨今、女性の不妊患者の年齢が高くなり、限られた時間と費用の中で後悔のない選択を迫られる現状を見れば、その重要性も、益々、高まっていると言えます。

そこで、開院以来20年間、よりよい医療を提供するための「情報の共有化」を徹底してはかるべく、情報共有システムを構築され、現在、生殖医療に携わるドクターをはじめとする医療関係者が全国から見学に訪れるほど注目されている岡山二人クリニックの理事長である林 伸旨先生にお話しをお伺いしました。

林先生のお話しが、これから不妊治療をはじめようとしているカップルだけでなく、現在進行形で頑張って治療を続けているカップルの「納得のいく不妊治療」の実現のための助けになればと願っています。

■インタビューの内容
(1)よりよい医療を提供するための情報共有システム
(2)治療成績の開示は年齢別の採卵あたりの生産率(生児獲得率)が大切
(3)プロセスこそ大切
(4)チーム医療の実現
(5)信頼は情報の共有から
(6)"卒院証"が意味すること


(1)よりよい医療を提供するための院内情報共有システム

細川)岡山二人クリニックは、完成度の高い情報共有システムを構築されているということで全国的に有名です。

林先生)不妊治療、うちでは『望妊治療』と呼んでいますが、望妊治療を受けるのもやめるのも、患者さんが決めることですね。

細川)はい。

林先生)患者さんが治療や治療方針を選択するためには、まず患者カップルが正しい最新の情報を得る必要があります。この情報提供を「私たち医療機関はきちんとやらなければならない」ということで、今年の5月で開院20年になりましたが、いろいろなツールをつくり、試行錯誤を繰り返しながら、これまで創り上げてきました。

細川)具体的にはどのようなものなのでしょうか。

林先生)ホームページはもちろんのこと、各種説明書、同意書、DVD「望妊治療」作成、大型モニターでのサイネージシステムなどを作ってきました。また説明会をおこなったり、説明会の動画資料も作成していますが、患者さんの理解度も異なりますし十分とは言えません

細川)はい。

林先生)このため院内に30台のパソコンを置き、一方的な情報提供ではなく、患者さんが自分が知りたい情報を見に行ける、また患者さんが疑問や意見を書き込み、それに対するお応えを掲載して、その患者さんでなく他の方にとっても理解を深めることができる情報共有システムの構築を目指しました。検索機能もついていますので、自分が知りたい情報を簡易に見ることができるようになっています。このシステムをつかって、「アンケート調査」や患者さん意見交換の「Free Talk Note」も運用しています。

細川)なるほど。診察室では個別に対応できる時間が限られている分、IT技術を使い、双方向のやりとりが可能なシステムによって補完されているわけですね。

林先生)また、このシステムは、現在クラウド化して、院内パソコンだけでなくスマートフォンや自宅パソコンでも見たり書き込めるようになっています。もちろん、セキュリティには万全を期しています。

細川)これにより、自宅や外出先からでもシステムにアクセスできるというわけですね。情報共有システムが充実しているだけでなく、クラウド化までされているとは驚きました。

林先生)双方向とは言っても、やはり、対面による個別対応が必要であると考え、通常の受付とは別に相談受付を設置し、不妊症看護認定看護師をはじめ、生殖医療コーディネーターや臨床心理士、管理栄養士などの相談部の専門スタッフが相談や説明補完にあたっています。

細川)よくわかりました。


(2)治療成績の開示は年齢別の採卵あたりの生産率(生児獲得率)が大切

細川)医療機関から患者さんへの情報提供ということにおいて、まずは「自施設の治療成績をきちんと開示しなければなけない」というのが林先生の持論ですね。

林先生)はい。治療成績は、当然、公開すべきです。それも年齢層別の生産率、要するに実際に赤ちゃんが生まれている確率を公開すべきと思っています。

細川)治療成績は年齢別の生産率で公表すべきと。

林先生)妊娠反応が出たといっても、そもそも妊娠判定基準そのものがあいまいです。超音波で胎嚢確認して初めて妊娠といえますが、その後、流産に終わっ
てしまっているかもしれないわけですから、治療成績は妊娠率だけでは不十分と思います。

細川)確かに妊娠率だけでは患者さんには親切とは言えませんね。

林先生)また体外受精の治療成績の場合、胚移植あたりの妊娠率や生産率だけでなく、採卵あたりでデータを出すことが大事だと思っています。

細川)1回の採卵あたりでの妊娠率や生産率を出すべきだと。

林先生)なぜなら、採卵できなかったり、成熟卵がなかったり、受精しなかったり、受精しても途中で分割が止まったりで、1つも移植できないケースもあります。その反対に、たくさん受精卵が出来て、移植して妊娠出産され、その後に凍結していた胚を融解移植して、妊娠出産されているケースもあるわけです。つまり、採卵したけれども移植までもいけなかったという人もあれば、1回の採卵で2人、3人のお子さんが生まれたという人もいるということです。

細川)なるほど。そうすると胚移植あたりの妊娠率だけであれば、プロセスの一部しか反映されていない不完全な治療成績になってしまい、患者さんに過大な期待を抱かせてしまいかねないというわけですね。

林先生)岡山二人クリニックのホームページには治療成績として、採卵あたりの累積妊娠率、累積生産率を公開しています。

細川)その場合、1回の採卵で2人以上のお子さんを妊娠、出産された場合はどのようにカウントされているのでしょうか?

林先生)2人以上のお子さんを妊娠出産されても、1妊娠、1出産として累積の確率を算出しています。

細川)体外受精の治療のスタートであり、かつ、最も身体にかかる負担が大きいのが採卵なので、採卵に臨めば全体でどれくらいの確率で出産できているのか、年齢別にわかると患者さんにとっては最も参考になる治療成績ということになりますね。

林先生)これが最も重要な指標だと思っています。

細川)そうですね。

林先生)このような情報は、年齢と妊娠率や流産率のことも含めて通院をはじめる前に共有されておくべき情報であると思っています。妊娠前から知っておかなければならない情報は葉酸や風疹のことなど一杯ありますね。


(3)プロセスこそ大切

細川)治療を開始するにあたっての事前説明、その後のプロセスの説明も徹底されていますね。

林先生)そもそも、望妊治療ではいくら頑張っても生産率はせいぜい3割くらいで、このことは日本産婦人科学会の全国集計データからも明らかです。

細川)生殖医療の宿命とも言えるところですね。

林先生)カップルと目標を共有して妊娠を目指しても、どうしても限界があります。妊娠出産は結果であり、私たちが提供できるのは安全で確実な医療的支援です。

細川)そうですね。

林先生)なので、私たち医療者は、ひとつ1つの治療プロセスを安全に確実に積み重ねていくしかなく、そのことを大切にするしかないと考えています。

細川)なるほど。きちんとしたプロセスで治療を進めることによって、より高い妊娠率を目指すということですね。

林先生)治療方針や治療の進め方など医療についてはもちろんのことですが、『予約制であっても待ち時間は発生しますよ』、『当院医師は同じ医療が提供できるような体制を確立しており、土日祝も分担して診療にあたっていますので医師の指名はお受け出来ませんよ』といったことから、『診察に際しては患者さんの名前を呼び出したり掲示したりせず、お持ちの端末機にマナーモードメールでお呼びしますよ』、『診療後の会計はその都度の支払いではなく、引き落とし支払いを可能にしてますよ』というようなことまで、最初にこられた時に書面をお渡して、納得了承いただければ夫婦の署名をいただくようにしています。

細川)事前に説明し、了解を得てからスタートすることは、納得のいく治療を受けるためのベースになるものだと思います。そのためか、お伺いする度に待合室が静かでゆったりしているという印象があります。

林先生)待ち時間を短くするためにできること、待ち時間と感じられないようにできないか、ずっと取り組んできた成果だと思います。まずは職員間で情報を共有し、組織知識として蓄積していますので、患者さんから質問やクレームがあった場合でも「院長に確認してみます」というようなことではなく、その場で直接職員が対応できるようにしていることもその一つです。このため毎年、職員は全員、望妊治療や組織知識の習熟度試験を受けています。

細川)なるほど。

林先生)診療にあったては、それぞれの患者さんの検査や治療の内容、結果、履歴など、治療についてのあらゆる情報やデータはすべて一元管理され、診療システムとして構築し、運用しています。

細川)この診療システムによってそれぞれのプロセスの情報が、職員間だけでなく、患者さんとの間でも共有化され、可視化されているのですね。

林先生)望妊治療の場合、1回の治療で妊娠出産できれば、それに越したことはありません。ただ、現実の妊娠率や生産率をみれば、やはり、何回か繰り返して、妊娠出産を目指すことが多くなります。

細川)はい。

林先生)その場合、患者さんが次の治療法を選択する際には、それまでの検査や治療の結果を分析し、治療方針を説明し患者カップルに選択していただく必要があります。情報共有があってこそ、カップルが自分たちで選択し、決定する環境が整うと思います。

細川)なるほど、それまでの治療経過がすべて時系列、かつ、一目で見られ、共有化できているからこそ、効率よく、確実に治療が進められるというわけですね。

林先生)転院されてこられた患者さんの場合は、以前の施設での検査データや治療結果もここに出てくるようになっています。

細川)それも共有化され、反映されているというのは安心ですね。

林先生)もちろん、ラボ(培養室)の記録も時系列など一元化入力されたデータをいろいろな見やすい形式にしたものが表示されます。岡山二人クリニックでは医師の指定はできないのですが、施設としての治療方針を共有していることは、もちろん、この診療システムで患者さんの個別情報を共有できているので同じ医療行為ができるのです。

細川)この診療システムのおかげで、個人ではなく、組織で対応できるようになっているということですね。


(4)チーム医療の実現

細川)林先生が中心になって構築してこられた診療支援システムは、他の生殖医療に携わるクリニックから見学にこられるだけでなく、導入を希望されるところには積極的に提供されていらっしゃいます。

林先生)生殖医療を的確にスムーズに提供するためには診療自体のシステムだけでなく、予約、呼出し、会計、情報提供など様々な診療支援システムが必要です。2013年に「日本生殖医療支援システム研究会」を立ち上げ、システム自体やその運用、またマンパワー養成などの情報交換を目的に毎年研究会を開催しています。

細川)日本を代表する生殖医療機関が参加されていますね。

林先生)より確実でスムーズな医療提供は、どの医療機関にとっても大きな目標ですね。いくらシステムを導入しても、実際には運用する職員がいて初めてよりよい医療の提供に役立つわけですから。

細川)はい。

林先生)生殖医療はチームで提供する、チーム医療です。職員、すなわち、チームのメンバーは患者情報を共有し、自院のプロトコールに則って医療提供を行う必要があります。これができなければ、説明する内容がそれぞれの場面で違ってしまい、患者さんを混乱させてしまい、責任をもっての医療提供が出来なくなってしまいます。

細川)同じ施設でもドクターによって言われることが違うので困ったという話はよく聞きます。

林先生)情報共有システムがあって、その中に共有化すべき情報が用意されていても、スタッフによって患者さんに伝えられる情報がバラバラであれば意味がありません。

細川)やりとりされる中で使用される情報こそが大切だと。

林先生)こうして情報提供したとしても、患者さんによっては理解度は異なります。

細川)そうですね。

林先生)患者さんに説明したり、質問や相談に答えたりする内容が職員によって異なれば医療機関としての医療提供にはなりませんね。追加・更新される組織の知識を、力量をもつ職員が使うことが大切。

細川)はい。

林先生)そのために、1年に1回、すべての職員、ドクターから受付のスタッフに至るまでを対象に筆記試験を実施しています。

細川)すべてのスタッフの方々が対象なのですか?

林先生)開院以来、毎年やっています。開院以来のベテランの看護師から今年入職した受付のスタッフまで全員です。知識として共有化できているか試験を行わなければ確認できないからです。

細川)驚きました。

林先生)治療方針や治療内容のことから、クリニックの運営上、組織として知っておくべきルールなども含めて、全部で200問です。これは知識が身についているか、使えるようになっているかの知識習熟度試験で、これとは別に100項目の自己・上長による技術評価や20項目の組織貢献度評価も行うようにしています。

細川)チーム全員が情報を共有し、正確な知識として患者さんに対応できてはじめて情報共有化システムが運用されたということになるということですね。


(5)信頼は情報の共有から

細川)林先生がこれだけ情報共有化にこだわって取り組んでこられた動機をお聞かせいただきたいです。

林先生)もちろん、根本的には「よりよい医療を提供するために何をすればよいか」ということなのですが、私自身、自分で責任を取れる生殖医療を提供したいと思っています。でも、自分が責任を取るためにはチーム医療ができてないといけない。責任がとれる医療チームで医療を提供したい、よい医療チームを創りたい。

細川)そうですね。

林先生)そもそも、このクリニックを立ち上げる前から、『信頼は情報の共有から』と考えていましたので、開院当初から『信頼は情報の共有から』というスローガンを掲げてきました。

細川)信頼関係を築くには、情報を共有することから始めなければならないということですね。そう言われれば、全くおっしゃる通りだと思います。

林先生)結局、チームで情報を共有しようというのは、『チーム間の信頼関係を築いていきましょう』ということであって、それが実現してはじめて患者さんにも安心してもらえる医療が提供できるようになると思うのですよ。

細川)なるほど。

林先生)また、よりよい医療とはなにかと考えた場合、先ほども言いましたが、望妊治療ではいくら頑張って治療しても成功率はせいぜい3割です。そのため、私自身、「うちのクリニックは高い妊娠率の医療を提供しますよ」というふうには言えなくて。そんなことは誰も保証できないわけですから。

細川)はい。

林先生)そのため、私たちは妊娠の成立そのものではなく、治療のそれぞれのプロセスを評価してもらいたいと思っているのです。

細川)妊娠成立そのものではなくプロセスを大切にしたいと。

林先生)それで、最近、アンケート調査の質問内容も変更しました。以前は「当院の医療に満足ですか?」とお聞きしていました。

細川)患者さんの満足度調査ということですね。

林先生)そうです。ところが、「満足いただけましたか」と聞くと、患者さんからは、やはり、「これで妊娠出産できたら満足なんですけどね」という言葉になってしまいます。

細川)なるほど。

林先生)私たちは「より自然でより早い妊娠成立」を治療方針に掲げていますし、患者さんの望みも妊娠出産することなのですが、患者さんに満足してもらおうとすると、どうしても限界があります。

細川)そうですね。

林先生)であれば、私たちは、『患者さんの満足度よりも信頼度を指標にしたほうがよいのではないか』と考えたわけです。

細川)満足度よりも信頼度を。

林先生)そうです。満足という言葉は医療においては使わない方がよいのではないかといだして、アンケートの質問の仕方も、「当院の提供する医療に信頼はおけますか?」、「こういう医療環境で待ち時間が発生していますが、私たちの取り組みに対して信頼はおけますか?」というふうに変えさせてもらいました。

細川)なるほど。患者さんに信頼される医療であるためには、スローガン通り、まずは、患者さんへきちんと情報を提供し、共有されて、初めて、可能になるということですね。そして、その結果として高い妊娠率を目指したいと。

林先生)そうです。情報の共有は私と患者さん、当院の職員と患者さんとの共有はもちろん、私と職員とのテーマでもあるでしょうし、職員間、組織間もあるでしょう。それぞれ、満足できる関係というよりも、信頼できる関係になれるかどうかということが大切だと思っています。

細川)満足できる関係よりも、信頼しあえる関係になろうと。

林先生)はい。そのための情報共有システムなのだと、そういう発想で20年間やってきたということです。

細川)よくわかりました。


(6)"卒院証"が意味すること

細川)林先生が中心になって取り組んでこられたシステム構築の真意について、私なりに理解できました。

林先生)現在では、スタッフも情報だけでなく、仕事に対する高いモチベーションも共有できるようになったと自負しています。

細川)はい。

林先生)妊娠率・生産率から逃げているわけではなくて、やはり、高い妊娠率を目指すには、そこに結びつくプロセスを大切にしようということです。

細川)高い妊娠率はきちんとしたプロセスがあればこそだと。

林先生)妊娠して卒院される患者さんもいれば、妊娠できないままに通院をやめられる患者さんもいます。私たちは、そういう人たちにも"卒院証"をお渡ししています。

細川)"卒院証"ですか?

林先生)はい。患者さんはそれまで望妊治療を頑張って続けてこられた。たとえ、妊娠出産という結果が出なかったとしても、なんていうか、それは、「負け」や「失敗」といったものではないし、ましてや、無駄な時間や経験だったわけでもないと思うのです。

細川)はい。

林先生)そうではなく、お互いに同じ目標をもって頑張ってきた、それまでの患者さんの努力に対しての敬意、そして、私たちの医療が残念ながら成果に結びつかなくて申し訳ないという気持ちとして、"卒院証"をお渡ししています。

細川)あー、なるほど。

林先生)もちろん、養子縁組や卵子提供といった考えもありますよといった情報提供もしてはいますが、やっぱり、治療はもうここで区切りをつけたいと思いますと言っていただける関係はとても大切だと思うのです。

細川)もしかしたら、"卒院証"によって患者カップルも次のステップに目をむけやすくなりますよね。

林先生)職員にとっても患者さんに妊娠出産してもらいたいという思いで、医療を提供してきたわけですから、区切りをつけることは同じように大切なことだと思います。そのため、"卒院証"という形にしてあらわそうということなのです。

細川)患者さんにとっても、スタッフの方々にとっても意味のあるものになるわけですね。

林先生)私はそれも「私たちが提供した医療に対しての信頼」の一つの表現だと思っているのです。もちろん、患者さんにとっては満足ということにはならないと思います。ただ、そういった医療提供でありたいと、私は思っています。

細川)満足よりも信頼、ですね。

林先生)情報共有化システムや診療支援システムというのは信頼いただける医療を提供するためのものであって、それは運用されてはじめて意味があるし、そして、それはその時々で常に変わっていくものであって、導入したらそれでお終いというわけではないのですね。

細川)いろいろと貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。


---[林伸旨先生プロフィール]----------------------------

岡山二人クリニック理事長。医学博士、産婦人科専門医、生殖医療専門医、生殖医療学会功労会員。
岡山大学医学部卒業、岡山大学病院や岡山中央病院などを経て、1996年5月に岡山二人クリニックを開院。現在、JISART副理事長、岡山大学医学部保健学科非常勤講師、岡山県立大学非常勤講師、青少年健全育成促進アドバイザー、学校保健支援チーム、学校保健支援チーム専門家、未来のパパママを育てる出前講座講師。

■リンク
*岡山二人クリニック
http://www.futari.or.jp/
--------------------------------------------------------------------
記事についての感想やご意見は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


当社製品&サービス________________________________________________

・サプリメント:BABY&ME~新しい命のための環境づくり
 http://babyandme.jp/

・翻訳書:妊娠しやすい食生活
 http://www.akanbou.com/shoku/

・妊娠しやすいカラダづくり BOOK GUIDE
http://www.akanbou.com/bookguide/


編集後記____________________________________________________________

普通は、呼吸していることは、忘れているというか、意識していません。ですから、あまり気がつきにくいのですが、ストレスあったり、不安や心配なことがあると、自然に呼吸は、浅く、短いものになってしまうのだそうです。

そんな状態が続くと、自律神経の働きが弱まってしまい、ストレスによる身体の不調を招きやすくなってしまいます。

ですから、普段から、ことあるごとに、深く、長い、呼吸を意識してみることが大切なのかもしれません。

一回の呼吸が、少しでも、深くなって、たった5%多く、空気を取り込むようになれば、どうでしょう?なんと!1日あたり、牛乳パックで500個分の空気を多く取り込むことになるのだそうです。

私たちは、たとえ、寝ているときでも、呼吸し続けてます。ですから、呼吸の質を、ほんの少しでも高めるだけ、そのことによる効用は、長く、続ければ続けるほど、大きくなるわけです。

まさに、ちりもつもれば山となる、です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.676
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お子さんを望まれるカップルの"選択"や"意志決定"をサポートします
--------------------------------------------------------------------
不妊に悩むカップルが、悩みを克服するために、二人で話し合い、考えを整理して、自分たちに最適な答えを出すためのヒントになるような情報を、出来る限り客観的な視点で、お届けしています。
--------------------------------------------------------------------
発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎発行部数
・自社配信: 1,844部
・まぐまぐ: 3,700部
・合計部数: 5,544部(5月29日現在)
--------------------------------------------------------------------
◎免責事項について
当メールマガジンの提供する情報は医師の治療の代わりになるものでは決してありません。プログラムの実行は各人の責任の元で行って下さい。プログラムの実行に伴う結果に関しては、当社の責任の範囲外とさせて頂きます。
--------------------------------------------------------------------
◎注意事項
読者の皆さんから寄せられたメールは、事前の告知なく掲載させていただく場合がございます。匿名などのご希望があれば、明記してください。また、掲載を望まれない場合も、その旨、明記願います。メールに記載された内容の掲載によって生じる、いかる事態、また何人に対しても一切責任を負いませんのでご了承ください。
--------------------------------------------------------------------
◎著作権について
当メールマガジンの内容に関する著作権は株式会社パートナーズに帰属します。一切の無断転載はご遠慮下さい。