編集長コラム

細川 忠宏

あきらめた途端に授かったという根拠を考えてみる

2025年08月04日

「あきらめた途端に授かった」という話は、日本でも海外でもよく語られます。

養子縁組をした途端に自然妊娠したというエピソードもあるほどです。

ただし、これは信頼できる統計に基づくものではなく、授からなかった人々が語らないため、本当のところは誰にもわかりません。

それでも多く語られている以上、単なる偶然とは言い切れず、何かしらの背景があると考えるのが自然です。

この現象について、たいていは、やっぱり、「ストレスは悪い」のだと受け止められているようです。

たしかにストレスが健康に悪影響を及ぼすことは広く知られており、「不妊治療を受けることによるストレスから解放されたことで妊娠した」というストーリーは受け入れやすいでしょう。

それまでの治療から解放されたことで心身がリラックスし、それが妊娠につながったという見方です。

ただし、実際の調査研究によると、必ずしも、不妊治療そのものがストレスの原因になるとは限りません。

むしろ信頼できる医療従事者に支えられて前向きに取り組んでいる例もよくあるようです。

そもそも、現実問題として、必要だから治療を受けているわけですから、不妊治療によるストレスのせいにしてしまうと、対策の講じようがありません。

少し視点を変えて、本当に問題なのは、「妊娠するために」と、自分に課してきたさまざまな努力なのかもしれないと考えてみるとどうでしょう。

たとえば、妊娠のために好きな食べ物やお菓子を我慢する、お酒を断つ、ヨガや運動に励む、基礎体温を毎日記録し続ける、タイミングに合わせた性交渉に神経を使うなど、「妊娠のため」の努力や頑張りを重ねる取り組みです。

もちろん、統計的には特定の生活習慣が妊娠しやすさに影響するという傾向はあります。

健康的な食事、適度な運動、基礎体温の記録が役立つこともあるでしょう。

しかし、それらはあくまで「傾向」にすぎず、妊娠の絶対条件ではありません。

何事も取り組み方次第で、バランスが大切です。

自分を追い込みすぎる妊活は、むしろ妊娠から遠ざかる要因になってしまうのかもしれません。

もしも、心身がそのような状態にあったとしたら、妊活をやめ、好きなものを食べ、楽しいと感じる時間を過ごし、時には何もしない日をつくり、リラックスすることで、身体本来の力が取り戻され、体内環境が整い、その結果として妊娠に至る可能性が高まるはずです。

「あきらめた途端に授かった」ということを現在進行中の妊活に活かすように解釈するのであれば、「頑張る妊活をやめてみる」ということになります。

努力や我慢の先に妊娠があるのではなく、むしろ心身が心地よく、自然体でいることこそが、妊娠への近道になるのかもしれません。

妊娠は、我慢し、頑張らなければ叶わないというようなものではないという事実のもとに、自分の心と体が心地よく感じることを大切にし、無理をせず、楽しみながら過ごすことこそが、本来の自分を取り戻す鍵になるのではないでしょうか。