編集長コラム

細川 忠宏

自分で自分を管理しなければならない時代に

2020年09月07日

IT技術や医療の進歩で、どんどん、便利な世の中になり続けています。妊活や不妊治療でも、ほんの、数年前とは様変わりと言っても、決して、過言ではありません。

たとえば、生殖医療や遺伝子解析の技術の進歩で医療機器や検査法が増え、当然、それに伴って治療の選択肢も増えました。

また、企業によるIT技術を駆使した妊活サポートがどんどん登場し、治療や検査についての専門的なことをわかりやすく解説してくれたり、相談にのってくれたりといった、それまで、自分でやらなければならなかったことを代わりにやってくれたり、助けてくれるようになっています。かゆいところに手が届くような妊活サービスも少なくありません。

さらに、ブログやSNSが当たり前になり、特に、個人が発信する妊活情報がどんどん入ってくるようになり、「みんなどうしているの?」という、誰しも気になる情報に簡単にアクセスできるようになりました。

とにかく、妊活においても、不妊治療においても、情報や選択肢が増え、かつ、本当に便利になりました。

もちろん、情報や選択肢、そして、さまざまなサービスやサポートが増えて便利になったことは、喜ばしいことに違いありません。

ところが、その一方で、不妊カップルの混乱を招き、かえって、悩みが深くなっている側面があるように思えてなりません。

どんなものごとについても、選択肢が限られていれば、それほど悩むことはないでしょう。

ところが、選択肢が増えれば、増えるほど、迷いも大きくなります。

ましてや、後悔したくないという気持ちが強ければ強いほど、尚更のことでしょう。

では、情報や選択肢が増えたデメリットではなく、メリットを活かすにはどうすればよいのでしょうか。

まず、その中に「答え」はないということを、心得ておいたほうがよいのではないかと思います。

言い替えれば、万人にあてはまる「正解」は存在しないという大前提を了解しておくということです。

SNSでどんどん入ってくる、他のカップルの成功例やあらゆる販売情報は、自分たちにとってはさほど意味がありません。

そのため、自分たちにふさわしい選択肢を出し直すこと、その上で、自分たちにふさわしい答えを選ぶというステップがどうしても必要になると思うのです。

本当に必要な情報は選択肢そのものではなく、自分たちにふさわしい選択肢を出し直したり、自分たちにふさわしい答えを選ぶために参考にできる、頼りになる情報です。

また、自分たちにふさわしい選択をする際には、なぜこっちなのか、なぜあっちではないのを、一々、明確にしておくことが大切だと思います。

そのことで、自分たちにとって、なにが大切で、なにが大切でないのか、ふたりの優先順位、もっと言えば、価値観が次第に見えてくるのではないでしょうか。

そんな思考を繰り返していくうちに、いったい、自分たちはどうしたいのか?ということが、ふたりの間で、おぼろげながらでも固まってくれば、先の見えない中で、なのかを決める上で、相当、有利になるに違いありません。

もしも、これがいいのか、それともあれもいいのかなんていうスタンスで、洪水のような情報に飲み込まれ、流されていくと、自分たちを見失ってしまいかねません。

いまほど、自分で自分を管理しなければならない時代は、かつてなかったんじゃないかなと、つくづく、思います。