曇り時々雨、のち晴れますように

小倉 智子

不妊カウンセリングの実際➂ 終結

2015年08月15日

みなさま、
こんにちは。
心理士の小倉です。
8月も後半に入りましたね。
この時期、帰省など、
いろいろイベントがあるかと思います。
気持ちが揺れ動くこともあるかと思いますが、
体調面にもどうぞ気を付けてください。

さて今回は
カウンセリングの終結について
書いてみます。
カウンセリングは1回でひとまず
落ち着くこともありますし、
治療の周期に合わせて3~5回、
あるいは治療以外にも悩みがある場合は
数年にわたって行っています。

カウンセリングの期間が長い場合、
「終結」という言葉で、
カウンセリングを終えます。

今回は5年ほどカウンセリングを続けられた方の
最後のやりとりを紹介したいと思います。

この方は男性不妊が原因で
お子さんを授かることはありませんでした。
カウンセリングは治療中→治療終結→終結後の人生
という流れでした。
パートで働いていましたが、
治療終結によって仕事の時間がとれるようになり、
それにともなって業績があがり、
周りから認められ、
重要なポストに立つことになって、
カウンセリングの内容も
ほとんど仕事か、
職場の人間関係となったため、
私のほうから
カウンセリングの終結を提案し、
それに向けて数回カウンセリングを行って
いよいよ最後の回を迎えた時です。

カウンセラー(以下カ):ではAさんにとって今は仕事が中心の生活なのですね?
Aさん(以下A):はい。今のポジションはすごく大変ですが、
任せてもらえている、と感じられて、自信が少しですけど、
もてるようになりました。
カ:自信がもてるようになったんですね?
A:はい。治療中は何もかも自信がなくって・・・
カ:今はまだ少しの自信かもしれませんが、
少しずつ、育つといいですね。
そんな風にイメージできますか?
A:そうですね。毎日がバタバタですけど、
やっていけそうな気がします・・・
ただ一つ、周りの人から「子供は?」と聞かれると
どう答えたらいいのかわからなくて。
「いない」というと気まずい雰囲気になってしまうし・・・
カ:そうですよね・・・たとえば「本当は欲しかったけど、いないんです」
という返事の仕方があるのですが、いかがですか?
A:・・・・(しばらく沈黙)私にはまだ言えないかも。
でも、それが言えるようになれば、私の中の不妊体験も変わるかも。

実際はもっと会話の内容が
いろいろとありますが、
ポイントだけ書かせていただきました。

Aさんにとって、
新しいアイデンティティーは仕事を通じで
得られつつあるようです。
でもまだ不妊体験は
完全には受け入れられてはいないようです。
ただ、今後の展望、
「本当は子供が欲しかったけど子供は授からなかった」
をいつか言えるようになれるかも?
というものがあることがこの時点では
重要だと思います。

不妊の問題は一生続くものです。
でもその問題は自分で対応していくことになります。
カウンセリングを通じて、
不妊にまつわるいろんな心の問題は
どう対処すればいいのかを
学ぶことによって、
今度は自分だけで対応していくことができれば、
カウンセリングは終結・卒業、となります。