睡眠の質の低下や10時間以上の長時間睡眠、1時間以上の昼寝が、ART治療での卵成熟や胚発育に少しマイナスの影響を及ぼすけれども、妊娠率には影響しなかったという研究結果が中国から報告されています。
妊活のテーマとして「睡眠」が重要と言われています。
そもそも、ヒトは寝ないと生きていけませんので、睡眠が重要であることは間違いありませんが、妊活のテーマとして考える場合、どの程度重要で、どの程度参考にすべきか、出来るだけ正確に理解しておくことが大切です。
なぜなら、「睡眠」と言えども、完璧にコントロールすることはとても難しいので、妊活のために頑張ってどうにかしようとすればするほど、かえって、ストレスになってしまいかねないからです。
もしも、そうなってしまえば、本末転倒です。そうならないためにも、情報を丸呑みするのではなく、適切な情報処理が必要です。
そのような観点で、今回の研究報告を読み解いてみると、睡眠は大切ではあるものの、一晩や二晩の睡眠状態が、そのまま妊娠の成立を左右するわけではないという感じでしょうか。
そもそも、1日10時間以上寝る習慣があったり、1日1時間以上の昼寝の習慣があったりするような人は極めて稀でしょう。
繰り返しますが、睡眠の状態が影響するのは、そのような状態が常時続いている場合です。
どうかご安心を!
ただし、ここで一つ、見落としてはいけないポイントがあります。
それは、睡眠は「妊娠率のスイッチ」ではないものの、「若さを支える土台」としては極めて重要であるという点です。
そのことを教えてくれる研究が、昨年、報告されています。それは、名古屋大学による研究で、高齢者を12年間追跡し、年齢による生活の質が低下していくパターンとして、徐々に低下していくパターンと急速に低下するパターンがあり、その予測因子になるのが「睡眠」であることがわかったというのです。
近年の研究では、睡眠の質や持続性が、身体機能や認知機能、生活の質の低下と強く関連することが示されています。
特に、高齢期においては、さまざまな生活習慣因子の中でも、睡眠の問題が将来的な機能低下を最も強く予測する因子の一つであることが報告されています。
妊活に置き換えて考えると、卵巣機能や卵子の質は、直接的には「その周期のコンディション」で決まりますが、間接的には長年にわたる代謝や炎症、修復の積み重ねの影響も受けることがわかっています。
睡眠は、細胞修復、ホルモン調節、免疫調整といった、いわば「若さのメンテナンス」に深く関与する生活習慣です。
つまり、睡眠は「今日の妊娠率を上げる魔法」ではありませんが、「若い身体の状態」を長期的に支える、極めて基礎的な要素であると言えます。
だからこそ、妊活中の睡眠との付き合い方は、「完璧を目指さない」ことが大切です。眠れない日があっても自分を責めず、可能な範囲でリズムを整え、身体をいたわる。
睡眠は、頑張って管理する対象ではなく、身体のコンディションを支える味方くらいの距離感で向き合うことが、結果的に妊活にとっても、最も健全なのかもしれません。












