編集長コラム

細川 忠宏

家で食事をつくり、食べること

2020年07月06日

新型コロナ感染予防は、私たちの仕事や生活を否応なく、変えました。当初から長期戦のなることはわかっていましたが、ここにきて、東京をはじめ、いくつかの都市で感染者数が増えているというニュースに接して、あらためて、感染予防を前提とした生活をスタンダードにしなければならないと思います。

そんな中で、感染予防対策で、ほとんどの人は自宅で食事をつくって、食べる頻度が増えたという調査結果が報告されています。

そもそも、飲食店が自粛していては、そうせざるを得ないものの、そして、いろいろと面倒ではあるものの、お子さんを望むカップルにとっては、家で食事をつくり、食べる頻度を高くすることは妊娠にも、そして、未だ見ぬお子さんにも、大きなプラスになることは間違いありません。

そのことを調べた研究報告(1)がなされています。

それによると、自宅で調理しない食事の頻度が多い人ほど不妊症のリスクが高くなるというのです。

2013-2014年、2015-2016年に実施された米国国民健康栄養調査のデータから、30-49歳の健康な女性2143名に自宅で調理しない食事の頻度と不妊症(妊娠を試みてから1年以上かかる)の割合との関係を調べています。

その結果、1日に1回以上外食(レストランやファストフード店、フードスタンド、食料品店
)する女性は、全くしない女性に比べて不妊症の割合が2.82倍だったというのです。

また、ファストフードの頻度だけでみてみると、ファストフードを1日に1回食べる女性は全く食べない女性に比べて不妊症リスクが2.73倍だったとのこと。

ファストフードについては別の研究報告(2)もあります。

SCOPE研究という妊婦を対象にした研究に参加した5,628名に、初検診時(妊娠14-16週)に、妊娠前1ヶ月間の果物やファストフード、野菜、魚の摂取頻度を思い出して回答してもらい、妊娠するまでにかかった期間との関係を調査したというものです。

その結果、果物の食べる頻度が少ない女性ほど、また、ファーストフードを食べる頻度が多い女性ほど、妊娠迄の期間が長くなり、妊娠迄に1年以上かかることが多かったというのです。

具体的には、1日に果物を3回以上食べる女性と比べて、1日に1、2回食べる女性は妊娠迄の期間が6%、週に1-6回食べる女性は11%、月に2、3回食べる女性は19%、ぞれぞれ、妊娠する迄に長くかかったとのこと。

反対に、ファーストフードを週に4回以上食べた女性に比べ、週に2、3回食べた女性は妊娠迄の期間が11%、週に1回の女性は21%、そして、食べなかった女性は24%、それぞれ、短かったとのこと。

ファストフードなど、自宅で調理しない食事をする頻度が多くなると妊娠する力にはマイナスになるようです。

もちろん、外食そのものが悪いわけではありませんが、外食は加工食品を食べる頻度や量が増えるようです。

加工食品が多くなると、栄養バランスが悪化し、飽和脂肪酸のエネルギー比が高くなり、反対に食物繊維やビタミンB6、鉄といったビタミンやミネラルの摂取量は少なくなるという研究報告(3)が日本からなされています。

これらのことは、自分たちへの影響であって、ある意味、自業自得的なのですが、家で調理して食べることは子どもにはかり知れない影響を及ぼすこともわかっています。

自宅で調理して食べる頻度が高く、子どもの頃から調理をしていると、大人になってからも家で調理して食べる頻度が多く、より健康であるという研究報告がなされています(4)。

子どもになにを伝えるか、なにを教えるかというよりも、自分たちがどんな生活をするのか、したいのかが大切である、要するに「口」よりも「行動」だということですね。

大変勉強になりました。


文献
1)J Prev Med Public Health 2020; 53: 73.
2)Hum Reprod 2018; 33: 1063
3)Public Health Nutrition. 2019; 22: 2999
4)J Nutr Educ Behav 2020; 52: 483