編集長コラム

細川 忠宏

妊娠力は高めるものではなく、整えるもの

2020年05月11日

このご時世で、免疫力という言葉を頻繁に耳にします。新型のウイルスには治療薬もワクチンもないので、頼りになるのは自分の免疫だけだと。

全くその通りなのですが、その後に、だから「免疫力を高めましょう」と言われると、ちょっと待ってくれ!と言いたくなってしまいます。

体内に侵入したウイルスを排除して、自分を守ってくれるのは免疫のおかげなのですが、だからと言って免疫力を高めればよいかというとそんな単純なものではないからです。

たとえば、私たちを悩ます花粉症は、花粉に対して免疫が強力に反応することによるもので、免疫力が強いのも良し悪しなわけです。

免疫力は弱すぎるといろいろな病気にかかりやすくなり大変ですが、強すぎてもさまざまなアレルギーや自己免疫疾患にかかりやすくなります。

要するに、弱くもなく強くもない、ちょうどバランスのとれた状態が、一番、働くのですね。

そもそも、免疫は私たちの身体を守る「仕組み」であって、さまざまな身体の働きが関わって、いろいろな情報を互いにやりとりしながら、複雑に連携しているシステムというイメージです。

つまり、免疫力は高めたり、強くしたりするものではなく、整えるものなのです。

そう考えると、そのために私たちが取り組むこと、出来ることも、ちょっとニュアンスが違ってくるように思います。

あくまで、単一ではなく複合であり、一発勝負の戦いではありません。

そして、このことは妊娠力についても全く同じなのではないかと思うのです。

妊娠力というものも、免疫力と同じように単純なものではなく、高めればよいというものではありません。

免疫も、生殖も、身体の機構であり、ホルモンや免疫、神経、代謝が深く関与し、連携しています。

そのため、免疫力や妊娠力を整えるには、規則正しい生活リズムや睡眠、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、すなわち、誰もが知っている「当たり前」な生活習慣を実行することに尽きます。

どちらも、高めるものではなく、整えるものだからです。

STAY HOMEで、免疫力を高めたり、妊娠力を高める方法をネットで検索し、探せば探すほど、間違いなく、ストレスを抱えることになってしまいます。

なぜなら、質問の立て方が間違っているからです。