編集長コラム

細川 忠宏

早く寝て早く起き、朝食を食べて、1日を気持ちよく始める

2024年11月05日

朝食を食べる習慣のある女性は朝食を食べない女性に比べて体外受精の出産率が高く、流産率が低かったという研究報告が、東京医科大学からなされています。

朝食の欠食がART治療成績に及ぼす影響を調査した世界初の研究で、女性患者を1週間に朝食を食べる回数でグループ分けし、その後の治療成績との関係を調べた結果、ほとんど毎日、すなわち、週に6回、もしくは7回朝食を食べる患者は、5回以下の患者と比べて体外受精後の出産率が高く、流産率が低かったとのこと。

そもそも、「朝食」は、単に朝に食べる食事であるということだけでなく、重要な役割を担っています。

まず、朝食は体内時計をリセットします。体内時計は生体リズムの司令塔で、女性の生殖機能はリズムとタイミングが全てと言っても過言ではありませんので、朝食の欠食は生体リズムのずれを生じさせるリスクを伴います。

また、朝食を食べることで1日の食後の血糖値が安定します。そのため、朝食を抜くと昼食後と夕食後の血糖値が高くなり、糖尿病の発症率が高くなることが知られていますし、食後高血糖は卵胞発育によくない影響を及ぼします。

さらに、朝食は体温を上げます。体温は朝に最も低くなり、起床後、徐々に上がっていきますが、朝食を食べることで「熱」が産生され、体温が「スムーズに」上昇します。

このように朝食の欠食が、ボディーブローのように生殖機能にダメージを与えることがイメージ出来ると思います。

さて、朝食を食べる、その気になれば誰にでも出来そうなことですが、今回の研究では、朝食を食べる回数が週に5回以下の患者は47.5%と全体の半数弱もいました。

また、厚労省の国民健康栄養調査でも朝食の欠食は男性で約3割、女性で約2割です。

厚労省の調査では、その理由のほとんどは、「時間的余裕や食欲がないこと」で、朝食を食べない人が食べるためには「早く寝て、よく眠ること」であると回答しています。

つまり、朝食が食べられないのは、寝るのが遅いこと、睡眠の質が低いことが主な原因であり、朝食の欠食と睡眠は密接な関係にあるようです。

最近、睡眠の質と生殖機能との関連についての研究報告が相次いでなされています。

たとえば、その中で就寝時間と不妊症との間には相関関係があり、その分岐点は22時45分だったとの報告があります。

また、睡眠の質の低下は卵巣予備能の低下と関連するという報告、さらには、良好な睡眠の質は高い妊娠率や出産率に関連するとの報告がなされています。

朝食の欠食と妊娠する力は、さまざまなメカニズムで繋がっているようです。

自分で自分の妊娠力を守るためには、早く寝て、早く起き、朝食を食べることが大切です。

それは、気持ちよく1日をスタートすることに他なりません。