編集長コラム

細川 忠宏

サプリメントの有効活用のためにお伝えしたいこと

2020年03月30日

主に、不妊治療に携わる医療機関にサプリメントを提供させていただいて、かれこれ、15年ほどになります。また、その間、ほぼ、毎日のように不妊治療を受けていらしゃる方々からさまざまなご質問やご相談に対応させていただいてきて、つくづく、思うことがあります。

それは、サプリメントと言えども使い方があるということです。

もちろん、サプリメントの使い方に公的なガイドライン等はありませんので、あくまで、私たちがこれまでの経験から学んだこととしてご参考にしていただければと思います。

はじめに国が定めるサプリメントの法的な位置付けについて確認しておきたいと思います。

まず、口に入れるものは、医薬品と食品の2つに分けられています。

医薬品はご承知の通り、厳格な法律のもとで管理され、厚生労働省がその効果を認めたものです。

つまり、服用すれば作用します。

一方、食品には健康の維持、増進に役立つ食品(健康食品)と一般食品があり、健康食品はさらに保健機能食品といわゆる健康食品があります。

保健機能食品といわゆる健康食品の違いは機能の表示、すなわち、なにに役立つのかが言えるか、言えないかで、保健機能食品は機能表示が限定的ではありますが許されていて、いわゆる健康食品には許されていません。

そして、保健機能食品に機能表示が許されているのは条件をクリアしているからです。条件別に3つあり、特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品、栄養機能食品です。

どんな条件かと言えば、トクホはその製品を用いた臨床試験を実施し、作用することを検証し、機能の科学的根拠を消費者庁に提出し、許可を受けなければならないことです。

ところが、機能性表示食品はその製品を使った臨床試験を実施して審査を受けなくても、そこに含まれる成分の有効性や安全性が検証された過去の論文と一緒に届け出ることで、栄養機能食品はビタミンやミネラルを決められた範囲の量で配合するだけで既に定められた内容の表示が許されるというものです。

そして、いわゆる健康食品はなんの規制もないかわりに機能の表示も許されていません。妊活サプリメントを含む、ほとんどのサプリメントはここに属します。

少々、ややこしいかもしれませんが、サプリメントと一般食品は法的には同じカテゴリーに属していて、サプリメントは製造者や販売者が健康になんらかのよい作用があると主張しているだけなのです。

さて、ここで認識しておかなければならない原則は以下の通りです。

・医薬品は服用すれば作用がある。
・食品は食べても作用はない。

なぜなら、食品は作用がないから食品であり、作用があれば医薬品になるからです。

それでは、医薬品と一般食品の中間的な位置にある保健機能食品やいわゆる健康食品(サプリメント)はどうでしょうか。

・保健機能食品(トクホ・機能性表示食品・栄養機能食品)は服用すれば弱い作用がある。
・いわゆる健康食品(サプリメント)は服用すれば弱い作用があるかもしれないが、ないかもしれない。

こうなります。

トクホは国がその作用を認めていますが、極めて弱い作用です。そして、サプリメントは第三者の評価を受けていませんので、製品によっては弱い作用が期待できるかもしれませんが、なんも作用もないかもしれません。

いずれも、もしも、普通に作用があれば医薬品になります。

ここまでで言いたいことは、医薬品は服用するだけで作用があるが、トクホは服用するだけでは極めて弱い作用しかない、そして、サプリメントは弱い作用があるかもしれないが、作用はないかもしれない、一般食品は普通に食べるだけでは作用はない(はず)ということです。

それにもかかわらず、トクホにしろ、サプリメントにしろ、極めて弱い作用ではなく、作用を期待しているように思います。

誤解を恐れずに言わせてもらえば、それは「ないものねだり」と言っても、決して過言ではありません。

それでは、トクホやサプリメントで一定の作用を得るためにはどうすればよいのでしょうか?

全ての保健機能食品やサプリメントに国が法的に義務づけている表示があります。

それが大きなヒントになります。

それは、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」で、この通りに一字一句決められています。

つまり、国は、健康食品は、単に服用するだけでなく、食生活を改善してくださいと言っているわけです。

トクホやサプリメントを利用しようという背景には栄養素の不足なり、不調や不具合があったり、生活習慣病の予備軍的な状態にあるはずです。

もっと言えば、薬を飲むほどのこともない、あるいは、薬では解決できないという状態でしょう。

そのような場合は、トクホやサプリメントを医薬品のように服用するだけでなく、すなわち、トクホやサプリに頼るのではなく、トクホやサプリの利用を機会として、食生活や生活習慣を改善し、食や生活習慣の重要性に気づくべき、これがサプリメントの正しい使い方、すなわち、サプリメントが有効に作用する使い方ということになります。

必須栄養素が不足したり、何らかの不調や不具合は、たいていは、食生活や生活習慣の乱れや質の低下が根底にあるはずです。

そこをそのままにしたままで、トクホやサプリを使っても、それほどの効果は期待出来ませんよと。

あったと感じたとしても一時的で、すぐに元に戻るはずです。

もしも、トクホやサプリを医薬品と同じような使い方をして、これが効くけれども、あれは効かなかったなどと評価を繰り返しているのであれば、それは、「ないものねだり」であり、結局はお金の無駄遣いでしかなく、皮肉な見方をすれば、メーカーを喜ばせることにしかなりません。

トクホやサプリメントの目的は、食生活や生活習慣を改善し、薬やサプリが不要な健康状態になることです。

自転車に乗れない子どもが乗れるようになるまで「補助輪」を使い、乗れるようになれば「補助輪」をはずすように、食事だけでは必要な栄養素が取れない場合に「サプリ」を使い、食生活の改善に取り組み、食事だけで取れるようになれば「サプリ」による補充を終了するのが理想です。

補助輪も、サプリも、頼るものではなく、自立までの動機づけやサポートであるというのが、本質的役割ではないかと、私たちは考えています。

いかがでしょうか?

もちろん、いろいろな例外はあります。

そのことも承知の上で、一つの基本的な考え方としてご理解いただければと思います。