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VOL.526 ヨーロッパ生殖医学会ハイライト(前半)

2013年07月14日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.526 2013/7/14
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今週の内容__________________________________________________________

・更新情報
・今月のトピックス:ヨーロッパ生殖医学会から(前半)
・編集後記


トピックス Jul.2013_________________________________________________

 ヨーロッパ生殖医学会から(前半)
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去る7月7日(日)から10日(水)まで、2013年のヨーロッパ生殖医
学会がロンドンで開催されました。学術集会では生殖医療の研究や臨床に携
わる世界中のドクターが、日頃の成果を発表される機会です。

今年は開催直前に、イギリス政府がミトコンドリア病が子どもに遺伝するの
を避けるために、ミトコンドリア置換法を使った体外受精が実用化されるの
に必要な生殖医療を監督する機関のゴーサインが出たため、そのことが話題
になっているようです。

このことを少し取り上げてみます。

ミトコンドリア置換法は、障害のあるミトコンドリアがある女性の卵子から
遺伝情報が格納されている核を抜き出し、予め、核を抜き出した健康な女性
から提供された卵子に移植し、体外受精を実施し、妊娠を目指す方法です。

簡単に言えば、健康な女性の卵細胞の核をミトコンドリア病の女性の核に入
れ替えることで、健康な女性の細胞質をもらうことになるのです。

実は、このような治療は、高齢女性の卵子の若返り法として注目された時期
がありました。

卵子の質を決定するのはミトコンドリアを含む細胞質なので、たとえば、顕
微授精に際にパートナーの男性の精子と一緒に、若い女性の細胞質を注入し
ても、卵細胞が若返り、妊娠に至る確率が高くなるわけです。

ところが、この方法で生まれたお子さんには、両親のDNAに加えて、卵子
の細胞質を提供してもらった女性のミトコンドリアDNAを引き継ぐことに
なり、3人の遺伝情報を受け継ぐことになるという理由で禁止されました。

今回のイギリスの政府機関の決定は、3人の遺伝情報を受け継ぐことのデメ
リットよりも、メリットのほうが大きく、倫理的にも問題ないだろうという
見解によるもののようですが、反対する意見もあるようです。

昨年来、日本でも卵子の老化がマスコミで盛んに取り上げられるようになり、
卵子提供が、ようやく、クローズアップされるようになってきましたが、既
に、一部の国を除き、欧米では一般的です。

このミトコンドリア置換、注入法も、最初はミトコンドリア病の遺伝を防ぐ
目的に限定されていても、安全であることがわかり始めると、卵子の若返り
法として一般的になる可能性がないとは言えません。

卵子の老化に対する治療法や選択肢が、これから、どんどん、増えてくるこ
とになると、自分たちにとって「最良」はどれなのか、ますます、悩んだり、
考えたりすることが増え、選択を迫られるようになるのかもしれません。

見方を変えると、これからは、あきらめることが、今よりも、もっと、難し
くなっていくわけで、大切なのは、自分たちはどうしたいのかを、二人で考
え、結論を出し、実行する、そんな「夫婦力」なのではないか、そう思えて
なりません。

前置きが大変長くなってしまいました。2013年のヨーロッパ生殖医学会
で発表された研究報告の中で、皆さんに参考にしてもらえそうなものをピッ
クアップして、今週と来週の2回にわたってご紹介します。


▼BMIと子宮内で胚の着床を受け入れる力
卵子提供を受けたレシピエントのBMIと9587周期の治療成績との関係

高齢による卵子の老化を解決する方法の一つに「卵子提供」があります。若
い女性から卵子の提供を受け、パートナーズの精子と体外受精させ、自らの
子宮に胚移植する方法です。たとえ、自分とは遺伝的なつながりはなくとも、
「お腹を痛めた子ども」です。

卵子を提供してもらった女性(ドナー)の年齢なりの妊娠率が得られるとさ
れていますが、卵子提供を受ける女性(レシピエント)の子宮内で胚を受け
入れる力に左右されるとの研究結果です。

スペインの3つのクリニックで実施された卵子提供による体外受精9587
周期の治療成績とレシピエントのBMIとの関連を調べたとのことです。

ドナーのBMIはすべて標準でしたが、レシピエントのBMIは、20未満
(やせ)が1458人(15.2%)、20~25未満(普通)が5706人
(59.0%)25~30未満(肥満度1)が1770人(18,5%)そして、
30以上(肥満度2)が653人(6.8%)でした。

BMI別の着床率は、やせのグループが40.4%、普通では39.9%、
肥満度1では38.5%、肥満度2で30.9%でした。出産率も同じ順に
並べると、38.6%、37.9%、34.9%、27.7%と、BMIが
大きくなるに伴い、成績がはっきりと低下していく傾向がみられます。

そして、肥満度2のレシピエントは普通のレシピエントに比べて卵子提供を
受けて子どもを出産する確率は27%低かったとのことです。

肥満の女性は妊娠しづらくなるということはよく知られていますが、今回の
研究報告は、肥満が妊娠の確率を低くするメカニズムにはいくつものパター
ンがあることを教えてくれています。

たとえば、卵巣の機能を低下させる、卵子の質を低下させる、そして、子宮
内の胚の着床を受け入れる能力を低下させるなどです。

そして、そのような影響を及ぼすようになるルートもさまざまあるようです。

たとえば、最近の研究で注目されているのは、アディポサイトカインという、
脂肪細胞から分泌されるさまざまな生理活性物質の中に悪さを働くものがあ
る、インスリンの効き目が悪くなる、ビタミンD不足が代謝障害を招いてい
る、そして、これらの複合的な影響で、生殖能力を低下させているというも
のです。

その結果、たとえ、若い女性から質のよい卵子の提供を受けても、健康なお
子さんを授かれる確率に差が出てきてしまうというわけです。

代謝障害は肥満でも、標準的な体重でも、起こり得ることです。

つまりは、自分の卵子で自然妊娠を目指したり、体外受精や顕微授精で妊娠
を目指したりする場合でも、残念ながら、卵子を若返らせることは出来ませ
んが、ベーシックな健康状態を高めることで妊娠に近づく余地があるという
ことを教えてくれているということです。

そのために取り組むべきは、あたりまえな健康を取り戻すことに尽きます。

具体的にはバランスのよい食生活を徹底!すること、身体を動かす!こと、
そして、規則正しい生活リズムで質のよい睡眠!をとり、十分に休息するこ
と、さらに、人や状況によっては、微量栄養素を質のよいサプリメントで補
充することです。

年齢が高くなれば、なるほど、特別なこと、特殊なことではなく、より、当
たり前なこと、より、ベーシックなことを、しっかり取り組むことの重要性
が、若い頃に比べて、ますます、高くなるということのようです。   


▼女性の勤務シフトと妊娠する力
女性の勤務シフトは生殖能力に影響を及ぼすのか?:メタアナリシス

通用の勤務シフト、たとえば、9時にはじまり17時に終わるというような
パターン以外で、夜に働いたり、夜勤を含めたシフトチェンジがあるような
勤務シフトが女性の妊娠しやすさに影響を及ぼすのか、イギリスのサウザン
プトン大学の研究者らが1969年から2013年までに発表された論文の
データ(対象とした女性総数は119345名)を解析しました。

夜間に勤務し、シフトチェンジがある女性は、昼間に勤務する女性に比べて、
月経障害のリスクが33%高く、妊娠するまでに時間がかかってしまうリス
クが80%高いことがわかりました。

また、夜勤があってシフトチェンジがない女性は、不妊症のリスクに違いは
みられませんでしたが、流産のリスクが29%高いことがわかりました。

研究者は、勤務シフトと月経障害や不妊症、流産のリスクの相関を調べただ
けなので、因果関係やそのメカニズムまでは不明だとしています。

ただし、勤務シフトが原因で睡眠障害を招いたり、身体に備わっているリズ
ムが混乱することが生殖能力に影響を及ぼしているのではないかと考えられ
るとしています。

睡眠中に成長ホルモンをはじめとするホルモンが分泌され、細胞の修復や保
護に働いていることを考えると、睡眠の質を高めることは妊娠する力や育む
力を低下させないためにはとても大切なことに違いありません。

しっかり休息をとることの重要性を教えてくれるものです。


▼ファーストフードと男性の精子をつくる働き
ファーストフードは糖尿病の前段階状態を招き、精巣の機能を低下させる

昨年末にこの20年弱で男性の精子数が約30%少なくなっているとのフラ
ンスの研究報告がありました。それ以外にも男性の精子をつくる働きは低下
傾向にあるとの報告はいくつもなされています。

果たして、それは本当に起こっていることなのか、また、起こっているとす
ればなにが原因なのかについては、専門家のよっていろいろな意見があるよ
うですが、食生活の大きな変化も指摘されています。

ポルトガルの大学の研究者らは、ラットを使った試験で、食事内容が糖の代
謝や精液の質にどのように影響を及ぼすのかを調べました。

ラットを2つのグループに分け、一方(6匹)には通常の餌を与え、もう一
方のグループ(6匹)にはファーストフード(高カロリー低栄養)の餌を与
えました。1ヶ月後、解剖し、糖の代謝と精液の質を調べました。

その結果、ファーストフードを食べたラットは高血糖で、耐糖能障害、低イ
ンスリン血症がみられました。精巣内と血中の男性ホルモンのバランスが悪
く、精液中の奇形精子の割合が増加しました。

まさに、動物実験でファーストフードを食べ続ければ、高血糖、糖の代謝障
害を招き、糖尿病の一歩手前になり、精巣の働きが低下してしまうことを確
かめています。

質の悪い食生活で5大栄養素のバランスが崩れ、糖を体内で変換する力が低
下し、だぶついた糖が悪さを働き、生殖能力が低下するのは、男性でも、女
性でも、同じようです。

男性も、バランスのよい食生活を徹底することで、質のよい精子を育む力を
取り戻すことは可能です。

*今週はここまでです。次号で後半をお送りします。

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編集後記____________________________________________________________

『男を維持する「精子力」』、たくさんの方から予約をいただきありがとう
ございました。予約いただいた皆さんには、昨日、クロネコヤマトのメール
便にて発送完了致しました。

今週はヨーロッパ生殖医学会のダイジェストの前半をお送りしました。来週
は後半をお送りしますが、テーマは「男性の生殖力を脅かすライフスタイル」
です。

それにしても、つくづく、当たり前に食べること、動くこと、休むことの大
切さを痛感しました。

結局は、ベーシックな身体の状態が新しい命を育む力を支えているというか、
そのもの、ということですね。

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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.526
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