編集長コラム

細川 忠宏

スマホ制限して、妊娠する力を守る

2021年08月02日

妊娠や出産に至るプロセスは、あらゆることが適切なタイミングで起こることが重要です。

不妊治療は、たいてい、カップルに適切な性交のタイミングを指導されることからはじまります。

また、ほとんどの女性の不妊検査しかり、治療が始まれば、あらゆる治療には施されるタイミングが決められています。

さらに、タイムラプスインキュベーターの普及で、培養器の中の胚の分割スピードの適切なタイミングがあること、遺伝子解析技術の進歩で胚移植に個々に適切なタイミングもわかるようになりました。

そして、このタイミングのベースになるのが女性の身体のサイクルです。

つまり、妊娠や出産は女性の身体が奏でるリズムが進めていると言えるわけです。

では、なにがこのリズムをつくりだしているのでしょうか?

答えは「体内時計」です。

この体内時計が、睡眠やホルンモン、神経活動、免疫など、さまざまな生理現象にリズムをもたらしているのです。

性周期のない男性も同じです。

メインの体内時計は一つで、脳内の視交叉上核、すなわち、目の神経が交差する部分の上にある神経細胞の集まりに存在しています。

そして、メインの他に全身の細胞、一つ一つにもあります。

メイン時計の1日の長さは、24時間より長いのですが、朝に目から入る光によって調節されます。

ところが、夜間に光を浴びると時計が狂ってしまいますので、寝る前はテレビやスマホは見ないようにすべきです。

特に、スマホは、テレビなどに比べて、目(脳)に近いので、その影響は強力です。

40歳以上の女性では体内時計の乱れが卵巣機能低下を促進するという研究報告がなされています。

また、スマホの夜間使用が精子の質を低下させるとの研究報告もあります。

夜間、そして、起床後すぐのスマホ使用は、女性でも、男性でも、妊娠する力を低下させます。

スマホ使用を制限するだけでなく、生活リズムを意識して、体内時計を整えましょう。

1)夜は暗くする。
2)夜はスマホをみない。
3)早く(遅くとも12時までに)寝る。
4)朝は早く(決まった時間に)起きる。
5)目覚めと同時に自然光を浴びて、水を飲む。
6)朝食(タンパク質)を食べる。
7)午後3時以降はカフェリンを摂らない

体内時計を整え、年齢とともに分泌量が低下するとされているメラトニンの分泌量を維持することで、卵子や精子の成育環境を整えることになります。