曇り時々雨、のち晴れますように

小倉 智子

治療を考える40代

2015年04月06日

みなさま、
こんにちは。
心理士の小倉です。

さくらがきれいに咲いていますね。
新学期も始まり、春本番です。

でも、治療中の方はあまり季節の変化に気づかない、
あるいは気にかけていられないかもしれません。
治療をしていると、心の余裕を失いがちです。

とくに40代で治療をされている方は、
焦る気持ち、治療に対する迷い、今後の人生への不安が
強い傾向にあります。

40代で治療されているといっても、
30代からずっと治療して40代になっている方、
結婚が40代で、その後治療を開始された方、
結婚は長いが、40歳前後で子どもが欲しくなって、治療を開始された方、
他の病気をお持ちで、その病気が落ち着いたので
治療開始をしたら40代になっていた、
二人目(以降)の治療は(も)40代になっている、
などなどです。

ただ、40代の方に言えることは妊娠できる時間が
もうそれほど長くはないということ、です。
自然妊娠が可能な年齢が42歳ごろまで、と言われています。
不妊治療をしていても、
奇跡を起こすのではなく、
妊娠する可能性がある場合はそれをサポートしているだけです。

このような情報があれば、
40代での治療は20~30代の方とは違うものになります。

現実的に考えれば、
子どものいない人生、
これ以上兄弟は増えない、
あるいは他の選択肢(養子・里子・卵子提供など)を
視野にいれなければいけないかもしれません。

一方で、まだまだホルモン値もよく、
採卵はできる、胚盤胞までいく、着床する、流産にはなったけど心拍確認はできた、
などがあると、次こそは!と治療への期待もあるでしょう。

でも、なかなか治療に集中できないのは、
次の治療で子どもが授かることが全く保証されていないからです。
しかも統計的にみると、子どもを授かる可能性が低いのです。

さらに治療費の経済的な負担、薬などの身体的な負担、重なる不成功による精神的な
負担は次の治療への意欲を低下させます。

これが自分一人で決められるなら楽なこともあります。
でもパートナーが子どもを強く望んでいる場合は、
迷いが生じますよね。

最近は不妊、ということが日本でもよく取り上げられるようになり、
10年前までに比べれば、公の場で不妊の話しもしやすくなった、
と思います。一方で、不妊の知識はまだ浅く、
「日本の技術は高いから45歳でも産めるよ!」
と(悪気は全くなく)励ましてくれます。

本来なら「一生懸命」「前向きに」治療に臨みたいのに
それができないのは、不妊治療中の方であれば
どなたも感じられることですし、40代の方であればなおさら当然のことです。
どうぞ、「こんな気持ちでは妊娠できない」「赤ちゃんは来てくれない」
とは思わないでいただきたいと思います。

もし治療の継続を迷ったら、どうして子どもが欲しいのかを
今一度、考えてみましょう。
結婚したら子供ができると思っていたから。
これでもいいのです。
では結婚しても子どもができなかったら、
あるいは自分の子供に兄弟がいないとどうなのか?
不幸なのか?
寂しいのか?
不満なのか?
物足りないのか?
かわいそうなのか?

でも誰が?
そこのところを感じてみてください。
その気持ちによって、治療を続けるモチベーションが高まるかもしれないし、
あるいは違う選択肢、シナリオとは違う人生を歩む準備、
を考えてもいいかと思います。