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VOL.498 育む力、つむぐ力を養いたい

2012年12月30日

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 妊娠しやすいカラダづくり No.498 2012/12/30
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今週の内容__________________________________________________________

・2013年に向けて 育む力、つむぐ力を養いたい 
・マイライフストーリー 第九回 失意の帰国
・編集後記

2013年に向けて Dec.2012_________________________________________
 
育む力、つむぐ力を養いたい
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2012年最後の配信となりました。2012年は京都大学の山中伸弥教授
のノーベル賞受賞で、iPS細胞や再生医療への世間の関心が高まった年でし
た。

生殖医療への応用としては、昨年、日本でもiPS細胞から卵子や精子をつく
る研究に着手するとの報道があったと思っていたら、マウスの精子をつくる
ことに成功、そして、今年、京大大学院の研究チームが、マウスのiPS細胞
で卵子をつくって、体外受精し、子マウスの妊娠、出産に成功したとのこと。

そんな感じで、あれよあれよという間に、不妊治療の次のブレークスルーが
現実のものになるのかなという予感を抱いた年でもありました。

もしも、ヒトでもiPS細胞で卵子や精子を作製できるようになれば、「卵子
の老化」、そして、精子がつくられていない、精子をつくる働きが途中で止
まっているという大きな壁をクリアしてしまえるからです。

もちろん、技術面だけでなく、倫理的な問題も解決する必要があるでしょう
から、実用化には、まだまだ、時間がかかるのでしょうが、少なくとも、理
論的には可能になったというわけです。

ただし、iPS細胞から精子や卵子をつくったと報道されてはいますが、いき
なり、成熟した、すなわち、受精能力のある精子や卵子がつくられたという
わけではありません。

雌マウスの細胞からつくったiPS細胞から卵子や精子の元になる細胞を「試
験管内」でつくり、その後、別の雌マウスの胎児の体細胞と一緒にして培養
し、卵巣に似た組織を体外で作った上で、雌マウスの卵巣に移植し、卵子を
育てたとのこと。一方、精子のほうは精子の元の細胞をそのまま精巣に移植
し、精子を育てています。

iPS細胞から卵子や精子になる細胞を「つくった」後は、卵巣や精子という
「成育環境」が受精能力のある卵子や精子にまで「育てた」わけです。

つまり、自分の卵巣や精巣内の卵子や精子であろうと、提供された卵子や精
子であろうと、iPS細胞から得た卵子や精子であろうと、母親になる女性の
卵巣や父親になる男性の精巣という「成育環境」が不可欠なわけです。

いくら、「補助」生殖医療や「再生」生殖医療が進歩しても、健康な赤ちゃ
んを授かるには、成育環境が整っていないと新しい命は育まれない、「育む
力」がなによりも大切なのだという事実を、改めて、認識しました。

また、今年は、妊娠(受精)前からの母親になる女性の体内の栄養環境の大
切さも、また、改めて認識した年でもありました。

妊娠前と妊娠中の母親の栄養状態が、赤ちゃんの胎内の発育状態だけでなく、
生まれてからの心身の健康、さらには、成人後の体質まで決めるのです。そ
して、その影響が受精時に近くなるほど、その次の世代(孫)にまで、影響
が及ぶというのです。

このメルマガでも紹介した「成人病(生活習慣病)胎児期発症説」です。

そして、2012年6月に日本DOHaD研究会がスタートしました。

私たちは、子づくりと子育ては、同時に始まっているのだということを痛感
しました。

2013年のテーマは「育む力、つむぐ力を養う」ことです。

すこやかな新しい命のために、まずは、自分たちの生活や健康を見つめ直し、
日々の生活を大切に過ごしたい、そんな思いを込めています。

今年も1年、妊カラにおつきあいいただきまして、ありがとうございました。
皆さんにとって来年もすばらしい年になりますよう、スタッフ一同お祈りし
ています。

よいお年をお迎えください。

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マイライフストーリー________________________________________________

マイライフストーリとは、私たちとご縁のあった方々に、赤ちゃん待ち期間
をどんなふうに過ごしたのかについて語っていただく、それぞれの物語です。

はんなさんのライフストーリーの九回目です。


第九回 失意の帰国__________________________________________________

こんにちは、はんなです。

前回お話ししましたとおり、私は腹痛に耐えかね、アメリカの地元の病院で
チョコレート嚢胞の摘出手術を受けました。

生まれて初めての手術で、穴をあけた(腹腔鏡での手術なので開腹などはあ
りませんでした)あとのお腹の絆創膏がなんだか不思議です。

最初はお手洗いもお風呂もおっかなびっくりでしたが、ドクターの言うとお
り運動以外の大抵のことは普通にできました。術後数日で買い物も行けるし、
料理も作れるし、PCもできるし、仕事すら再開できました。

こうして私は日常に戻っていったのです。


悪いところは取ってしまったので、来月からまた人工授精を始めてみましょ
うか、とドクターLが我々に提案しました。

ただし、もう回数を重ねてきているので、同時にステップアップ(体外受精)
を考えてもよい時期かもしれませんと。体外受精、IVFについてその有用
性と安全についても説明がありました。

確かに手術の腕はとても良かったように思いましたが、体外受精まで外国で
やることに私はまだ少し抵抗がありました。

こうして再び悩みながら、私たちは次の人工授精の準備に再びとりかかりま
した。

以前クロミッドで強い副作用が出たので、このときは代わりにOvidrelと
Follistim という皮下注射を腹部にしていました。ダイヤルで薬の量を調節
する注射器で、排卵チェッカーと採血でホルモンの状態を調べて、その結果
を踏まえ医師から薬量を指示されます。最初の一回こそ緊張しましたが、何
事も慣れるものです。そのうち怖いと思うこともなくなりました。

こうして術後最初の人工授精の日を迎えました。

郊外にあるIVFセンターは閑静な公園のような場所にあり、パッと見、そ
れが病院とは誰も思わなかったでしょう。

6回目ともなると慣れたもので、取り違えを防ぐための精子の名前確認に始
まり、採血、その後いつも通り靴のまま台に上ります。

技師が精子を注入する瞬間、いつもと違う、鋭い痛みを感じました。

彼女にそれを訴えましたが、大丈夫大丈夫、ほらもう終わったでしょ、と言
われ、彼女は部屋を出て行きました。痛みはしばらく続き、家に戻ってもま
だそのままです。

翌日、やはりおかしいと思い、病院にクレームし、内診してもらいましたが、
子宮、卵巣、共に傷などは見当たらず、様子をみましょうということで落ち
着きました。

おかしいところがないと言われると、もしかすると自分が痛みに弱いのかも
と思い、それ以上強くも言えませんでした。


そのサイクルも結局成功せず、私も夫もすっかり諦めモードになりました。
私はいよいよ体外受精か、と思い、夫はおそらく逆に自然妊娠をもっと目指
すべきだと思っていたようです。性別の違い、性格の違いでしょうか。

そんなときです。夫に帰国の辞令が下ったのは。

2か月後に東京へ戻ることが決まり、我が家は急に慌ただしくなりました。

勿論治療どころではありません。

外国生活で膨れ上がった荷物の整理、引越し手続き、会社の退職、各所への
あいさつ、最後の旅行などなど、毎日が飛ぶように過ぎていきました。

実はその間も(そして今もなお)、人工授精時の痛みが続いていました。こ
れについては別の回で触れます。


6年間のアメリカ生活に終わりをつげ、2010年10月、我々は帰国の途につき
ました。

度々、一時的に帰国していたものの、久しぶりに歩く東京は少しずつ変わっ
ていて、テレビをつければ知らないタレントさんやアイドルが沢山。

不思議な新鮮さがありました。

親戚や友人にも、結婚したり新しく赤ちゃんができたり、と変化が起きてい
ました。

勿論喜ばしいことのはずなのに、久々に会う友人から妊娠の報告があったり、
赤ちゃんを紹介されたりすると、おめでとうと言いながらも心の中に少しだ
け、置いていかれたような寂しい気持ちが起きるのを止められませんでした。

それどころか、芸能人のおめでた報道にすら妬ましく思い、そんな自分に次
第に嫌気がさしてきました。

かと言って、そんなことをしている自分を否定したところで、気持ちの行き
場がありません。

考え出すと良くないことはこれまでの経験で分かっていましたし、ここはや
はり、忙しくして余計なことを考える時間を減らせばよいだろう。そう思い、
新たに、某店の受付のアルバイトと、地元に住んでいる外国人の生活をフォ
ローするボランティアを始めました。

生活が再び忙しいものになりつつありました。

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編集後記____________________________________________________________

今年も1年、妊カラにおつきあいいただきまして、ありがとうございました。
皆さんにとって来年もすばらしい年になりますよう、スタッフ一同お祈りし
ています。

よいお年をお迎えください。

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