編集長コラム

細川 忠宏

なかったことに!ならないどころか・・・

2022年03月27日

「免罪符」広告という広告の手法があるのをご存知でしょうか?

免罪符というのは、中世のローマ・カトリック教会で、信徒がこれを購入することで、自分の犯した罪の償いを免除される証書のことですが、免罪符広告は機能性食品やサプリメント等で、これを摂取すれば、不健康な行動をとってもよい、あるいは、とらなくてもよいかのように思わせる広告のことです。

よくみかけるのは、脂肪や糖の吸収が抑えられるとか、これだけで1日分のビタミンやミネラルが摂取できるというような表現です。

「なかったことに!」なんていう、商品名が「免罪」そのものズバリのサプリメントまであります。

この免罪符広告の影響を調査する研究が、東京大学の研究チームによって実施され、最近、公開されました。
https://www.umin.ac.jp/publications/press-release/20220211exemption-cm.pdf

研究は、被験者788名を対象として、無作為化比較対照試験という信頼性の高い研究方法で行われています。

その結果は、ある意味、衝撃的で、免罪符広告を繰り返し目にすることで、不健康な行動をとり、あるいは、健康的な行動を避けるようになるというのです。

そして、「公共の健康を促進するために、免罪符広告の欺瞞的な内容を改善すべきである」との見解を示しています。

欺瞞的、すなわち、嘘をついているわけではないけれども、実質的には嘘をついているのと同じだというわけです。

機能性食品やサプリメントは、顧客の健康の促進が目的であるはずですが、かえって、不健康を招いているということで、本末転倒もはなはだしいと。

これでは、商品が売れさえすればそれでよい、すなわち、顧客の健康ではなく、自社の売上促進を目的としていると言われても仕方ありません。

そもそも、機能性食品やサプリメントは、健康維持や増進の「サブ」であり、「主役」ではありません。

主役は、あくまでも、食事であり、生活そのものです。

つまり、不健康な食事や生活で引き起こされたことは、食事や生活を健康的なものに改善するしか、解決できません。

機能性食品やサプリメントは、その際に補助的に使うことで、初めて意味があるのです。

ところが、不健康な食事や生活を、そのままで、機能性食品やサプリメントでどににかしようとしても、一時的、気持的に(気のせいで)改善されることはあっても、根本的な解決にはなり得ません。

機能性食品やサプリメントが「主役」であるかのように表現することが、そもそも、「欺瞞」というよりも、「嘘」なのです。

食生活をはじめとした生活習慣を改善し、その上で、補助的にサプリメントを使うことが最も効果的な使い方になります。

そういう意味では、サプリメントの価値は、製品そのものではなく、それをどのように使うかで決まってくるわけです。

私たちが情報の公開や提供、相談や質問への個別対応に力を注いでるのは、そのことを信じているからです。