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VOL.412 他人事ではない新型栄養失調

2011年05月08日

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 妊娠しやすいカラダづくり 第412号 2011年5月8日発行

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お子さんを望まれるカップルを応援します。

なかなかお子さんが授からないことに悩むカップルが、
悩みを克服するために、"二人で話し合い、考えを整理"して、
"自分たちにふさわしい答えを出す"上でのヒントになるような情報を、
出来る限り客観的な視点で、毎週末、登録頂いた皆さんに配信しています。


━[今週の内容]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼今月の特集
他人事でない現代型栄養失調 ~問題は現代社会に特有の食をとりまく環境

▼妊カラ編集室から

▼編集後記


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 今 月 の 特 集
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 問題は現代社会に特有の食をとりまく環境
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409号の「よい卵子をつくるには?」は、私たちの身体が生命力の強い受
精卵を育むためには、新鮮な食材をバランスよく食べること、よく身体を動
かすこと、ストレスをうまくマネージメントするという、極々、当たり前な
ことが最も大切だというお話しでした。
http://archive.mag2.com/0000116311/20110417150000000.html

その中でも、基本中の基本は「食べること」です。

卵を育てるように促すホルモンも、卵そのものの材料であるたんぱく質や脂
質も、そして、成熟卵をつくる職人である酵素も、職人が使う道具である補
酵素も、さらには、成熟卵をつくるためのエネルギーの燃料になる炭水化物
やそれをつくる補酵素も、すべて、5大栄養素のどれかで、毎日の食事から
取り入れているからです。

もしも、朝、昼、晩の食事をちゃんと食べなくて、それらのうち1つでも足
りなくなると、いい卵をつくることが難しくなってしまいます。

だから、ちゃんと食べることが一番大切だというわけです。

ところがです。

たとえ、バランスに気をつかって食べていても、それでも、不足してしまう
ビタミンやミネラルが出てきかねないというのです。


★食事でかかる新型栄養失調

この豊かな日本で栄養失調なんてあり得ない!と思われるでしょう。当然だ
と思います。

ところが、現実というのは、私たちが知らないところで、私たちが想像して
いる以上に早く進行するもののようです。

NPO法人「食品と暮らしの安全基金」は「食事でかかる新型栄養失調」と
いう本を昨年暮れに出版しています。

その本で、厚生労働省の「食事バランスガイド」の通りの食事をしていても、
健康を維持するのに十分な栄養素が摂れるとは限らないことを、実際に検証
し、その実態を明らかにしているのです。

本を読むだけでも、「うわー、大変なことになっているな」と驚いていたの
ですが、このゴールデンウィークの初日に、著者の講演を聞く機会がありま
した。

それからは、「妊カラの読者の皆さんにも知っておいてもらわなければ!」
と思い、この記事を書くに至ったと。そういうわけです。


★セブンイレブンだけで1日食べたら・・・

根拠のない不安を煽りたて、本を売って稼ごうとする輩がごまんといること
は、私たちもよくよく知っています。

ところが、NPO法人「食品と暮らしの安全基金」は、実際に、コンビニや
スーパーでお弁当や冷凍食品を購入して、食品衛生協会検査センターに持ち
込み、どれくらいのミネラルが含まれているのか、検査を依頼しています。

コンビニでは、セブンイレブン、ローソン、ファミマ、サンクスで、持ち帰
り弁当では、かまどや、ほっともっと、オリジンで、宅配弁当や冷凍食品で
は、ガスト、ワタミ、ニチレイ、イオンで、ファーストフードでは、マクド
ナルド、すき家、松屋、吉野家で、回転寿司では、かっぱ寿司、くら寿司、
スシロー、すし銚子丸で、さらには、最後には厚生労働省の職員食堂の定食
まで、普段、私たちになじみ深い外食や中食などを調べあげています。

因みに、中食とは調理された食品を購入して持ち帰り、家で食べることです。

その結果は驚くべき内容です。

もしも、それらで1日の食事を済ますと、カルシウムやマグネシウム、鉄、
亜鉛、銅といった主要ミネラルが、厚生労働省の2010年版日本人の食事
摂取基準の「推定平均必要量」を、到底、満たせないというのです。

そのうえ、基準としている「推定平均必要量」とは、「これだけ摂取したら
健康に障害を生じない」という必要量ではないのです。

そうではなくて、その半分の量で、この量だけで1ヶ月過ごすと、半分の人
が健康に障害が出る量です。

つまり、摂るべき必要量の半分でさえ、満たしていないのです。

たとえば、朝食はバタースコッチ、昼食に幕の内弁当、夕食に高菜唐揚弁当
と、セブンイレブンだけで1日食べたらどうでしょう。

なんと、カルシウムは推定平均必要量の23%、マグネシウムは47%、鉄
に至っては21%、亜鉛では64%、銅では45%しか摂れないとのこと。

推定平均必要量は20代女性のもので、妊娠を意識する女性では、鉄でその
2倍の量と、もっともっと、多い量が必要になるのは言うまでもありません。


★現代社会に特有の食をとりまく環境

繰り返し強調しておきますが、例に挙げたような"貧弱な内容"ではなく、
厚労省の食事バランスの通りの内容でも、外食や中食では、「推定平均必要
量」を、到底、満たしていないのです。

そもそも、加工食品や冷凍食品には、厚労省が"食材に含まれているであろ
うと考える栄養素の量が含まれていない"ということです。

つまり、問題は"食べ方"ではなく、"現代社会に特有の食をとりまく環境"
なのです。

なぜこのような事態を招いてしまったのでしょうか?

▼製造過程で栄養素が失われている

商品を、低いコストで、効率よく、そして、安全につくることを追求した結
果、肝心の栄養素が失われることになってしまったようです。

たとえば、中国やベトナムで安く食材を調達し、安い人件費でカットし、水
煮を繰り返し、食品添加物を入れ、パックして冷凍しる過程で、そして、冷
凍食品では、徹底した水洗いをし、下ゆでする過程で、また、揚げ物は純度
の高い精製された植物油で揚げる過程で、相当な栄養素が失われるとのこと。

おまけに、リン酸塩というポピュラーな食品添加物は、ミネラルと結合する
ことによって、ミネラルの体内への吸収を阻害すると言いますから、ダブル
パンチです。

▼食材そのものに含まれる栄養素が減っている

全ての食材を海外から調達しているわけではありません。ところが、国内産
は、国内産で、今度は、野菜や果物に含まれる栄養素の量が、年々、減って
います。

文部科学省の「日本食品標準成分表」をみてみると、激減しています。

たとえば、ニンジン100グラムあたりに含まれるビタミンAは、1950年に
は13500IUだったのが、1982年には4100IUに、2005年には2590IUへと、
55年で80%も減っています。

ほうれん草100グラムあたりに含まれる鉄は、1950年には13mgだったのが、
1982年には3.7mg、2005年には2.0mgへと、55年で85%の減少です。


★一方、国の見解はと言うと・・・

それでは、国は国民の栄養素摂取の状況をどうとらえて、どのような情報発
信をしているのでしょうか?

厚労省の「平成20年国民健康・栄養調査」の30代女性のビタミンやミネ
ラルの平均摂取量と、同じく厚労省の「日本人の食事摂取基準・2010年
版」の妊婦の1日のビタミンやミネラルの推奨摂取量を見比べてみましょう。

その結果、ビタミンB6の30代女性の平均摂取量は、妊婦の推奨摂取量の
85%、同様に、葉酸では52%、カルシウムでは69%、マグネシウムで
は63%、亜鉛では66%、そして、鉄に至っては35%です。

そして、妊娠前から葉酸のサプリメント摂取を推奨したり、カルシウムやマ
グネシウム、鉄は不足しがちで、かつ、妊婦には必要量が増えるので意識し
て摂るように勧めています。


★自分で自分の身を守るということ

いかがでしょうか?

厚労省は、決して、ビタミンやミネラルが十分に摂れているとはみていませ
んし、不足しがちな栄養素があることを指摘していますし、妊娠前には葉酸
のサプリメント摂取を推奨しています。

ただし、あくまで平均的な指標をベースにしており、そもそも、調査データ
がどれだけ実態を反映しているのか、定かではない面があることを指摘する
専門家も少なくありません。

要するに、誰かが決めたことを盲目的に守っていればそれでよし!という世
界はないということでしょう。

自分で必要な情報を収集し、知識を身に付け、そして、自分で考え、判断す
ることが絶対に必要だということでしょう。

野菜や果物に含まれている栄養素の量が減っているといっても、輸入ものや
ハウスものと、旬で、近場で露地栽培のものとでは相当違うはずです。

食材を厳選し、自ら調理することで、守れるものは大きいと思います。

また、栄養素が不足しているからと言って、サプリメントで補充しさえすれ
ば、それでよいというわけでもありません。

なぜなら、サプリメントも加工食品であり、品質の問題や相互作用の問題も
あるからです。

食は生活や嗜好に密着しています。人それぞれ、年齢や体質もあります。

良質な情報に接し、自分で考え、判断し、自分たちにとってベストな方法を
実行すること、これに尽きると思います。


★赤ちゃん待ち期間が長いほうが有利かもしれない

子どもの心身の健康は母親になる女性や父親になる男性の、妊娠前の栄養状
態の影響を強く受けることが、最近の研究で次第に明らかになってきました。

そして、それは生まれた直後だけでなく、成人後の生活習慣病のリスクにま
で影響が及ぶこともわかってきました。

考えてみれば、"できちゃった"とか、"予期せぬ"妊娠よりも、いろいろ
なことを"予期して"、"準備して"、迎えられるほうが、いろいろな意味
で有利なことが多いのかもしれません。

つまり、赤ちゃん待ちの期間が長いということは、決して、辛いことばかり
ではないと言えるわけです。

ある意味で、大変な時代なのです。

ただし、ある意味で、いろいろなやりようがある時代であり、また、そのこ
とが大きな差になる時代であるように思えてなりません。


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記事についてのご質問は下記のアドレス宛お寄せ下さい。
info@akanbou.com


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 妊 カ ラ 編 集 室 か ら
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私たちはお子さんを望まれるカップルを応援しています。

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ツイッターからもさまざまな情報を発信しています。サイトに紹介するほど
でもない研究報告やトピックなども紹介しています。よければフォローくだ
さい。また、皆さんの声もお聞かせいただければ嬉しいです。

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http://twitter.com/ninkara


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 編 集 後 記
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焼き肉チェーン店の食中毒事件が盛んに報道されています。

ニュースをみる度に、たくさんの方が本当にお気の毒な目に合われたと悔や
まれる一方で、私たちは、消費者として、見る目や怪しいものを判別する直
感的なセンサーをもつことが大切なのではと、痛感しています。

それも、自分たちの身を自分たちで守るためには、大切な要素だと言えるか
もしれません。

志の高い生産者や販売者、レストランと長くお付き合いし、信頼関係をつむ
ぐことは、楽しみでもあり、また、大切なことでもあるなと、つくづく、思
います。


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妊娠しやすいカラダづくり[毎週末発行] VOL.412
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発 行:株式会社パートナーズ
編 集:細川忠宏(日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー)
サイト:http://www.akanbou.com
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・まぐまぐ:5,133部
・合計部数:5,334部(5月8日現在)
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