地中海沿岸地域の伝統的な食べ方である地中海食は、健康食として有名で、地中海食に近い食習慣の人ほど、がんや糖尿病、心疾患、認知症などの生活習慣病にかかりにくく、そして、長寿であることがわかっています。
生殖機能も例外ではなく、食習慣が地中海食に近いほど、卵巣機能や体外受精の治療成績が良好で、妊娠後の合併症のリスクが低く、さらには、産後うつ発症リスクや出生児のアレルギー発症リスクの低下にまで関連しているという研究報告がなされています。
具体的には、毎日、新鮮な野菜や果物、全粒粉、オリーブオイル、豆類、ナッツ類を必ず食べ、鶏肉や卵、チーズ、ヨーグルトは、ほぼ毎日(週に数回)、魚介類は最低でも週2回、反対に牛肉や豚肉、お菓子やケーキなどのデザートは週に1回程度、そして、ワインを適度に飲み、毎日、運動するというものです。
このことから学べるのは、「なにを食べるか」よりも、「どう食べるか」が大切で、バランスはもちろんのこと、ポイントは加工(精製)度が低いこと、魚や植物性食品が中心ということでしょうか。
そして、私たちにとって、とても重要なことを教えてくれている研究報告がなされています。
それは、この地中海食にコエンザイムQ10のサプリメントを加えることによって酸化ストレスから細胞やDNAを保護する働きが増強されるという、スペインの大学による研究結果です。
要するに、地中海食の生活習慣病の予防効果は、その抗酸化や抗炎症作用によるものと考えられていますが、サプリメントを加えることで、その働きがより確かなものになるというわけです。
研究では、被験者を同じカロリーで地中海食にプラセボ(偽)のサプリメントを加えるグループ、地中海食にコエンザイムQ10を加えるグループ、そして、動物性脂肪の多い西洋食を食べるグループに、それぞれランダムに分け、4週間後に血液中の酸化ストレスや抗酸化作用に関係するタンパク質や遺伝子発現を測定し、細胞やDNA損傷や酸化ストレス、抗酸化・抗炎症作用を比較しました。
その結果、地中海食+プラセボや地中海食+コエンザイムQ10グループは西洋食グループに比べて、酸化ストレスによる細胞損傷レベルが低く、抗酸化作用も高いことは当然のこととして、同じ地中海食を食べたグループでもコエンザイムQ10を加えたグループのほうが全ての指標で細胞の酸化損傷レベルが低く、細胞の保護効果が高かったことがわかりました。
コエンザイムQ10の補充が地中海食の健康効果を高めたことがわかったというわけです。サプリメントによる補充で、地中海食による身体の機能の向上を増強することが示され、あらためて、サプリメントは食事を補うものであることが確かめられたことになります。
食習慣を見直し、改善する、その上で、サプリメントを使用する、この順番が大事であり、これが最も役に立つ使い方であると言えるのではないでしょうか。