曇り時々雨、のち晴れますように

小倉 智子

ヨーロッパのカウンセリング事情

2015年08月10日

夏ですね。
夏は毎年お休みをいただいていますが、
休みをいただかないと、
たまった仕事が処理しきれず・・・
とはいえ、お休みを頂ける環境にあることは
本当に感謝しております。

休みをいただいてはいますが、
しないといけいないことの
一つがお勉強です。
生殖心理もどんどん変化していきますので、
アップデートしないと!
ということで、今回は勉強したての
ヨーロッパの生殖心理カウンセリング事情を
報告しますね。

ヨーロッパで大きな生殖の学会は
ESHRE(European Society of Human Reproduction and Embryology)
で欧州ヒト生殖医学会、と
呼ばれています。
ここで、心理学・カウンセリング部門がありまして、
そこで最近書かれた記事によりますと、
生殖補助医療(ART)では
カウンセリングはルーティーン、
つまり治療の一部として
組み込むべきだ、となっています。

ヨーロッパだと、
カウンセリングがあるのは当たり前、
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
そうでもないのです。
もちろん、心理士(というより心理学者)や
カウンセラー、ソーシャルワーカー、
精神科医さえ、常勤でいるのですが、
治療の一環として
心のケアが提供されているというよりは、
必要に応じて利用してね、
というシステムのほうが多く、
利用している人はほとんどの人が利用している、
ということはないようです。

とはいえ、
ヨーロッパの場合、
越境治療や(フランス人がベルギーで治療とか)、
多様な性のあり方(レズビアン、ゲイのカップルなど)、
卵子提供、精子提供、HIV感染者、
多様文化間での結婚があるため、
日本に比べると、複雑な部分はあるようです。

そのため、
専門の心のケアができる人は勿論、
不妊にかかわる
すべてのスタッフ(医師、看護師、助産師、培養士、受付など)
も不妊の心理について学び、
患者さんへの対応をするべきとありました。

この不妊の心理、といっても
その人のタイミングを知らないと
同じ言葉でも全然違いますよね。

初めての体外受精をした人に、
「辛いですよね」
といっても、もちろん不安があるでしょうけど
期待もある中なので、
「辛い」は、ずれているかもしれません。
もちろん体の「辛さ」を
言っているのであれば、
わからなくもないですが、
それなら「(採卵は)痛みませんでしたか?」
のほうが適切でしょう。

でも体外受精6回目で
妊娠反応が陰性となった方には
「辛いですよね」
は患者さんにとって、
わかってくれる人がいる、
というサポートになりえます。

このあたり、
スタッフの方々に学んでいただくのは
結構難しいのですが、
それは心理の専門家の使命だと思います。

もう一つ、ヨーロッパでは(北アメリカなどもそうですが)
卵子・精子提供がよく行われているので、
それに関するカウンセリングも
重要と考えられています。
とくに非配偶者間生殖医療で
生まれたお子さんたちへの
サポート体制が必要となってきますので、
そこも心理の専門家が法律整備とも
連携しながら進めていくことになる、
とありました。

以上が報告となります。
内容としては、
もっともだ、ということになりますが、
言葉も文化も価値観も違う人たちが、
私たち、日本人と感じる部分が
ほとんど同じ、
ということは、この生殖への思い、というのは
世界でも普遍なことなんだろうな、
と改めて気づかされます。

もっと勉強して、
皆様のお役に立てるよう、
頑張ります。