編集長コラム

細川 忠宏

使わなければダメになる

2021年09月06日

運動は体内の抗酸化能を高めるという研究報告に初めて接した時、「これって、どういうこと?」と、戸惑いを感じたことを覚えています。

運動によって活性酸素が増えるのにもかかわらず、抗酸化作用が高まるというのはどういうことなのかと。

それだけではありません。

老化を防ぐのにいちばんよい方法は間違いなく運動であると、"老化"についての研究に携わる世界中の研究者が口を揃えて言います。

一見、運動は酸化ストレスを増やし、酸化ストレスはさまざまな組織にダメージを及ぼし、老化につながるはずなのにもかかわらず、運動は何歳になっても体によいというのです。

これはどのように理解すればよいのでしょうか。

そんな折、「ホルミシス」という言葉に出会いました。

ホルミシスとは、一定程度の弱いダメージやストレスが与えられると、スイッチが入って、体に備わった応答あるいは、修復プロセスが働いて、かえって健康になるという現象のこと。

そして、運動が老化の原因になるものを増やしながら、老化を防ぐのは、「ホルミシス」という作用が働いているからであるということを知りました。

つまり、運動することで酸化ストレスが増えると、体に備わった抗酸化システムが働くようにスイッチが入る、このことが繰り返され、つもりつもって、老化を遅らせるようになるというのです!

運動は活性酸素の発生を介して体内のさまざまな仕組みに働きかけ、さまざまな「身体によい」ことが連鎖的に起こるというイメージです。

いや、「身体によい」ことだけではありません。

「心(メンタル)によい」ことも連鎖的に起こります。

この、私たちの身体に備わった精巧な仕組みは、凄い!の一言で、もはや、感動的でさえあります。

そして、これを活用しない手はない!と、切に思います。

さらに、です。

この作用は、「使わなければダメになる」というのです、ね。

繰り返しますが、運動は老化の主な原因になる酸化ストレスを抑制し、老化を防ぐいちばんよい方法である、なぜなら、運動することで起こる身体の変化によって、身体や心を若く保つシステムが稼働するスイッチが入り、さまざまなアンチエイジング的な働きが、全身で、次から次に起こるからであると。

ところが、このシステムは、常に使っていなければ、その性能は次第に低下していく、と。

仕組みは複雑ですが、意味するとところは、極めてシンプルです。

つまり、運動が老化の進行を支配しているということです。

私たちは運動を介して、老化をコントロールできるのです。

アンチエイジングとは、「老化防止」でも、ましてや、「若返り」でもなく、「使い続ける」ことです。

まずは、このことを理解しておきたいものです。

私たちに備わった「仕組み」が私たちを守っていることを知って、その偉大さや精巧さに感謝し、信じることが大切なのではないでしょうか。

もしも、自分に備わった「仕組み」がちゃんと働いてくれるのか?という、疑いや不信が動機になると、生活習慣の改善やサプリメントも間違った使い方になり、それほどの効果が期待できないものになってしまうように思えてなりません。